トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 2022年11・12月号 企業・地域の取組紹介
最終更新日:令和5年4月3日
経済産業省では地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれ、地域経済の中心的な担い手となりうる企業を未来企業として選定・公表しています。
今回は、地域との共存、地域への貢献に取り組みつつ、自社事業の新たな展開にも活かしている未来企業の取組を2社ご紹介します。
当社は、1902年に創業した玩具、生活雑貨の企画・製造・卸を行う会社です。創業当時は農機具の製造販売を行っており、その後、農機具の端材で作った虫かごを全国に売り歩いたのが、現在の当社の業態である「玩具の企画・製造」の原点となっています。虫かごの販売をきっかけに、次第に顧客から「虫かごと一緒に子供たちが遊べるものを」というニーズが当社に寄せられ、水鉄砲やしゃぼん玉など様々な季節玩具を製作するようになりました。現在では500点を超える当社のオリジナル商品が、全国の子供用品売り場やホームセンター、家電量販店などで販売されています。
一方、季節玩具のトレンドの変化は激しく、毎年新しい商品が求められます。当社は、自社工場を持たず、自社内で商品の企画・開発を行い、製造は外部委託するファブレスの形態とすることで、製造設備にとらわれない大胆な商品企画により新しい商品を生み出しています。これを支えるのは、国内外100社以上の製造委託先とのネットワーク。企画内容に応じて最適な委託先と契約して商品開発を行います。また、敷地面積3,000坪を誇る自社の物流センターにより、小ロットでも迅速な商品発送のニーズに応えています。
当社の強みは、激しいトレンドの変化をとらえ、ニーズに応える商品を生み出す企画力。その源泉となるのがスタッフ一人一人の企画力、発想力です。当社ではこの力を鍛える取り組みに最も注力しています。商品企画は企画部門が担当するのが一般的ですが、当社ではそのような固定観念にとらわれていません。全スタッフがアイデアマンであるという発想から、日頃より新しい発想を生み出すトレーニング「アイデアミーティング」を行っています。
アイデアミーティングでは、正社員、パート、部署に関わらず、全スタッフで数人ごとの班を編成し、それぞれの班で週1回新商品のアイデアを出し合います。班ごとに出し合ったアイデアを企画書としてまとめて、4か月後、スタッフ全員の前で発表し、全員で採点を行い、高評価を得られた企画を商品化します。
8年間継続しているこの取組を通して、スタッフは常にどんなものが売れるのかという意識を持つようになり、休日にスーパーで買い物をしている時など、無意識にアイデアミーティングの企画を探す習慣ができました。こうしたスタッフの意識の積み重ねが、当社の強みであるニーズに応える商品を生み出す企画力につながっています。
また、一つの商品を企画、商品化して販売先まで届けるためには、様々な部署と調整することが求められ、関わるスタッフ間の円滑なコミュニケーションが必要不可欠です。部署を超えたメンバーが定期的に顔を突き合わせてディスカッションを行うアイデアミーティングは、社内のコミュニケーションの円滑化に寄与しています。このほかにも、毎月設定するテーマに沿って1分間、一人ずつ朝礼で自分の体験や想いを話す場を設けるなど、お互いの人となりを知り、良い仕事につなげるための取組を実践しています。
和佐野社長は、スタッフ一人一人が、この会社で成長して欲しいと考えています。会社や組織が人を成長させるのは限定的で、やはり成長意欲の大きい人が仕事を通じて成長していく。全てのスタッフが成長したいと思うきっかけを与え続けることが組織やリーダーの重要な仕事。
こうした考えのもと、社外研修への参加、資格取得のサポートといった教育訓練の機会を提供するとともに、健康経営の実践や、仕事と家庭が両立できるような職場環境の整備に取り組んでいます。
これらの取り組みを通して、玩具の企画・製造を行う当社にとって少子化という厳しい経営環境にある中、お客様第一の基本理念を貫きながら、農機具から虫かごへ、そして様々な玩具へと取り扱う商品を柔軟に変えてきたように、変化を恐れず挑戦を続ける当社の今後に期待が高まります。
当社は日本で初めて自動ドア用コントローラーを開発した会社です。「独創のセンシング技術とコントロール技術で安全と快適な社会の実現に貢献すること」が企業理念となっています。普段の暮らしの中でも、建物や電車の自動ドア、駅のホーム等で、当社の技術が使われ、より安全で快適な暮らしを支えています。
1952年に設立され、自動ドア用、新幹線・特急電車の通路ドア用、駅のホームドア用センサーとコントローラー、大型船舶の電子制御機器・操作盤・制御盤等の開発・設計・製造を行っています。
当社の強みである独創のセンシング技術により開発された自動ドア用センサーは、その高度な機能と品質が評価され、国内でのシェアも、東海道・山陽新幹線の通路ドア用センサーは100%、ビルフロント向け自動ドアで60%とトップシェアを誇っています。そのほか、大手機械メーカーへ納入する大型船舶用制御盤も高いシェアを有しています。
当社のセンシング技術は意外なところにも使われています。樽生ビール用ビール切れストッパー「ハッピーエンド君」や、ビールサーバーに後付けできる自動サーバー「スマートオート」は、ビールの噴き出し防止や最後の1杯まで注げるという機能により飲食店現場での困りごとを解決できる製品として大ヒットしました。
また、センシング技術を基に、事業をさらに成長・発展させるため、新分野にも展開しています。ロボット分野、宇宙開発分野、医療・見守り分野、そしてDX・GX分野です。
ロボット分野では、ロボットに人が接触しそうになると、光センサーにより検知し運転を停止する「ロボット用安心センサー」、宇宙開発分野では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)向けで開発して人工衛星つばめに搭載された「超小型人工衛星用TDI撮影装置」、医療・見守り分野では医療ロボット向け基板や浴室見守りセンサーをそれぞれ開発し、事業展開しています。
そして、当社が特に注力しているのが、DX・GX分野です。
中小企業の製造現場では、既存の機械設備がスタンドアロンで稼働し、機械の稼働状態や生産数のデータを把握する機能が備わってない古い機械も多く、監視や管理ができていないことが、生産性向上への大きな課題として挙げられます。また、中小製造業でIoT化を検討する場合、最新鋭の機械導入の余裕もないのではないかと考えられます。
当社は、これらの課題を解決するには、「作業者も操作に慣れている既存の製造設備を活かした仕組みにすれば良いのではないか」と考え、既存の機械に簡単に後付けできるIoTデバイス(エッジデバイス)のSmartFit Proを開発しました。
エッジデバイスとは、インターネットに接続された装置のことを指します。各機械装置をセンシングし、その計測データをインターネットを通じてPCやスマートフォンで情報を把握・管理できる小型装置です。この装置は、出力データの規格が異なる既存の製造設備に設置でき、温度・湿度・気圧・3軸加速度・照度・位置情報(GPS)といったデータを同時に計測します。
これらの計測データを把握することにより、例えば、機械の稼働率やチョコ停・故障の状況、生産履歴情報、倉庫での保管状況等を見える化でき、作業や生産の効率化に結びつきます。このように、既存の機械設備に簡易な方法でIoT技術を活用することによって、製造現場のDX化につながっていくものと考えています。
また、このセンシング技術と無線通信技術を応用し、エアコンの操作やドア・窓の開閉状態を遠隔監視できるスマートハウス製品にも取り組み、企業や個人宅のセキュリティや効率化に寄与するものとして、レンタルハウスに採用されるなど次のDX製品として期待されています。
さらに、GX分野では、企業のCO2排出量を可視化するIoT/AIプラットフォームを開発しています。当社のエッジデバイスは「簡単に後付け」ができ、低コストでCO2排出量の測定が可能になります。まずは測定器の導入コストに課題を抱えている国内の中小企業に向けて、普及を加速させます。
「既存事業はOEMが中心だったが、これからはDX・GX分野で自社製品・プラットフォームサービスも事業の柱にしていきたい。中小企業の製造現場やオフィス、環境などあらゆる分野にDX・GXを取り入れてもらうことで、中小製造業が本来持っているものづくりの能力を最大限発揮できる手助けをしたい。そのことがひいては日本の競争力の向上につながる。」と力強く語る和田貴志専務。
今後は、自動ドア用センサー等の得意分野においては国内トップシェアを維持しつつ、DX・GX事業を2027年までに既存事業と同程度の売上まで成長させることを目指しています。
世界をリードするセンシング技術や企画力・開発力を活かし、DX・GXで企業の課題解決に取り組み続ける当社の動きに今後も目が離せません。
近畿経済産業局 地域経済部 地域未来投資促進室
電話:06-6966-6012