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最終更新日:令和4年11月1日
大衛株式会社は、昭和26年創業の大阪市に本社を置く会社で、「アメジスト」ブランドで婦人科用、手術用、医療用の各種衛生用品の製造販売、関連商品や医療機器の輸出入を行っています。同社の経営理念「いのちと地球をまもる」は、SDGsの考え方と重なり、本業がSDGsのゴール3「すべての人に健康と福祉を」の達成に向けた活動につながっています。日本国内で産まれる子どもの数が減る中ベトナムに進出し、感染対策がなされた安心・安全な環境での出産や現地の医療に貢献しています。
大衛株式会社の経営理念
日本では、国公立病院の産婦人科向けの出産用品のシェアが高く、産婦人科が求めるニッチな領域の事業を幅広く展開しています。
子どもの数が減少する中、産婦人科以外の診療科向け事業を強化しており、手術用部材の感染対策等にも強みを持っています。例えば、手術用の使い捨てガウンは、1人で着用可能な特殊な形状で大阪大学と共同でサポイン事業を活用しながら開発しました。医療従事者にとって着心地の良さと感染対策が両立しています。また、ウイルスや菌を拭き取り、院内感染を防ぐ環境清拭用ワイパー、アメジストワイパーは、低水準で使い勝手のいい薬剤を使用しながらノロウィルスを含む幅広い抗菌スペクトルを有し、病院の感染対策に貢献しています。
産婦人科向け製品に加え、ガウンなどの手術用製品、感染対策製品を手がけてきた同社は、病院向け製品を手がけた経験と信頼を生かして、近年は一般向け製品も強化しています。助産師と共同開発したおむつの臭いが漏れない袋NISTは1年前からドラックストアで販売、病院向けに開発した出産用の水だけぬれコットンは日本アトピー協会推奨品として一般向けに販売しています。
産科・婦人科用品
手術用使い捨てガウン
一般向け製品の例
ベトナムには収容力を超える出産数を抱える病院があり、女性が尊厳を守られながら安心・安全に出産するのが難しいという社会課題を同社が知ったのは、ベトナムのフエ地域と交流があった日本助産師会からの情報でした。ベトナム女性の安心・安全な出産に貢献できないか、そんな思いから事業がスタートしました。JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業」普及・実証事業を活用し、ベトナムの産婦人科向けに、分娩時のディスポーザブルキット(医療機器:経膣分娩用・帝王切開手術用)を販売し、日本の出産の感染対策の方法をベトナムに伝えています。
医師・助産師と妊産婦とのコミュニケーションを十分に取る文化が少ないベトナムにおいて、医師・助産師から妊婦に向けて、同社の製品使用による感染対策等のメリットを丁寧に説明することで、普段欠如していたコミュニケーションが充実し、妊産婦の満足度向上にもつながっています。
分娩時のディスポーザブルキット
現地法人を立ち上げた後、レンタル工場で産婦人科向けのディスポーザブルキットの製造をスタートしましたが、転職が日常的なベトナムでは人材の入れ替わりが激しく、製品の品質維持が課題となりました。そこで工場を閉鎖し、現在は日本や他国の製品をベトナムに安定的に輸出するスタイルでビジネスを展開しています。
現在のベトナム事業の柱は、付加価値の高い医療機器を日本からベトナムへ輸出し現地で販売する輸入代理店事業です。今後は、ベトナムを東南アジアのハブとして高度な医療機器を広く展開していきたいと考えています。
ベトナム法人が、ここ数年で出産のディスポーザブルキットの製造から、医療機器の輸入代理店へと事業の幅を広げたことは、病院に深く入って掴んだニーズに柔軟に対応する同社の強みを生かした展開です。日本法人においても事業展開を検討する際、ベトナムのような柔軟な対応ができないかと考えるようになるなど、国内事業にもプラスの影響を与えています。
加藤社長にこれから海外で社会課題解決型ビジネスの展開を目指す方へメッセージをいただきました。
「最終的にはビジネスとしてどう収益化するかが課題となるが、まずは海外に出てやってみることが大事。行く前に全てが分かることはない。行ってみて、何でもよいからやってみて、軌道修正しながら方向性を定めていけば良い。ネットの情報だけで分かったつもりになるだけでは、何も始まらない。」
同社にとっても、製造業として進出したベトナムで、医療機器の輸入代理店となる展開は想定外でした。全てを想定しようとすると、何も動けなくなるので、まずは、海外へ出て何でもよいからやってみること。それが、海外の社会課題解決ビジネスへの挑戦の第1歩と言えるのです。
近畿経済産業局 通商部 国際課
電話:06-6966-6031