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2025大阪・関西万博を見据えた地域ブランドづくり
世界の人々を魅了する地域ブランドへ
担当課室:地域ブランド展開支援室

最終更新日:令和4年11月1日

鯖江のめがね、泉州タオルなど、関西には数多くの地域ブランドがあります。近畿経済産業局では、想定来場者数を約2,820万人とする「2025大阪・関西万博」を好機ととらえ、それら地域ブランドが世界の人々から評価されるものとなるような取組を行っています。

1.取組内容

(1) モデルとなる12の地域ブランドの選定、サポート

令和2年10月に「2025年に、国内外のマーケットを獲得するために、あと一押しが必要」と考える関西の地域ブランドの中から10ブランドを選定しました。その後、令和3年9月に「丹後織物」、「播州織」を追加選定し、それら12の地域ブランドへのサポートを行っています。
 サポートの内容は大阪国税局や近畿農政局等の国の出先機関をはじめ、中小機構やJETRO、INPIT等の支援機関、さらにはデザイナーや弁理士等の専門家とも連携し、各地域ブランドの課題解決に資する施策の活用や、情報提供等を行っています。
 加えて、いくつかの地域ブランドでは、ブランディングの専門家と地域の企業、関係団体、地方自治体等をメンバーに、自分たちの地域ブランドの強みや、それに対する想いなどを改めて検討する場を設け、新たなブランドコンセプト作りなどを支援しています。
 令和3年度は「信楽焼」、「和束茶」、「奈良酒」、「和歌山ニット」において前述のブランドコンセプト作り等の支援をTCI研究所の西堀耕太郎氏をブランドプロデューサーとして迎え、行いました。

【参考】選定した12の地域ブランド

  • 1. 鯖江のめがね(福井県)
  • 2. 信楽焼(滋賀県)
  • 3. 丹後織物(京都府)
  • 4. 和束茶(京都府)
  • 5. 泉州タオル(大阪府)
  • 6. 播州織(兵庫県)
  • 7. 三木の酒米等(兵庫県)
  • 8. 丹波篠山の黒大豆等(兵庫県)
  • 9. 淡路島の食と香り(兵庫県)
  • 10. 奈良酒(奈良県)
  • 11. 広陵くつした(奈良県)
  • 12. 和歌山ニット(和歌山県)

(2) 地域ブランドネットワークサロンの開催

地域ブランドの新規市場開拓やコラボレーションなどが自然と起こるプラットフォームの形成をめざし、12の地域ブランド関係者と支援機関、専門家等とのネットワークづくりを目的とした、地域ブランドネットワークサロンを開催しています。令和3年度は3回開催し、各地域ブランドの取組紹介や、関西以外の地域で地域ブランドのブランド力向上や、DXの推進に取り組む団体からのご講演、地域ブランド関係者のつながりづくり、課題共有を目的としたワークショップを開催しました。
 こうした取組がきっかけとなり、例えば、兵庫県の4つの地域ブランドでは、金融機関が中心となって、それら地域ブランド関係者同士の意見交換の場が設けられるなど、新しい動きも生まれています。

(図1)地域ブランドネットワークサロン

(図1)地域ブランドネットワークサロン

地域ブランドネットワークサロンの様子
地域ブランドネットワークサロンの様子

地域ブランドネットワークサロンの様子


(3) 地域ブランド関連企業への経営力再構築伴走支援の実施

令和4年度より、12の地域ブランドの関係企業に対し、民間の伴走コンサルタントと局職員から成る官民合同チームを結成し、プロセス・コンサルティング※の考え方を用いながら、企業が抱える本質的課題の解決に向けて支援を始めました。

※ プロセス・コンサルティング
「傾聴と対話」を通じてクライアントとの信頼関係を構築し、当事者の「気づき」に基づき、組織の変革に向けて自ら行動を計画・実行する過程(プロセス)を支援するコンサルティング手法。

(4) 在京都フランス総領事館と連携した特別版マルシェの開催

令和4年9月には、在京都フランス総領事館の協力のもと、同総領事館が定例開催している「Le Marche(ル・マルシェ)」の特別版として、マルシェスタイルの販売・商談イベントを開催しました。同イベントは近畿経済産業局と在関西の外国公館とが連携した初めての取組で、12の地域ブランドの関係事業者のうち、BtoC商品を中心に取り扱う30の企業や団体が出店し、新たなビジネス機会の創出のみならず、フランスをはじめとする海外と関西との文化・ブランド・ビジネス交流の一層の強化に取り組みました。

※イベントHP
「Le Marche special day ~ Kansai limited twelve ~」を開催しました!

特別版マルシェの様子
特別版マルシェの様子

特別版マルシェの様子


これらの取組を通じて、各地域ブランドが関係者と協働し自立して「稼げる地域」となるよう、「地域ブランドエコシステム」づくりを進めます。

(図2)地域ブランドエコシステムのイメージ

(図2)地域ブランドエコシステムのイメージ

こうしたサポートのうち、昨年度に実施した4つの地域ブランドをご紹介いたします。

2.信楽焼

信楽焼

信楽焼の概要

信楽焼は日本六古窯の一つで日本の代表的な焼き物の産地です。その歴史は鎌倉時代に始まったとされており、信楽焼の土の特性から、風呂釜などの大物から小物まで幅広い製品に対応できるのが特徴です。1970年、大阪万博のシンボルとして制作された「黒い太陽」は信楽の技術が駆使され技術的、歴史的価値を上げ、2019年に放送された連続テレビ小説「スカーレット」の舞台としても、産地は大きく注目されました。
 現在、域内に点在している22の窯元をつなぐ観光ルート(信楽窯元散策路のWA)が構築され、焼き物を中心にしながら各種地域資源を織り交ぜた新たな観光ビジネスや観光商品の創出につながっています。


令和3年度の取組

令和3年度は、信楽陶器工業協同組合、信楽陶器卸商業協同組合、信楽町観光協会他、信楽焼の各団体の代表者を中心に座組を組み、プロデューサーに前述の西堀氏のほか、甲賀市役所をはじめ、信楽窯業技術試験場、滋賀県陶芸の森、信楽焼にかかる各関係者がオブザーバーとして参加し、万博に向けた信楽焼のブランド構築のための会議(以下:検討会議)を計5回実施しました。
 検討会議では、ブランディングに必要な信楽焼の独自性(大物から小物まで製作可能、緋色という独自の色、紫香楽宮跡があるなど)や、共感性(人が親切、常にイベントがあるなど)は何かを議論、ブランディングに必要な素材を抽出、メンバー間で共有しました。また、インバウンド旅行専門家や百貨店のバイヤーから見た信楽焼の良さや産地への期待についての講演、信楽焼のブランディングの方向性の提案を受けながら、議論を重ねました。
 その結果、信楽焼の独自性を活かしたブランドコンセプト「土と火と 人が生み出す『緋色の里 紫香楽(しがらき)』が生み出され、このコンセプトをもとに万博に向けた、アクションプランも策定されました。


2025年大阪・関西万博を好機に

「大阪万博をきっかけに日本を代表する陶器産地として再認識される」ことを目指して、策定された2025年に向けたアクションプランに基づき、「緋色の里」コンセプト商品試作など、信楽焼の産地全体のブランド力向上に向けた取組を行っています。


3.和束茶

和束茶

和束茶の概要

和束町は、京都府内産茶葉の約4割を生産する府内最大のお茶の産地で、町内いたるところに広がる茶畑とそれを大切に守って来た人々やその暮らし、そしてここで生み出される高品質なお茶が織りなす空間を「茶源郷和束」として発信しており、京都府で初めてのふるさと名物応援宣言を行っています。
 町の中央に流れる和束川と山に囲まれた地形により昼夜の寒暖差が大きく、霧が発生しやすいといった地理的特徴があり、その霧の遮光効果(自然のカーテン)により、旨みや香気が強い「和束茶」が生まれ、この特徴から、和束茶は宇治茶の中でも「親茶」と呼ばれ、味の決め手となることから古くから高値で取引されています。


令和3年度の取組

令和3年度は、和束町内個人農家や事業者を集め、プロデューサーに西堀氏、オブザーバーとして京都やましろ農業協同組合を迎え、和束町役場も交えたうえで、幅広い分野における専門家の講義を受けながら、計5回のブランド構築のための会議(以下:検討会議)を行いました。
 検討会議では、ブランドコンセプトの確立に向け「和束茶」に対して持って欲しいイメージやどんな人に和束町に来て欲しいかなど、和束茶の本質的価値やありたい姿について、活発な議論が展開されました。議論の結果、共通認識として、「お茶と人が共に暮らす『茶源郷和束』」というブランドコンセプトが完成しました。その後、完成したコンセプトをもとに、同役場主導でブランドPR動画を作成しました。
 さらに、検討会議で出来上がったブランドコンセプトやPR動画のお披露目会として、町内向けブランド報告会および、町外向けブランドPRイベントを開催しました。イベントでは、参加者に対して各生産者のお茶を配布し、お茶のこだわりやその淹れ方などを説明したところ、お茶好きの参加者からの反応も良く、盛況を博しました。


2025年大阪・関西万博を好機に

「大阪万博をきっかけに日本を代表する茶産地として再認識される」ことを目指して、2025年に向けたアクションプランに基づき、産地全体のブランド力の向上に向けた取組を行っています。


4.奈良酒

奈良酒

奈良酒の概要

奈良県は、日本酒造りと深いかかわりのある土地柄で、古来より「奈良流は酒造り諸流の根源なり」といわれています。
 清酒発祥の地といわれる奈良では、奈良県酒造組合加盟の28の酒蔵があり、奈良の豊かな自然環境の恩恵を受けながら、それぞれの蔵元が独自の特徴を持ち、創意工夫や杜氏の伝統技術により、文化を活かした様々な清酒が製造されています。


令和3年度の取組

令和3年度は、奈良県酒造組合が参加し、プロデューサーに西堀氏、マーケット専門家としてミテモ株式会社の澤田哲也氏、知財専門家の岡恵氏を迎え、奈良酒のブランディングについて、計4回のブランド構築のための会議(以下:検討会議)を行いました。
 「ブランディングとは?」という話から始まり、「奈良酒とは?」、「奈良酒のありたい姿とは?」というテーマについて組合員が考え、活発な議論が展開されました。
 そして、マーケットイン視点による専門家からの意見も踏まえたうえで、「奈良酒のブランド価値について」の議論も行われ、その結果、メンバーの共通認識を具現化した「はじまりとこれからの酒 万葉 奈良酒」という新たなブランドコンセプトが生まれました。


2025年大阪・関西万博をきっかけに

「日本を代表する日本酒産地のひとつとして認識される」ことを目指して、2025年に向けたアクションプランに基づき、各蔵元で新たな商品開発に取り組むとともに、イベント等にて代表銘柄の展示や新たに作成したPR動画の放映を行い、SNS等の広報媒体を活用しての情報発信の準備も始めています。

5.和歌山ニット

奈良酒

和歌山ニットの概要

明治から令和と5つの時代を股にかけ、丸編ニット生地生産国内1位を誇るニットの総合産地として、その歴史の「糸」を紡いできた和歌山のニットは、非常に風合いがよく、高級ブランドのOEMはもとより、近年では各工場がそれぞれの強みと特徴を活かしたファクトリーブランドを立ち上げる動きも進んでいます。


令和3年度の取組

令和3年度の取組では、和歌山ニットのブランド価値を高めたいと思っている組合員有志が参加し、プロデューサーに西堀氏を迎え、様々な分野における専門家からの意見も踏まえながら、計6回のブランド構築のための会議(以下:検討会議)を行いました。
 検討会議では、和歌山ニットの存在価値、ありたい姿などのテーマについて改めて考え、活発な議論が展開されました。そして、和歌山ニットの情緒的価値を見つめ直すとともに、和歌山ニットのブランド化にあたり、中核となる「ニットイズム」を5項目にまとめ、「その先を編む、ニットイズム『和歌山ニット』」というステートメントを作り上げました。


2025年大阪・関西万博にむけて

「グローバル市場でも認知される日本を代表するニット産地になる」ことを目指して、2025年に向けたアクションプランに基づき、産地全体のブランド力の向上に向けた取組を行っています。


関連施策へのリンク

地域ブランド支援

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 通商部 地域ブランド展開支援室

電話:06-6966-6054

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