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地域経済の牽引役を担う地域未来牽引企業のご紹介(第5回)
顧客の声に耳を傾け、挑み続けるリーディングカンパニー
担当課室:地域開発室

最終更新日:令和5年4月3日

経済産業省では地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれ、地域経済の中心的な担い手となりうる企業を未来企業として選定・公表しています。
 今回は、地域との共存、地域への貢献に取り組みつつ、自社事業の新たな展開にも活かしている未来企業の取組を2社ご紹介します。

「顧客に寄り添い困りごとを解決する」をモットーにグローバルトップを目指す

カンケンテクノ株式会社【製造業】

当社は、産業界で製造時に排出される有害ガスをはじめ、地球の温暖化に影響を与えるガスを無害化する処理装置を製造する企業です。1978年に現社長の今村氏が設立しました。

主力の製品は半導体製造排ガス除害装置。CO2排出を低減した独創的な電気式の排ガス処理・除害装置は現在国内トップシェア、世界シェア20%を誇ります。2020年には世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業として、経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれました。

設立当時は、半導体に特化した小型の除害装置ではなく、スクラバーと呼ばれる水で排ガス中の有害物質を取り除く大型の除害装置を製造していました。大型除害装置は大量の排ガスを処理することには適していましたが、顧客であった半導体を製造する電気機器メーカーからは半導体の製造に適した小型の排ガス除害装置を求める声が上がっていました。半導体製造における排ガス処理量に対して、大型除害装置の処理性能は釣り合っておらず、操作性や処理効率の改善が必要というものでした。今後成長が期待できる半導体に着目していた今村社長は、半導体メーカーの声に耳を傾け、電気式の小型排ガス除害装置を開発し、製品化しました。電気式かつ小型のため、導入台数が多くなっても制御しやすく、操作性を高められるなどの利点があります。さらに他社のガス燃焼式の除害装置と比較してもCO2の排出量が圧倒的に少なく、環境負荷も少なくなり、大幅な省エネにもつながります。それらの機能性が高く評価されて、2万台を売り上げる国内トップシェアの製品となりました。

顧客の声に耳を傾けることは、その後の当社の成長の原動力となっています。「顧客に寄り添って困りごとを解決する」ということをモットーに、主要顧客の工場の近くに当社の拠点を設け、製造からメンテナンスまでを一貫して行うビジネスモデルを構築しています。そのため迅速な顧客対応やコスト面での競争力を高め、事業拡大につなげています。

当社の事業は国内のみならず、海外への進出も積極的に行っています。当社が初めて海外に進出したのは1988年。半導体の製造拠点が国内から海外へ移転する流れの中、国内で行っていたビジネスモデルを踏襲したものです。その後も半導体産業が盛んな台湾や中国、韓国、シンガポールを中心にアジア市場に販路を拡大し、現在7拠点を展開。海外でも「顧客に寄り添って困りごとを解決する」ことを実践し、海外での売上も増加しています。さらに昨年にはアメリカに新たにサービス拠点を立ち上げ、世界有数の大手半導体メーカーの工場付近に拠点を設置したところです。今後は他地域にも拡大予定であり、真のグローバルトップ企業を目指しています。

成長著しい当社ですが、今村社長は「常にチャレンジャー」だと言います。産業革命以降、化石燃料を利用し、利便性の高い生活や大きな経済成長を成し遂げてきました。しかし、地球温暖化防止のためにCO2排出の抑制と持続的な経済成長の両立が求められる時代には大きなゲームチェンジが起こる可能性が高く、新たな取り組みは無限にあると今村社長は考えています。大きく時代が変化する中で、「当社が、どういう会社になっていくのか、事業でどのように社会貢献できるのか、変革の時代の中にあって何ができるのか、を見据えながら、今後の成長・発展に取り組んでいきたい。」と今村社長は会社の今後に期待をこめています。

「顧客に寄り添い困りごとを解決する」という姿勢を貫き、常に挑戦し続ける当社の今後に目が離せません。

今村社長

今村社長

半導体製造排ガス除害装置

半導体製造排ガス除害装置

工場、建屋の外観

工場、建屋の外観

岸和田発の全員力でファインガラス業界をリードするオンリーワン企業

松浪硝子工業株式会社【製造業】

当社は、医療・理化学部門と電子部門を両翼として成長し続けるファインガラス(高機能ガラス)の総合メーカーです。
 創業は、弘化元年(1844年)。薄玻璃の技術を生かした鬢鏡(柄つきの手鏡)の製造が祖業で、明治期には、国産初の顕微鏡を手がけた島津製作所に薄玻璃の製造で培った技術が認められ、日本で初めて顕微鏡用ガラスの製造を開始しました。

これは、後の当社の柱である医療臨床検査用、細胞培養の研究用製品の製造を開始し、現在に至るまで一貫して高機能ガラス製品を作り続けるこだわりの礎になった出来事です。

TPS導入の狙いは、ムダを徹底的に排除する生産方式を学び、社員一人一人の意識改革により「全員力」で生産性を向上させることにありました。2006年から10年間、外部コンサルタントからの指導を受けるとともに、松浪社長自らが、毎週現場を巡回し、社員からその週に行った改善点を聞き取るなど、一人一人が自ら考え行動することを徹底して実践した結果、現場の改善が進みました。あわせて、ロボットの導入など、生産工程の自動化を進め、人員をほぼ変化させず生産能力を約2倍に増強することができました。

同社の売上の約7割を占める顕微鏡用カバーガラス、スライドガラスは、病院での医療臨床検査用、大学、企業での細胞培養の研究用として使用され、国内のマーケティングシェアは65%を占めています。さらに海外の臨床検査にも使用され、近年は輸出販売が急速に増えています。
 その中でも、がんの細胞診断に用いられる検査用ガラスは特に定評のある製品です。従来、がんの病理検査では検査用ガラスに固定した組織を染色し、病変を病理医の目で確認するという方法が主流でしたが、2010年頃からがん免疫組織染色病理診断薬と自動染色検査装置による検査が普及し始め、この方法による診断に変わりました。この検査でも検査用ガラスが用いられますが、使用されていた海外製のものでは細胞の接着固定性・染色検査精度等に課題があり、検査結果に影響を及ぼすこともあるなど改良の必要性が指摘されていました。

当社は、自社の持つコーティング技術等により改善が可能と考え、製品開発を行う一方、開発・臨床検査評価にはヒトがん組織検体の確保や試作品の評価を円滑に行う必要があることから、臨床現場との連携が不可欠と判断し大阪大学医学部病理学講座との共同研究開発体制・海外体外診断医療機器メーカーとの連携を開始。この連携により飛躍的に開発が進みました。
 その後は、当社の技術力はもとより、臨床現場と一体となった開発体制が海外の体外診断医療機器メーカー数社から高く評価され、大きくシェアを伸ばすとともに、新たな製品開発を共同で行うなど、高付加価値製品を生み出す原動力となっています。

これら2つの強みに至る背景にあるのは、当社が所在する地元岸和田への思いです。
 先代の社長である松浪定雄氏は40年にわたり商工会議所の会頭を務め、名誉市民として市民葬が行われました。現社長である松浪明氏も地元岸和田に対する地域貢献の思いは強く、この地で事業を続けていくことに強いこだわりを持っています。事業環境が大きく変化する中、海外への工場進出を検討せざるを得ない事が幾度かありましたが、地元岸和田で事業を継続しても、競争に勝ち残っていく方策を模索した結果、たどり着いたのが、高い生産性を身につけること、高付加価値製品を持続的に生み出す仕組み作りでした。これを実践したことで、岸和田の地に残り、全社員の約95%を地元で採用するなど地域貢献を果たしています。

当社は来年創業180周年を迎えます。200年に向けて売上げ年間100億円を目標にしていますが、そのためには、更なる生産能力の増強が必要となっています。
 3年後を目処に岸和田市内に5000坪強の新工場を建設予定で、最新技術を導入し、より加工精度を上げるほか環境に配慮したクリーンな工場になるよう計画を進めています。

これからも岸和田の地でお客様のニーズをいかに汲み取るかに注力しながら地元と共に成長していきたいと語る社長の取組に注目していきたいと思います。

松浪家事業志と鬢鏡と顕微鏡

松浪家事業志と鬢鏡と顕微鏡

松浪明社長

松浪明社長

免疫染色最適化コートスライドTOMO(海外市場スライド)がん免疫組織化学染色検査時の組織接着性・染色精度検証済み

免疫染色最適化コートスライドTOMO(海外市場スライド)
がん免疫組織化学染色検査時の組織接着性・染色精度検証済み

病理標本スライド

病理標本スライド

HER2陽性組織の拡大図

HER2陽性組織の拡大図

掲載関連情報

企業
カンケンテクノ株式会社
所在地
京都府長岡京市神足太田30-2
電話番号
075-955-8823
企業
松浪硝子工業株式会社
所在地
大阪府岸和田市八阪町2-1-10
電話番号
072-422-4545

関連施策へのリンク

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このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 地域未来投資促進室

電話:06-6966-6012

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