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最終更新日:令和5年4月3日
本来食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」。SDGsのターゲットにも食品ロスの削減は位置付けられており、日本においても食料の多くを輸⼊に依存している国として真摯に取り組むべき課題とされています。
その中でも、2018年より、食品メーカーや流通などのフードサプライチェーンから様々な理由で行き場を失った食品を対象に、食品ロス削減事業を行うのが株式会社ロスゼロです。同社は、世界にあふれる「もったいない」に光をあて、つくる人も食べる人もみんなが笑顔になれるエシカルな消費スタイルを創造しています。
今回は、代表取締役の文美月さんから、SDGs達成に貢献する同社の取組について、お話を伺いました。
◇企業情報
代表取締役 文美月さん
企業名 : 株式会社ロスゼロ
代表者 : 文 美月 (ぶん みつき)
創業年 : 2015年
株式会社ロスゼロのホームページ
事業概要:
フードシェアリングサービス(Eコマース、百貨店ほか)、食品ロス削減サブスクリプション運営、
アップサイクル食品の企画・開発・販売(DtoC)、食品ロス・SDGsに関する情報発信/研修事業
食品ロスを削減するロスゼロという事業を実施しています。日本にはまだ食べられるのに捨てられる食品が毎年約522万トン出ています。これは食品を作るメーカー、流通、外食産業や私たちの家庭、あらゆるところで行き場を失った食べ物が溢れている状態です。
この中でもロスゼロでは、特にメーカーや流通などのフードサプライチェーン上から出る規格外品や在庫余剰の食品ロスの削減に取り組んでいます。
日本には、1/3ルールと呼ばれる商慣習があり、納品できる期間が短く設定されています。例えば12ヶ月間の賞味期限のクッキーは、最初の4ヶ月までにメーカーから次の卸・小売に納品されるのが慣習となっています。これは、店頭に並ぶ期間と、消費者の保管期間を十分に確保するためですが、ロスを生む大きな原因の一つとなっています。
製造後、賞味期限までの1/3の期間が過ぎてしまう場合、直販ができる企業であれば問題ないですが、それができない企業は食品の販売先を失ってしまいます。特にブランドイメージを棄損したくないメーカーは、安売りをしたくないという思いが顕著です。
事業の様子
ロスゼロでは、そのような企業のおいしく食べられる食品を、廃棄することなく、様々な形で消費者に届ける事業をしており、本日はそれらの中から3つを紹介します。
1つ目は、ロスゼロのブランドで同社がEコマース(食品ロスのネット販売)を展開しており、メーカーの代わりに、全国の消費者へ食品を届ける事業です。このサイトでは、ロスだからと言って、メーカーから買い叩いて激安販売は行いません。作り手の思い、ロスが出てしまった理由、ストーリーなどをしっかりと消費者へ伝えることで、作り手のブランド価値を棄損せずに販売しています。特に、ロスゼロでは、従来百貨店で販売されている商品や一流ホテルで使われている食材など、品質が良いものを多く取り扱っており、消費者視点では、少しお得に美味しいものを食べることができ、楽しんで社会貢献することができます。
2つ目は、食品ロスをサブスクリプションで販売する「ロスゼロ不定期便」です。食品ロスは、いつ出るかわからない、何が出るかわからないという特徴があります。その特徴を逆に楽しんでもらえるよう、届く日や内容は未定で、ワクワクする福袋のような商品として、食品のストーリーなどを書いた用紙を添えて届けています。開始5ヶ月でユーザーが2300人を超え、サブスクによる食品ロス削減量だけでも毎月5~6トンとなっています。
3つ目は、使われないままとなった原材料等に新たな命を吹き込み、生まれ変わらせるアップサイクルブランド「Re:You」(りゆう)の展開です。食品ロスは製品の在庫余剰だけでなく、原料や製菓材料も多く出ています。「Re:You」は、その原料や規格外食品を掛け合わせて、新しい商品を生み出します。
例えば、不揃いな形で出荷できないフルーツと、行き先を失ったチョコレートを組み合わせたRe:Youチョコレートを作っています。ロスゼロが新たに企画・ブランディングすることで食材のアップサイクルを作り出しています。
これらは、DtoC販売(メーカーから顧客へ直接販売)するほか、百貨店のイベントで全国販売していますが、大企業が社会貢献のために社内用もしくは、会社の販促用に購入するケースが増えています。
その他、自治体と連携協定を結び食品ロスを軸に、医療従事者などを連携して支援したり、自治体を窓口として、子ども食堂などに食品を提供することもあります。また、企業向けの研修や共創などにも取り組んでいます。
会社の立ち上げは2社目で、1社目は2001年からヘアアクセサリーのEC・DtoC販売を行っていました。2010年からは社会貢献としてヘアアクセサリーのリユースとして、ユーザーから不要になったヘアアクセサリーを回収し、東南アジアの子供たちに提供する取組を始めました。しかし、単に渡すだけでは持続性がないことに気づきました。そこから持続性ある方法として、日本のユーザーから回収するヘアアクセサリーを当社のクーポンと交換制にし、現地の子どもたちにヘアアクセサリーを無償で提供するのではなく、現地で子どもたちと一緒に販売しながらセールスやマーケティングの勉強をしてもらう形に変えました。その取組はCSRの一部でしたが、知恵を絞ることで持続できる仕組みづくりを経験しました。
この経験から、もっと違うモノにも応用できるのではないか、さらにもったいない物は何かと考えた結果が食品ロスでした。要らない人がいても、必要な人がいるという、もったいない物を循環させる仕組みをヒントに、これまで蓄積してきたヘアアクセサリー販売でのEコマースとDtoCのノウハウを生かして、食品ロスの分野でもEコマースから開始しました。
商品開発の企画力と、パートナーが強みと考えています。ロスゼロには、使い道を探している様々な食品ロスの関係者から相談があり、多くの情報が集まってきます。また食品関係だけでなく、事業に協力したいと申し出る企業が多く、様々なパートナーもいます。それらをうまく掛け合わせて新たな価値を生み出せるのが当社の強みです。
また、多くのパートナーが集まるのは、これまで培ってきたブランドのポジショニングだと考えています。食品ロスだからといって、生産者から買い叩くのではなく、価値を棄損せずに、また新たな付加価値を乗せて消費者に届けています。その結果、顧客単価が高く、リピ―ター率も77%と、社会的意識の高い顧客が多く集まっています。ロスというネガティブワードをポジティブに変えることができるのが当社の強みで、食品ロスに対して、そういったアプローチをとれるからこそ、多くの企業との協業が実現しています。
食品ロスのビジネス上の課題は、食品を扱う企業から、食品ロスの情報が表に出てきにくいことです。それには2点理由があり、日本のフードサプライチェーン上において、ロスを出している情報を出すのに消極的な企業が多いのと、また「食品ロスを扱う業者は買い叩いてくる」という認識が広まっていたことです。結果として、特に同社のようなスタートアップがメーカーにアプローチしても最初は話を聞いてくれませんでした。
対策として、当社のコンセプトである、付加価値をつけることや、食品を活かして販売することを丁寧に説明し、立ち上げ当初から会社としての信用力を付けることも意識していました。WEBコンテンツでの情報発信や、行政とのタイアップなどを行うことで、時間をかけて、信用力とブランド力を地道につけていきました。また、立ち上げ当初は、食品ロスの問題はそこまで広まっておらず、それまでにない市場でもあったので、啓蒙啓発をして消費者の文化を作るという取組にも力を入れていました。
事業検討の様子
事業を始めたころに比べると圧倒的に社会の認識は変わってきたと感じています。特に、若い世代は、地球とうまく付き合うことになじみがあり、SDGsへの関心が高く、自分事ように感じているのでないかと思います。ビジネスとして行う以上、世の中の波に乗ることはとても大事だと考えています。
今では、大学生や自治体、企業など、SDGsに貢献したい人が多く、当社は手伝いたいと言われる立場、パートナーを組みたいといわれる立場になりました。環境や食品ロスを学びたい大学生をインターンとして受け入れ、イベントのサポート、パッケージデザインの企画、会社のブログを制作、SNSの発信などを担当しています。
昨年から開始した不定期便サービスのメーカー側とユーザー側を増やすことで、ロス削減量をもっと増やしていきたいと考えています。さらに、不定期便に入れる商品の振り分けの仕組みにテクノロジーを活用して、届けるユーザーの嗜好により合わせた内容にしていきたいと構想しています。
また、食品ロスは、メーカーだけでなく、小売や外食、家庭などあらゆるところで出ており大きな社会課題となっているので、当社で解決できる範囲を広げていきたいと考えています。そして、現在は食品に特化したビジネスですが、ゆくゆくは食品だけでなく、他の分野でも、もったいないものを活用して笑顔を増やすことをビジネスの力で実現していきたいと考えています。
商品販売に携わるZ世代の学生たち
現在、日本国内では世界の飢餓状態にある人たちへの支援量の2倍近くの食品ロスを出しています。フードサプライチェーン上では、1/3ルールなど日本の慣習による商業的なロスはとても大きな状況です。カロリーベースで自給率の低い日本の食料事情も、今までは日本の経済力が強かったので成り立っていましたが、現在、円安や世界情勢への不安による食品の価格上昇を鑑みると日本でも食糧への意識が高まらざるを得ない状況になっています。ロスゼロでは、食品ロスやその先の食糧危機も解決していきたいですし、そのノウハウを持って、世界的な食糧危機の問題までは解決できるようになりたいです。
将来的には、ロスゼロのマークが、何かもったいない物を活かして資源循環しているというシンボルマークにまでなっていると良いと感じています。
近畿経済産業局 総務企画部 2025NEXT関西企画室
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