トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 2022年11・12月号 企業・地域の取組紹介
最終更新日:令和4年11月1日
日本のものづくりの原点、文化の象徴として長年国民生活にゆとりと潤いを与え、地域経済の発展に貢献してきた伝統的工芸品産業。時を経て、昨今はライフスタイルの変化による需要の低迷、後継者不足等さまざまな課題を抱えています。一方では、伝統的な技術・技法を活用し、時代の潮流や現代の生活様式に合った新商品が多数開発され、日本の優れたものづくり技術は世界からも注目されています。
今回は、伝統的工芸品「京仏具」の製造事業者である「株式会社牧野漆工芸」の取組を紹介します。
伝統産業の技術×○○のページには、他にも伝統の技術を活かし、産地や産地外のプレイヤーを取り込み、シナジーを生み出すことで産地を活性化し、異分野展開を図ることで伝統技術を後生に引き継ぐことへ果敢に挑戦する事業者を紹介しておりますので併せてご覧ください。
京都における仏具は、8世紀ごろその製作が始められたと推定され、11世紀初頭に仏師定朝が京都の七条に「仏所」を設け、仏工を集めたのが本格的な仏具の歴史の始まりと考えられます。江戸時代の初めになると、宗門改め制度に伴い、各家庭に仏壇を安置するようになりましたが、これにより各家庭における仏壇の需要が増加し、生産も本格化していきました。
現在に至るまで、京都は仏壇・仏具の一大産地でありましたが、それは単に生産量の面だけではなく、優れた技術及び品質が備わっているということが大きな特徴です。宗派によって仏具の様式もさまざまなことから、大量生産が困難で、また、木工・金工・漆工などあらゆる技術を駆使した総合工芸品であることからも、その生産は、細かい分業にもとづく四十余職種もの専門的な手仕事が中心となっています。これらの条件が重なり、より品質の高いものへと発展していきました。
株式会社牧野漆工芸は、牧野家3世代、そしてベテランから若手たちが漆の塗技術を生かし、大型の仏壇仏具の新調・修復を手掛ける京都の大手塗師集団です。多種多様な刷毛のみならず、スプレーガンを用いた100%天然漆の吹き付けなども行います。その技術の幅広さと高度さにより、国内外のインテリア等にも応用範囲を広げつつあります。
2020年次期4代目 牧野昂太氏の入門を契機に、今まで手がけていた大型の仏壇仏具の新調・修復で培ってきた漆技術(金閣寺の修復も同社で手がけた)を活かしハイエンド・インテリア家具やオブジェなどの制作に着手し、自社ブランドである「MAKINO URUSHI DESIGN」を立ち上げました。
京都中央信用金庫の支援策を活用して、コーディネーターの株式会社TCI研究所、海外アドバイザーのScenery International PTE.LTD の斎藤峰明氏、海外デザイナーの Gernier et Linker社とのミーティングを重ね、海外向けインテリア商品開発・販路開拓に取り組み、長年蓄積してきた漆技術の見本と新開発の漆技術の見本をカタログやサンプル集として整理しました。漆の価値を訴求できるアーカイブ集やCG などインテリアシーンでの施工事例イメージ集等を作成しました。
また、成果物をリニューアルした自社のWEB サイトへ掲載するほか、新たな取引先として、大手キッチンメーカーやラグジュアリーホテル等とのコラボを展開しています。
同社の手がけた神社・仏具の漆塗
同社とパリの家具デザイナーのコラボ製品
(黒漆にクラック加工を施し、同社が仕上げています。)
同社とラグジュアリーホテルのコラボ製品
同社とフランスのデザイナーのコラボ:清水焼の上に漆塗りの商品
若い職人が伝統産業に中々従事できない時代の背景には、この先の時代が見えない今の現状があり、これからのビジョンを見せる事が重要になると思います。
私たちは、今海外に日本の技術の集大成を広めています。
残していく物はしっかりと残しつつ、伝統を守り新しいものも取り入れ、今取り組んでいる事が次の時代の伝統となるよう動いています。
必ず勝機はあると思います。一丸となって頑張っていきます。
牧野チーフマネージャ
(ご参考)伝統的工芸品産業支援補助金
「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」の規定に基づき経済産業大臣が指定した工芸品の組合、団体及び事業者等が実施する事業の一部を国が補助することにより、伝統的工芸品産業の振興を図ることを目的としています。
各産地における伝統的工芸品の原材料確保対策事業、若手後継者の創出育成事業のほか、観光業など異分野や他産地との連携事業、国内外の大消費地等での需要開拓などに対して支援を行います。
近畿経済産業局 産業部 製造産業課
電話:06-6966-6022