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関西の訪日外国人・在住外国人向け取組み事例 (KANSAI UNIQUE EXPERIENCES)
<株式会社西山酒造場>

最終更新日:令和7年3月27日

株式会社西山酒造場

代表:西山 周三
設立:1849年
従業員数:68名
拠点:兵庫県丹波市市島町中竹田1171
ホームページ:株式会社西山酒造場

地域と共に歩む酒蔵の挑戦
発酵文化を通じて世界に広がる日本酒の魅力

兵庫県の中央部、京都府に隣接する丹波市市島町。
ここに、市島・丹波杜氏の技を引き継きながら、175年以上もの長きにわたって酒造りを行う「西山酒造場」があります。

主屋外観

主屋を始めとする3つの建造物が国の登録有形文化財として登録されているという歴史ある酒蔵で、かつては小川芋銭など数多くの芸術家が集っていたといいます。
中でも特に俳人・高浜虚子は西山酒造場の三代目蔵主・西山泊雲が一番弟子であり、「ここに美酒あり 名づけて小鼓といふ」と詠み、銘柄を「小鼓」と名付けました。この清酒は、俳句雑誌「ホトトギス」に掲載され、当時としては革新的な通信販売の手法を用いて全国に広まりました。その結果、「小鼓」は日本全国にその名を知られることとなり、今や国内外の人々をも魅了し続けています。

今回はその西山酒造場にお話を伺いました。

災害からの復興:酒蔵が見つけた新たな使命

2014年8月 豪雨被害の状況
2014年8月 豪雨被害の状況

2014年8月、西山酒造場は集中豪雨による土石流の襲撃を受け、壊滅的な被害を受けました。酒蔵や店舗部分には大量の土砂が流れ込み、製造・販売が完全に途絶える事態となりました。この未曾有の災害に直面し、廃業の選択肢が頭をよぎる中、酒造りの命とも言える井戸が奇跡的に無事であったことが、従業員たちの心の支えとなり、西山酒造場は再生への道を少しずつ歩み始めました。

多くの人に支えられ、助けられながらだったこの復興の過程は、従業員全員が改めて酒蔵の意義について深く考える機会となります。そして、「この地で培った発酵の技術や文化、文化財を後世に伝えていくことこそが、西山酒造場の使命である」との結論に至りました。この新たな使命感は、酒造りの伝統を守りながら、地域社会とのつながりを強化し、未来へとつなげていく力となっていきます。

  

「鼓傳」の誕生

その使命を具現化するために、長年使用されていなかった古い酒蔵をリノベーションし、酒・発酵・芸術を傅(つた)え、受け継ぐための複合施設「鼓傳-koden-(こでん)」を2024年8月にオープンしました。

鼓傳 外観 カフェで提供される料理 酒蔵宿西山「鼓傳」

ここには、発酵まかないカフェ「小鼓御里(こつづみおんり)」と、宿泊スペース「酒蔵宿西山『鼓傳』」が併設されています。

カフェでは地元の食材を使った発酵料理が提供されており、丹波地域の豊かな味わいを体験できます。砂糖を使用していない、発酵の自然な甘みを引き出したおやつも人気です。
ここの運営には、地元農家への支援という思いも込められています。有機農業が盛んな丹波地域から、形が不揃いで市場に出回らない食材を仕入れ、カフェのメニューに取り入れています。また、カフェで提供される食器はすべて丹波立杭焼(たんばたちくいやき)を使用しています。これらは全て、地域に恩返したいという思いと、地域の良さを伝えたいという思いから来ており、訪れる人々に丹波の魅力を感じてもらうことを目的としています。

また、宿泊スペース「酒蔵宿西山『鼓傳』」では、酒蔵の伝統を感じる特別な宿泊体験を提供しています。この宿は、蔵人が寝泊まりするための「会所場(かいしょば)」をイメージして造られています。ここでは、宿泊者はただの滞在にとどまらず、実際に酒造り体験をし、蔵人の技術や知識を直接学ぶ貴重な機会が得られるとともに、酒蔵文化の深さを体感することもできます。

海外のプロフェッショナルをも魅了する酒造りの魅力

他にも西山酒造場では、酒造りの背景や技術、酒造りに込めた思いについて、直接蔵人が参加者に語りながら行う利き酒講座や、日本酒に合う食事を提供するペアリングコースなど、さまざまな体験プログラムを提供しています。

酒造り体験の様子 利き酒講座の様子

これらの体験プログラムは、特に欧米からの訪問者に高い人気を誇っています。しかも、自国でワイナリーや飲食店を経営しているプロフェッショナルが、西山酒造場を目指して訪れるケースが圧倒的に多いといいます。このような専門家に酒造りの工程を1から10まで丁寧に伝えることは、一見すると「敵に塩を送っているのではないか」と思われるかもしれません。しかし、「弊蔵には長年培ってきた技術と、ここにしかない水があります。決して他者が真似できないという自信があるからこそ、惜しみなく酒造りのプロセスをお伝えしています。帰国後に、『日本にはこんな蔵がある』『蔵人とともにお酒を造った』と話してもらうことで、西山酒造場、ひいては伝統的な酒造りの文化を傳える一員になっていただけると嬉しいですね。」と、西山酒造場は語ります。

わざわざ来ないといけない地域に、わざわざ足を運びたくなるようなコンテンツやサービスを

酒蔵を案内する様子

「ここは『わざわざ来ないといけない地域』です。なので『わざわざ足を運びたくなるようなコンテンツやサービス』を提供しないと来ていただけない。弊蔵は、丹波の自然環境がもたらす恵みをいただいて酒造りをしています。だから、弊蔵だけが利益を得るのではなく、コンテンツやサービスで地域に還元するとともに、日本酒業界全体を盛り上げられたらと思っています。また、西山酒造場で日本酒を購入した人々が日本酒に興味をもってくれ、他の場所でも日本酒を楽しもうと思ってもらえることが願いです。」

地域への強い愛情と、発酵文化の伝承への強い責任感が伝わってくる言葉が印象的でした。

神事の様子

西山酒造場は、神事をとても大切にしています。
お米と水からアルコールができるという事象は今でこそ当たり前ですが、発酵プロセスが理解されていなかった古代の人々にとってはまさに神秘そのもので、神の力添えの賜と信じられていたのかもしれません。日本人は、発酵プロセスを知る前から経験則で麹やその他の菌を制御し、豊かな食事を作り出してきました。そして、その恵みを神の御陰と感謝して生きてきました。

西山酒造場は、その酒造りの神秘に触れられるだけでなく、古き良き日本の魅力を集約した場所と言えます。万博で来日する外国人客にとっても、ここでの体験は忘れられない思い出となり、酒造りの伝統や日本の酒蔵文化を次世代へと受け継ぐ架け橋となることでしょう。


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