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最終更新日:令和4年11月1日
奈良県生駒郡三郷町は、奈良県の西部に位置し、龍田の紅葉で知られる自然豊かな町です。ここでは100年以上前から雪駄の生産が盛んで、現在も多くの職人が活躍しています。雪駄とは草履の表面に皮を張ることで防水機能を与えた日本の伝統的な履物であり、傷みにくく丈夫であることと湿気を通しにくいことが大きな特徴です。
しかし以前の三郷町では、土産物店で販売されているような従来の雪駄か、着物に合わせて身につけるようなものしか製造されておらず、生活の中で特に若い女性が気軽にかつ、快適に履けるような雪駄がありませんでした。そこで同社はこのことに注目し、快適性とファッション性を兼ね備えた雪駄を作ろうと立ち上げられました。
(雪駄が展示・販売されているCafe funchana 奈良県生駒郡三郷町)
同社は2013年に、現代表取締役である星田和彦氏と三郷町の雪駄職人が出会ったことがきっかけで立ち上げられ、「守られる伝統」ではなく「求められるファッション」としての雪駄を目指し、履き心地の良さとデザイン性にこだわった雪駄の開発と生産を行っています。通常の雪駄よりも製造に必要な工程を増やし、三郷でも熟練の職人しか持っていない技術を活用することで長く履いていても足が疲れにくく、ふかふかで通気性にも優れた、「靴と同じような感覚で履ける」雪駄が生まれました。従来の雪駄は外履き専用ですが、同社が開発した雪駄は床を傷つけない設計になっているため、ルームシューズとしても利用できます。
また、鼻緒の部分にはヨーロッパのビンテージ生地や、日本のテキスタイル作家とのコラボ生地が使われたラインアップもあり、パステルカラーやドットの模様が入っていたり、スパンコールビーズが縫い付けられていたりと見た目にも楽しく、洋服にも合わせやすいことも同社の雪駄の大きな特徴です。
(実際の商品)
完成した雪駄は星田夫妻が経営するカフェ“Cafe funchana”で展示、販売されています。展示スペースを併設したカフェには、普段雪駄に触れる機会のない方も来店されるため、実際に精巧な職人技を間近で見ることができる貴重な場所となっています。
(展示されている様子)
雪駄の販売を本格的に開始すると国内だけではなく海外からも多くの反応を受けましたが、当初は海外向けの販売は行っていませんでした。2017年には世界中の優れたデザインが集まるイタリアの展示会「ミラノサローネ」に招待され、そこで高い評価を受けましたが、当時は海外との商談経験もなかったため、展示会には出品するだけで終わってしまいました。
その経験から海外の企業とも商談するための準備を始め、2021年にJAPANブランド育成支援等事業に採択されたことで実施した、海外向けのPR動画作成やイベント出店を通じて、現在も海外展開に積極的に取り組んでいます。
(ミラノサローネ2017の様子)
先述した通り、伝統的な雪駄に快適性とファッション性を取り入れたことが同社の強みですが、その根底には伝統的な地場産業である雪駄づくり存続への思いがあります。同社では、販売する雪駄の製作を地元の職人に委託していますが、少しでも職人に雪駄づくりに専念してもらえるよう、材料の購入や在庫管理、販売、問い合わせ窓口など雪駄づくり以外の業務をすべて担当しています。さらに、職人が製作した雪駄はすべて同社が買い上げることで、職人側が過剰在庫になるリスクを回避できるようにしています。こうした仕組みにより、同社は地場産業継続に取り組む企業の模範的なモデルとなっています。
(雪駄を製作している職人)
近畿経済産業局 通商部 地域ブランド展開支援室
電話:06-6966-6054