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最終更新日:令和4年11月1日
国内でも屈指の学生数を有する「近畿大学」。
同大学は2022年4月に、第15番目の学部として「情報学部」を新設しました。
これら3つのコースを用意し、Society 5.0を実現するクリエイティブな先端IT人材の育成を目指す同大学は、「ものづくりのまち」として有名な「東大阪市」に立地しています。
(情報学部棟外観)
今回は、「まち全体が大きな工場」である東大阪の活力を増す一つのトリガーとなる可能性を秘めた同大学の取組について情報学部 井口学部長代理、情報学部学生センター 矢藤事務長にお話をお伺いし、ご紹介させていただきます。
新しく設置された情報学部棟は4階建てで、その1階にあるのがオンデマンド型授業を受けることができる「オンデマンドサロン」です。
現状、文部科学省が提示する大学設置基準では、卒業要件として習得する単位数のうち、オンライン授業による修得単位数は60単位を上限とすることが定められています。(大学設置基準第32条第5項)
そこで、同学部においては、多様な授業形態に対応可能な、学生が自由に利用できるスペースとして「オンデマンドサロン」を設置し、既述の60単位までメディア授業を取り入れることで、リアル空間とサイバー空間をフル活用して、時間に縛られない効率的な学びを促進しています。
(1F オンデマンドサロン)
そして、この場に取り入れられているのが「地域企業との接点」です。
授業を通し、成長し、アイデアを生み出していける人材として成長していく中で、アイデアを形にできる「地元のものづくり企業の存在」に触れながら成長していくことは、学生がより厚みのある人材へと成長するために重要な要素として位置づけられています。
(オンデマンドサロン内に設置された東大阪の町工場製品と企業群名)
また、東大阪では「こーばへ行こう!」という、複数の企業が群となって取り組んでいるオープンファクトリーイベントが2018年から継続していたこともあり、特定の個社のみではなく、複数の地域企業が持つ様々な強みを活かしあったおしゃれで居心地の良い空間へと繋がった、まさに大学と地域のご縁が活かされ表現された場とも言えます。
同学部の特徴として、1Fのオンデマンドサロンに限らず、2F、3Fにおいても研究室の「壁」が無いことが挙げられます。
これまでの理工学部情報学科の研究室においては、研究室ごとに個室があり、研究室内での情報共有・議論が、日常的に、活発に実施されていました。その一方で、研究室間の情報共有や、他の研究室のゼミ生、教員とのコミュニケーション・議論は、自然発生的には起きにくい環境でした。その障壁の一つに、研究室を閉ざす物理的な「壁」があると考えました。
そこで、同学部棟の研究エリア・院生室エリアの「壁」を撤廃し、隣の研究室で今、どのような研究をしているのか、どのような学生がいるのかなど、目的を持っていなくても偶発的に交流が生まれ、互いのナレッジを共有し合えるきっかけが容易に生み出される空間を作り出しているのが同学部棟です。
要は専門分野の違う教授、学生同士が出会える場とすることで、セレンディピティ※が生まれる場となっているのです。
※偶然と賢明さによって、探していたものと異なるものを発見すること。
(2F、3Fの研究エリア・院生室エリア)
他にも学部棟内には高性能のプロジェクターを設置した壁面4面がそのまま大型スクリーンになるデジタル空間「i-CORE」も備えており、学生のプログラミングによる作品の展示や、研究発表の場、総合大学の強みを最大限に活かした他学部の学生との様々なアクティビティの場として活用することで、「自分も使ってみたい」という競争意欲や、他者の作品を見て「何か一緒にできないか」といった触発を生む場となっています。
(デジタル空間i-CORE)
よって、「教授が教え、学生を成長させる場」というものではなく、まさに「学生が互いに刺激し、触発され、教授と共に学びを進化させる場」となっています。
Society 5.0の実現に向けて第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、AI等の技術革新)が進展する中、社会から強く求められているAI活用やデータ分析、サイバーセキュリティ対策などを扱う、先端IT人材の育成を進める同学部は、卒業生が「デジタルと情報学の専門家集団」として今後の未来産業を地域産業と共に歩む牽引者・伴走者となり、社会に羽ばたくことを期待しています。
これは同学部の愛称として掲げる「KDIX※」にも現れています。
※Kindai University Digital Informatics eXperts
(KDIXのモニュメント)
同大学は学部数においても国内屈指の総合大学です。
卒業生たちがKDIX(デジタルと情報学の専門家集団)として羽ばたき、各社会産業において活躍する中で必要な実証・実装における様々な理工系学部との協業においても、大学と産業界を繋ぐ「翻訳者」として活躍していくことが期待されます。
また、町工場が集積する東大阪というエリアでKDIX(デジタルと情報学の専門家集団)が育っていく大学が成長していくことは、まさに地域と共に成長する「未来の可能性を創り上げる共創の場としての大学」を体現するロールモデルとなるものであり、今後の発展が期待されます。
近畿経済産業局 地域経済部 地域経済課 イノベーション推進室
電話:06-6966-6013