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関西に広がる地域一体型オープンファクトリー
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担当課室:中小企業政策調査課

最終更新日:令和4年7月1日

関西に広がる地域一体型オープンファクトリー

関西では、中小企業が主役となる地域一体型のオープンファクトリーが各地で誕生しています。当局では令和3年度に地域一体型オープンファクトリーの「産地間連携」における可能性について「ナレッジシェア」をテーマとした考察を行い、調査報告書及びPR冊子を令和4年3月29日に公表しました。今回はその内容を紹介します。


調査の背景

中小企業が主役となる地域一体型のオープンファクトリーでは、様々なイノベーションが生まれ、それらを創出する鍵となるキーパーソンが存在します。
 近畿経済産業局では関西各地に広がる地域一体型オープンファクトリー内でどのようなイノベーションが生まれているのか、その要因を調査するとともに、各キーパーソンのネットワークを構築・活用することで、 中小企業が主役となる地域一体型オープンファクトリーと外部資源(大手企業、ベンチャー企業等)との協業可能性の検討を目的とした調査を実施するなど、様々な角度から取組を行いました。
 令和2年度は地域一体型オープンファクトリーの領域について要素分解を行い、イノベーションの発生状況や地域一体型オープンファクトリーの発展可能性について調査を実施。その結果、地域一体型オープンファクトリーがイノベーションの苗床としての”サードプレイス”となっていることを示すと共に、発展の方向性として「外部リソース連携」及び「産地間連携」の2つの可能性を示唆、その過程において課題となる“意識の壁”と“認知の壁”を明らかにしました(KANSAI OPENFACTORY REPORT rec2021.(令和3年3月31日公表))。
 そこで、令和3年度調査においては「産地間連携」における可能性の観点において「ナレッジシェア」をテーマとし、各地の優良アクションを共有する仕組みが生み出す効果について考察し、考察結果から共有可能な効率的手段を明らかにすると共に、関西における新規参入の兆しを明らかにすることを目的とした調査を実施しました。


ナレッジシェア

調査内容の1点目として、各地の地域一体型オープンファクトリーでの優良アクション(グッドプラクティス)をシェアする要素を抽出するため、地域一体型オープンファクトリーの実施主体及びキープレイヤーを集めた研究会、エリアを越えた事例の共有に向けたフォーラムイベントを開催しました。

(1)優良アクション分析のフレームワーク

各地の地域一体型オープンファクトリーの優良アクション分析の視点として、ビジネスモデル分析の枠組み(※)を応用し、その要素を、Resource(活動を支える資源)、Activity(活動=優良アクション)、Value(価値・効果)に分けました。


(※)出典:井上達彦『模倣の経営学』(⽇経BP社、2017年)

優良アクション分析の視点

【優良アクション分析の視点】

(2)ナレッジシェアの推進に向けて

「産地の顔」が交わり生まれる「知識移転」

本事業にて開催した研究会・フォーラムは、各地域一体型オープンファクトリーの活動を他地域と共有し、学び合う場として機能しました。研究会委員・イベント登壇者においても、他地域や他者による客観的な視点が加わることで、「優良アクション(グッドプラクティス)」の認識・気付きにつながっていることも明らかになりました。
 また、各地の地域一体型オープンファクトリーには「産地の『知っている人』を知っている人」、いわば「産地の顔」が存在します(※)。本調査事業内で実施した研究会・フォーラム等のイベントは、まさに「産地の顔」同士が交わり、交流する場であり、産地間を越えた各地のActivity(活動)の「共有・議論・学習・刺激」を通して、優良アクションの気づき・認識とともに、「知識移転」が生じたものと考えられます。

(※)引用元:京都橘大学 経営学部 経営学科 准教授 丸山 一芳氏による基調講演『オープンファクトリーによる産地革新の越境と知識移転』(関西オープンファクトリーフォーラムVol.9)


知識移転のイメージ

【知識移転のイメージ】

ナレッジシェア・ポートの重要性

ナレッジシェア推進に向けては、各地域一体型オープンファクトリーの個々の活動の分析とともに、それら活動が「優良アクション(グッドプラクティス)」として認識・気付く、あるいは共有し合う仕掛け作り、すなわち互いの経験値をフラットに共有出来る場(ナレッジシェア・ポート)の設置・推進が有効です。
 他地域に展開された活動が、今後新たな優良アクションを生み出す可能性もあり、「場」の創出がイノベーションを生み出すエコシステムとして機能することが期待されます。


ナレッジシェア・エコシステム

【ナレッジシェア・エコシステム】

ヒューマン・ビジット(※)

令和2年度の調査では、地域一体型オープンファクトリーが、他社と差別化することが可能な高い品質や技術力、尖ったブランドイメージや産地のストーリーを背負った魅力的な製品を持つ中小企業「群」と、マーケット力、プロモーション力を持つ大企業をはじめとした外部リソースが、コラボレーション・パートナーを探す「場」としての可能性を有することが見いだされました。そこで令和3年度調査において、令和2年度調査で示唆された両者の間の障壁となり得る「認知の壁」と「意識の壁」を突破する手法を見いだすことを目的とした研究会及び実証調査を実施しました。

(※)ヒューマン・ビジット
いわゆる「テクニカルビジット(企業や工場への視察を目的とした旅行、産業視察)」を指しますが、令和3年度の研究会を通して「雑談」と「余白」、及び視察の相手が「誰」であるかが重要という仮説が立てられたことから、以降「ヒューマン・ビジット」と記載しています。


研究会・実証調査(ヒューマン・ビジット)

研究会ではヒューマン・ビジットの意義、大企業等と、企業や地域・産地との共創の可能性、認知や共創につなげるにはどのような現場体験が有効かについて議論しました。研究会を通して、「雑談」と「余白」の重要性、その相手が「誰」であるかが重要という仮説のもと、各地のキーパーソンといえる方(※)と共に訪問することを軸に実証調査を実施しました。

(※)前頁にて言及の「産地の顔」と同義。
 DESIGN WEEK KYOTO、貝塚オープンファクトリー、FactorISM(堺)、みせるばやおをプロデュースする地域の「顔」がコーディネイト。各地域3~4箇所の工場・工房を訪問し、訪問先の事業者と一緒に振り返りの機会を「セッション」として設けました。


ヒューマン・ビジットの様子 京都
ヒューマン・ビジットの様子 貝塚

【ヒューマン・ビジットの様子】(左から京都、貝塚)

ヒューマン・ビジットの様子 堺
ヒューマン・ビジットの様子 八尾

【ヒューマン・ビジットの様子】(左から堺、八尾)

壁を突破する手法

まず各地で展開される「オープンファクトリー」は、共創に向けた最初の出会い、パートナーとなる中小企業群の存在認知の機会と言えます。
 他方、これまでの大企業と地域企業の交流は「利益が見込める」からこそ「地域企業と交流する」という「共創」スタイルでしたが、実際に各地で取り組むオープンファクトリー内で独自に生まれているイノベーションは参加した大企業を大きく刺激するものであり、「交流」したからこそ生まれた「予定調和のない利益」に大きく関心を寄せる結果となりました。
 ヒューマン・ビジットが「この人、この企業となら一緒に何かできることを考えたい、考えられるのではないか」という共感・信頼につながり「意識の壁」を突破する機会となり得ることが示唆されました。
 さらに、地域の企業群と大企業等の外部リソースの出会う機会が行政の音頭で用意されたことは、行政のもつ信頼性や公平性から、大企業の方も社内への説明もしやすく参加が容易だったという声もあり、行政がこうした場づくりに関与することで、参加の障壁を下げることにつながり、真の「共創」を生むうえで重要な役割を果たしていることが分かりました。


持続可能な在り方調査

地域一体型オープンファクトリーを運営する組織の新陳代謝を促す手法について、DESIGN WEEK KYOTO、大正・港オープンファクトリー、RENEWといった、関西で4年以上継続して実施されている地域一体型オープンファクトリーと意見交換を行いました。
 そこから見えてきたのは、地域一体型オープンファクトリーが持続可能であるためには、心理学のモデルで活用されているジョハリの窓のフレームにおける「『未知の窓』へ如何に近づくか」がポイントになり得るという点です。そのためには「秘密の窓」「盲点の窓」を開放していく様々なチャレンジがポイントとなり、このチャレンジの仕組みとして先述のナレッジシェアやヒューマン・ビジットも有効な手段の一つと考えられます。
 例えばRENEWにおいては、「産地の顔」が内部で活動を支えつつ、積極的に外部の視点に触れるきっかけを提供していると言えます。また大正・港オープンファクトリーでは、初対面同士がグループに分かれテーブルを囲みながら議論することによって事業企画を立案しています。そうした多様性を内包する活動体への土壌づくりが、常に新しいコト、ワクワクすることを生む苗床になっていると言えるでしょう。

このように地域一体型オープンファクトリーに参画する企業群が「盲点の窓」や「秘密の窓」の開放に能動的に取り組む姿勢、そしてそのような姿勢が醸成される仕組み作りが重要であり、俯瞰的視座を持った「産地の顔」とともに「未知の窓」に近づき続けるための継続的なアクションが、結果として持続可能性を高めることに繋がると考えられます。

ジョハリの窓のフレーム

【ジョハリの窓のフレーム】
(Communication Theory ,The Johali Window Model(https://www.communicationtheory.org/the-johari-window-model/)より加工)

関西の地域一体型オープンファクトリーのさらなる発展に向けて

2025年の大阪・関西万博は、世界各国から多数の訪問者を受け入れ、関西全体を世界に発信する好機です。本調査における成果もふまえながら、今後も関西の多様な魅力を発信する「手段」のひとつとして、関西に広がる地域一体型オープンファクトリーの活動を広げていくことが重要であると考えています。
 令和3年度の調査を通じて、関西というエリアでフォーラムイベントやヒューマン・ビジット、研究会を開催することで「産地の顔」×「産地の顔」や、「産地の顔」×「大企業等」が出会う場をセットしましたが、他地域の「産地の顔」からは、自地域のエリアでのこうした場が存在しないことから、是非公的機関の助力も得ながらフラットに繋がれる場が欲しいといった声が寄せられました。またナレッジシェアの場やヒューマン・ビジットの実行が、地域一体型オープンファクトリーのイノベーションの苗床となり、また互いに共鳴しあうことでエコシステムとして成長していくことが示唆される中、全国の取組の可視化が地域一体型オープンファクトリーがさらに発展するエコシステムを加速させるアクセルポイントとなることが期待されます。


関連施策へのリンク

関西における地域一体型オープンファクトリー

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 総務企画部 中小企業政策調査課

電話:06-6966-6057

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