トップページ > 施策のご案内 > 関西の魅力向上・集客交流促進 > 関西の訪日外国人・在住外国人向け取組み事例 (KANSAI UNIQUE EXPERIENCES) > 有限会社ワックジャパン

関西の訪日外国人・在住外国人向け取組み事例 (KANSAI UNIQUE EXPERIENCES)
<有限会社ワックジャパン>

最終更新日:令和7年10月31日

有限会社ワックジャパン

代表:小川美知
設立:1997年
スタッフ数:常勤8名 パート12名
住所:京都市中京区高倉通り二条上ル 天守町761
ホームページ:有限会社ワックジャパン

日本文化の奥深さを世界へ
―文化体験で広がる新しい旅の価値―

京都の町家や一般家庭で、外国人旅行者が茶道や書道、折り紙、和食づくりを体験する—。
そんなユニークな国際交流の場を提供しているのが、有限会社ワックジャパンです。

有限会社ワックジャパン 有限会社ワックジャパン

1997年の創業以来、訪日外国人向けに多彩な文化体験プログラムを展開してきた同社の取組について、代表取締役の小川氏、事業本部長の市川氏、広報・企画開発部長の宮郷氏の3名にお話を伺いました。

京都の文化と女性の力をつなぐ挑戦

従業員・講師の集合写真

ワックジャパンは、訪日外国人に日本文化を深く味わってもらうため、ホームビジットや京町家、寺社などを舞台に、さまざまな文化体験を提供しています。
体験内容は、茶道や書道、折り紙、和食づくりなど多岐にわたり、参加者は日本の暮らしや伝統を肌で感じることができます。

これらのプログラムを支えているのは、登録された講師やホームビジットを受け入れる家庭の方々です。
特に、従業員や講師の多くは女性であり、これは創業者が掲げた「女性の能力を生かせる仕事を創り出す」という理念を反映しています。

創業者であり代表取締役の小川氏は、かつて日本語学校で非常勤講師をしていました。しかし、1995年の阪神淡路大震災で学校が閉鎖され、仲間である女性の多くが働く場を失います。
当時、子育てを終えた女性や主婦層が社会で活躍できる場は限られている状況でした。

「有能な女性たちがたくさんいるのに、もったいない」。そう感じた小川氏は、自分たちで仕事を作り出そうと考えます。
そんな中で、「京都には、書道や華道、茶道などをたしなむ女性が多くいる。その人たちの家に外国人を招き、日本文化を体験してもらうホームビジットをすれば面白いのでは。」というアイデアが生まれたことをきっかけに、国際交流と女性活躍を両立させる新しいビジネスモデルが動き出しました。

積み重ねが生んだ強みとオーダーメイド対応

最初はホームビジットからスタートしたビジネスでしたが、提供する文化体験の種類は年々増え、剣道や弓道、日本舞踊、料理など、あっという間に50種類を超えるまでに拡大しました。

「一人ひとりの能力を活かす場をつくりたい」という思いで走り続けた創業期。
小川氏は「もっと効率的にやればよかった」という後悔も口にしますが、市川氏は、「その積み重ねこそが今の強みにつながっている。」と言います。
現在ではお寺での特別体験や、富裕層のあらゆる要望に応えるオーダーメイドのプログラムまで提供できる体制を整えました。

ホームビジット(おばんざいづくり)
ホームビジット(おばんざいづくり)

非公開寺社での茶道体験
非公開寺社での茶道体験

また、長年の経験と、信頼する旅行会社との連携により、事前に訪問者の国籍や年齢、興味を把握し、それに応じた最適な体験を提案できるようになりました。
どの国の人にどんな文化体験が響くのか、データと経験に基づいたノウハウも蓄積されています。常に「相手が望むことを察知し、先回りして提案する」姿勢が、同社のサービスを支えています。

小川氏は話します。「これができるのも、私どものお客様の9割以上を、よいお客様を持っておられる旅行会社から送っていただくからです。相手がどんな団体か、お客様の情報を差し支えない限り旅行会社さんからお聞きできる関係なので、より的確なサービスができるのです。その連携があってこそのサービスです。私どもだけでできることは少しです。」

そんな小川氏について、宮郷氏はこう語ります。
「小川さんは、少女のような発想で常識を超えてくる。でも、その柔軟な発想こそが、お客様の満足につながっていると思います。」
その言葉どおり、小川氏を中心としたおもてなしの心と柔軟な発想が、同社の大きな強みとなり、さらなる挑戦へとつながっています。

地域と育むオリジナル体験

2023年、同社は京都商店連盟や行政機関からの依頼を受け、観光客の一極集中を緩和するため、商店街を舞台にした新しい取組「OISHII STREET」を始めました。

最初に連携したのは京都三条会商店街。観光地化されすぎていないこの商店街では、もともと日本人向けに振興組合会長自ら案内していたツアーを、インバウンド向けにアレンジしました。
基本は食べ歩きで、牛串や鯛焼きを楽しみながら、800メートルのアーケードを約2時間かけて巡ります。
京都三条会商店街ツアー

その後、錦市場との縁がありました。 かつては地元や県外の方々が日常の食材や京都特有の品を買い求める市場でしたが、近年は観光客が中心となり、「買い物をする」「食材を選ぶ」という体験が少なくなってきています。
そこで同社は商店街と協力し、外国人が「なまふ」や「なまゆば」などの食材を商店街で調達し、ワックジャパンの京町家施設「わくわく館」で松花堂弁当を作るプログラムを実施。買い物と料理を組み合わせた体験は、観光客と老舗店の双方にとってうれしい出会いを生み出しています。
錦市場

さらに北野商店街では、北野天満宮で神職による境内案内や参拝体験を行った後、商店街で食べ歩きを楽しむコースを開発。
イヤホンガイドを使い、礼拝の作法を学びながら参拝できる工夫も加えました。
北野商店街 北野商店街

これらのプログラムに共通するのは、ツアーを「商店街と一緒につくる」こと。錦市場では他に実施されているツアーも見かけることができますが、商店街がツアー会社と連携したものは今まであまりなかったそうです。
そのため、どれも通りいっぺんの観光ツアーではなく、地域の個性や魅力を活かした唯一無二の体験になっています。

高まる評価と描く未来像

同社のサービスは、何度でも体験したくなる魅力にあふれています。かつてツアーで茶道体験をした方が、数年後に個人で商店街ツアーに参加したケースもあります。

また、外国人の多くは「日本人の普通の生活を見てみたい」という関心を持っており、ホームビジットでは講師の家に実際に入ることで、暮らしの片鱗を感じられる点が好評です。こうした深い交流は、単なる観光を超えた学びと感動を生み出しています。

有限会社ワックジャパン

このような功績が評価され、小川氏は2025年、旭日単光章を受章しました。
しかし、「今後は、インバウンドを取り込みたいけれど方法が分からないという施設を積極的にサポートしていきたい。さらには、京都の体験施設を結び、まだ知られていない日本文化を多くの内外の方に知ってほしい。」と小川氏は語っており、挑戦はまだまだ続きます。

ワックジャパンのサービスは、文化を通じて世界と地域を結び、人と人をつないでいます。
そんな同社の取組は、これからも日本そして京都ならではの観光のカタチを生み出し続けるでしょう。


このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 国際部 投資交流促進課
住所:〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
電話番号:06-6966-6033
メールアドレス:bzl-charm-kansai[アットマーク]meti.go.jp
※メール送信の際、[アットマーク] を「@」に置き換えて送信してください。