トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 2022年7・8月号 企業・地域の取組紹介
最終更新日:令和5年4月3日
2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。近年、SDGsは社会全体で広く知られるようになり、地域においてSDGsの視点を取り入れ、かつ地域の魅力・強みを活かした事業への関心が高まっています。
2025年の大阪・関西万博は「SDGs万博」とも言われています。関西では、2017年12月に、「関西SDGsプラットフォーム」が立ち上がるなど、SDGsの達成に向けて様々なステークホルダーにより取組が進められています。
環境・リサイクル課では、環境及びリサイクル分野においてSDGsの視点を加味し、かつ地域の魅力・強みを活かした自治体等の取組を紹介しています。
第6回目の今回は、2020年7月、「SDGs未来都市」に県内市町で初めて選定され、自治体地域新電力会社「こなんウルトラパワー株式会社」を核とした、地域内経済循環による持続可能なまちづくりを推進している滋賀県湖南市を紹介します。
1997年、京都議定書の締結もあり、地球温暖化への関心が世間的に高まる中、本市では、補助金等に頼らず、自ら地球温暖化防止に貢献できる行動を!との想いのもと、市民等が出資して市民共同発電所「てんとうむし1号」、「てんとうむし2号」が同年稼働しました。全国でも初となる事業性を有する市民共同発電所として注目を集め、現在も稼働しています。
湖南市 てんとうむし1号(太陽光を利用した市民共同発電所)
その後も、市民、事業者、行政が連携し、自然エネルギーを利活用した取組を進めていく中で、その動きを加速させるために、2012年9月に全国初のエネルギー条例となった「湖南市地域自然エネルギー基本条例」を制定。さらに、2015年には、自然エネルギーを地域内で流通させることを主目的とした「湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プラン」を策定しました。
そして、2016年5月に、同プランの担い手として、官民連携による「こなんウルトラパワー株式会社」を設立し、自治体地域新電力事業を全国に先駆けて、実施しています。
このように、地域内経済循環による持続可能なまちづくりを推進してきたことが評価され、2020年7月に「SDGs未来都市」に県内市町で初めて選定されました。
SDGs未来都市選定証(湖南市)
はい、これまで蓄積した経験・ノウハウも活かし、市民の皆さんからのご協力もいただきながら、特色のある事業を行っています。
その中でも、注力している事業として、再生可能エネルギー事業で得られた利益を地域に還元することを主目的とした「グリーンボンド活用事業」と「こなんウルトラパワー太陽光PPA事業」を紹介します。
まず、「グリーンボンド活用事業」ですが、仕組みとしては、こなんウルトラパワーがグリーンボンド(環境債)を発行して、地元金融機関の滋賀銀行に購入いただき、資金調達します。その資金をもとに、こなんウルトラパワーは、例えば市内公共施設の照明(水銀灯)にLEDを導入し、市から水銀灯とLEDの電気代の差額をサービス料として受け取ります。市の負担は、水銀灯使用時の電気代と同じであるため、予算を増やさずに改修することができ、環境債を購入した滋賀銀行もESG投資の実績となります。このような仕組みがロールモデルとなり、隣の竜王町の小学校においても体育館のLED化の動きが進んでおり、今後も周辺市町村への横展開を図る予定です。また、このような取組が評価され、2017年一般財団法人新エネルギー財団が主催する新エネ大賞において、新エネルギー財団会長賞を受賞しました。
新エネ大賞 表彰式の様子
LED化された体育館
グリーンボンド活用事業の仕組み
次に、「こなんウルトラパワー太陽光PPA事業」ですが、2021年より、公共施設等に太陽光パネルを設置し、発電した電気を販売するPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)事業を開始しました。具体的には
といった仕組みになっています。
当初は、公共施設の設置から始めたのですが、いくつかの市内企業からも問い合わせをいただき、設置を進めているところです。
今では、民間企業にとってもカーボンニュートラルに向けた取組が、自社の経営を左右する時代となっており、市内の事業者にとっても例外ではありません。
このような取組を推進することにより、湖南市の事業者、ひいては滋賀県内の事業者のカーボンニュートラルに向けた取組を後押ししたいと考えています。
こなんウルトラパワー太陽光PPA事業の仕組み
「こなんウルトラパワー太陽光PPA事業」の趣旨に賛同して、当社の倉庫の屋根にこなんウルトラパワー所有の太陽光パネルを設置する、いわゆる屋根貸しの形で連携しています。
PPA事業者である、こなんウルトラパワーが、滋賀銀行及び地元工務店・建設会社とも連携の上、太陽光パネルを設置してくれるので、資金面の負担がない点が魅力でした。さらに、再生可能エネルギー導入により当社の脱炭素化を促進し、取引先企業からの評価が高まるなど、企業のイメージアップにも繋がりました。災害時における電力供給継続可能な点もメリットの一つです。
また、太陽光パネルを屋根に設置したことにより、直射日光を回避でき、倉庫内の温度が2~3℃下がることにより作業環境の改善及びエネルギー効率が高まり経費削減に繋がったことも、大きな驚きでした。
このような経済よし、社会よし、環境よしの三方良しの取組がさらに広がることにより、湖南市ひいては滋賀県のカーボンニュートラル促進に大きく貢献することができ、当社といたしましても、今後も、積極的にカーボンニュートラル促進に取り組んでいきます。
甲西陸運株式会社 野洲川物流センター
こなんウルトラパワーを核とした、湖南市の再生可能エネルギーの取組は、開始当初の精神を引き継ぎ、市民が主役、かつ市民みんなで、オール湖南市で取り組んでいるのが大きな特徴です。
活動を進めていくなかで、ハンディを抱える人の社会参画の機会創出、バイオマス発電など再生可能エネルギーに関する市民への理解醸成などの課題が生じました。
そのような中、福祉事業者等で構成された「こなんイモ夢づくり協議会」と連携しながら、ソーラーシェアリングによる太陽光パネルを設置し、その下で栽培したイモを使った発電実証やイモを活用した六次産業化等、農福連携事業に携わっています。昨年度は、商品開発にも成功し、市内のJA直売所で販売に至るなど、地域内経済循環の担い手として、ハンディを抱える人等が活躍しており、まさしくオール湖南市に相応しい取組となっています。
また、市内の小学校でもイモ発電に用いる出前栽培を行っており、再生可能エネルギーへの重要性を認識してもらう機会となっています。
湖南市イモ発電事業の仕組み
湖南市内でのソーラーシェアリング(イモ発電)の取組
2030年のあるべき姿として、「湖南市版シュタットベルケ構想」に基づき、自治体新電力を核とした取組を推進することで、地域循環共生圏の実現とSDGsへの貢献を目指していきます。こなんウルトラパワーは、単なる小売電気事業者としてではなく、小売電気事業で得た利益を、公共施設管理や公共サービスなどに還元していく、地域の担い手として事業展開を図っていきます。
古くは、東海道五十三次石部宿で栄えた湖南市ですが、国宝である「湖南三山」をはじめとする、歴史と自然に満ちあふれた街でもあります。
近年では、「下田なす」「弥平とうがらし」といった地元の伝統野菜を用いた商品開発に取り組む事業者さんも現れ、市としてもサポートしているところです。
是非、湖南市にお越しいただき、数多くの魅力を味わってください。
令和3年度 湖南三山紅葉めぐりパンフレット(湖南市観光協会ホームページより)
湖南市観光協会ホームページ
「第二次湖南市地域自然エネルギー地域活性化戦略プラン~湖南市版シュタットベルケ構想の実現~」を読ませていただきました。資源循環と脱炭素の取組を地域経済活性化や福祉政策などの地域課題の解決にもつなげるといった点が、SDGsの「誰一人取り残さない」に繋がるチャレンジングでかつ素晴らしい試みだと感じました。
取材終了後、市内のお店で湖南市名物「弥平とうがらし」の加工商品「弥平唐味噌」をお土産として購入しました。翌日、弥平唐味噌をつけたきゅうりをあてにしてビールを飲んでいたら、きゅうり嫌いな息子が、それを奪って食べだしました!ピリ辛の味噌が美味しかったようで、ひょんなことから、息子の苦手な野菜の一つがなくなったようです(笑)。
お忙しいところ取材に応じていただき、ありがとうございました。
弥平とうがらし(湖南市提供)
滋賀県湖南市(湖南市 環境経済部 環境政策課 地域エネルギー室)
近畿経済産業局 通商部 国際課ホームページ(関西SDGs貢献チャレンジ)
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 環境・資源循環経済課
電話:06-6966-6018