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最終更新日:令和4年11月1日
経済産業省では、地域経済の「稼ぐ力」を高めるため、地域未来投資促進法の推進等により、地域の未来投資を促進しています。この度、2017年7月の施行から5年が経過した地域未来投資促進法の活用事例を紹介します。
「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(地域未来投資促進法)」は、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域に大きな経済的効果を及ぼす取組を支援しています。
市町村・都道府県は、国の基本方針に沿って「基本計画」を策定し、事業者は基本計画に基づく「地域経済牽引事業計画」を作成して承認を受け、地域の未来に繋がる新たな事業を実施します。
「地域経済牽引事業計画」の承認を受けた事業者は、設備投資への特別償却や税額控除による「税制支援」、長期かつ固定金利での融資等の「金融支援」、農地転用許可等の手続きに関する配慮等の「規制の特例措置」の支援を受けることが可能です。
※地域未来投資促進法に関する解説や支援措置は下記リンクをご覧下さい。
【地域未来投資促進法のスキーム】
地域未来投資促進法では農地転用許可等の手続きに関する配慮として都道府県・市町村が定める基本計画において重点促進区域が設定されており、当該基本計画に基づき市町村が土地利用調整計画を策定している場合、事業実施場所が農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律)や第一種農地等(農地法)に当たる場合でも農用地区域からの除外や農地転用が可能となるよう措置をしています。
地域未来投資促進法を活用して市町村による土地利用調整が行われた場所で地域経済牽引事業に取り組んだ事業者とその声を紹介します。
当社は、1804年(文化元年)に創業者である石田屋二左衛門が現本社地である福井県永平寺町松岡に酒蔵を築き、以来200年以上に渡り伝統を継承・発展させ、旨い酒を探求し続けている日本酒「黒龍」の蔵元です。白山を源とする北陸屈指の大河川、九頭竜川の名水が湧き出るこの土地で、全盛期には17もの軒を連ねた酒蔵も、現在では石田屋の屋号を持つ黒龍酒造と、他一軒にまで減少しました。
当社は創業以来、伝統文化である日本酒造りを継続できた地元への感謝の念から、地域の活性化に向けた取組ができないかと熟考の結果、福井の自然と共存し、地元で永く伝統を継承・発展させてきた様々な醗酵技術や地場産業を国内外にも広く知ってもらうための情報発信拠点施設として「ESHIKOTO」を整備しようと計画しました。
永平寺町内で新拠点整備に必要な土地を探したところ、事業実施に適した場所は農地で、そのままでは建設に着手できませんでした。様々な方法を検討する中で、地域未来投資促進法に基づく規制の特例措置により農地転用が配慮されるケースがあることを知り、「ESHIKOTO」を整備するためにはこの制度しかないと思い、永平寺町役場のサポートを受けながら地域経済牽引事業計画の承認を受けるなど、必要な手続きを進め、2018年7月に無事に農地転用が認められました。その後地域住民の理解を得ながら施設整備を進め、2022年6月に「ESHIKOTO」において、小売店とレストランを先行オープンさせることができました。2024年に予定している北陸新幹線の福井延伸に伴う新たな観光客誘致を図るため、地域に根差した醗酵文化の魅力を体験できる観光施設として、今後は見学・体験・商業施設の整備や宿泊施設との連携を進め、地域経済へ一層貢献できるよう取り組んでいかれるとのことです。
【黒龍酒造株式会社】
【情報施設ESHIKOTO】
【黒龍酒造の丹精込めた日本酒の数々】
税制支援である地域未来投資促進税制は、地域経済牽引事業計画に従って建物・機械等の設備投資を行う場合に、課税の特例が受けられます。措置を受けるためには、府県知事による地域経済牽引事業計画の承認に加えて、国(主務大臣)による課税特例の確認が必要です。
地域未来投資促進税制を活用された事業者とその声を紹介します。
当社は、ガス系消火設備のパイオニアとして創立から70年以上にわたり、「火災から人命・財産を守る」という社会貢献度の高い事業に取り組み続けており、ガス系消火設備では国内トップシェアを誇ります。
研究開発から設計、生産・施工、メンテナンスまで自社で一貫して行っており、メーカとしての顔の他にエンジニアリング会社、メンテナンスサービス会社の顔も併せ持つ、ガス系消火設備の全てをカバーしたトータルソリューションを提供できる企業です。
2018年5月に兵庫県三田市に新たに工場棟、倉庫棟を建設し、容器弁、噴射ヘッド、制御盤等消火システムの主要機器の生産を開始しました。
その上で、更に同三田工場敷地内に新技術の確立・新製品の開発を継続すべく研究棟を建設することになり、その事業計画に対して兵庫県から地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画の承認を受けました。
研究棟の建設に当たっては地域未来投資促進税制を活用し、地域経済牽引事業計画に定められた研究棟、実験施設及び実験機械装置等に対する課税特例の確認を国より受け、税額控除を受けることができました。
この研究棟には実験設備も設置しており、今まで挑戦し辛かった新技術への挑戦や、工場棟と隣接しているため研究部門と製造部門との連携スキームの相乗効果も生まれています。
地域未来投資促進税制の活用により研究予算を充実させることができ、工場棟との隣接メリットを活かすことで同業他社との差別化を図るべく先進性のある商品開発に取り組み、今後の販売に大きく寄与するものと期待されます。
【斬新なデザインの新研究棟】
【新研究棟と生産拠点の三田工場】
地域未来投資促進法の承認を受けた事業者は自治体の条例に基づき地方税の減免を受けることができます。
不動産取得税の減免を受けた事業者とその声を紹介します。
当組合は、1991年に料理用の包丁や農業用の鎌、刈込鋏、鉈など打刃物の産地である福井県越前市を拠点として、越前打刃物という伝統産業を未来につなげる目的で設立しました。越前打刃物を製造する小規模な事業者の後継者グループが、共同で産地ブランド商品の開発などの活動を行ったことをきっかけに、協同組合を組織したものです。現在、当組合加盟事業者数は13団体で事業活動を行っています。
1993年に協同組合の拠点、共同工房、直販所として「タケフナイフビレッジ」を竣工。中でも、複数の刃物会社の職人が働く共同工房を一般公開したとことで、閉鎖的なイメージの伝統産業を「産業観光」へと生まれ変わらせることに成功しました。
更に生産力強化のために見学工房を併設した新しい拠点施設を増設することになり、その事業計画に対して福井県から地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画の承認を受けました。
この新工房建設によって効率的な越前打刃物の製造に着手し、共同での後継者育成、さらに工房見学・体験による付加価値創出など、伝統工芸が生き残るための取組を、効率的に生産性を高めながら、海外への販路開拓を含め、越前打刃物をさらに成長と進化をさせていく事業を実施することができました。
事業実施に当たっては地域未来投資促進法の承認を受けた事業者として福井県の条例に基づき不動産取得税の減免及び越前市による地域未来投資促進法の承認事業者向け補助金も活用しました。
【新たに整備した施設】
支援措置の活用により事業者の投資初期のキャッシュフローが改善したことで新工房での職人の新規雇用に繋がり、また、全国から職人希望の若者が集まるなど組合員の平均年齢が41歳と大変若いです。18歳から80歳までの幅広い年齢が集っていますが、若手職人たちの独立に向けた準備も行っています。当協同組合では伝統産業界の課題である後継者育成を積極的に行っています。
【加工の様子】
【タケフナイフビレッジの職人たち】
近畿経済産業局 地域経済部 地域開発室
電話:06-6966-6012