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最終更新日:令和5年9月26日
人々が生き生きと、いつまでも働き続けることを支援するために、地域でも職場でも、身近で気軽に利用できる保健室を作りたい。株式会社F・Linkは、看護師や保健師として働く女性達が、そんな想いを実現するために立ち上げた会社です。
今回は、代表取締役の若井奈美さんと常務取締役の高原千里さんから、SDGs達成に貢献する同社の取組について、お話を伺いました。
一緒に会社を立ち上げた、代表取締役 若井奈美さん、専務取締役 安原 忍さん、常務取締役 高原千里さん
◇企業情報
企業名 : 株式会社F・Link
代表者 : 代表取締役 若井奈美
創業年 : 2018年 一般社団法人F・Link
2020年 株式会社F・Link
事業概要:
従来の医療・福祉サービスの枠を超えて、困っている人のところへ、こちらから出向き、従業員だけでなく、その家族の健康問題までサポートする、新しい医療・健康・福祉サービス「Officeほけん室」を展開。
「Officeほけん室」は、一般社団法人ナレッジキャピタルが実施する2022年度「ナレッジイノベーションアワード」で、近畿経済産業局長賞を受賞した。必要な場所に出向いていく「移動ほけん室®」の取組は、大阪・関西万博の共創チャレンジにも登録されている。
地域間・企業間の「医療格差」や「健康格差」をなくすことを目指して、各種の事業を行っています。
「Officeほけん室」は、産業医のいない中小企業に出向いて、健康診断結果の面談・集計・分析や健康相談・保健指導など従業員の健康管理、さらには従業員の家族の介護支援までを請け負う、保健室代行サービスです。従業員数によりますが、月2万円から契約いただけます。
契約企業に対しては、当社独自のサービスとして、会社専用の相談窓口を公式LINEで開設して従業員の方がいつでも当社の医療専門職に相談ができる体制の整備、会社の健康課題に合わせた、専門職が完全監修した「健康動画Habit」の配信等も行っています。
ある企業では、健康診断結果の集計で、サービス導入初年度は「要医療」の判定の方が9名(15%)であったのが、導入3年目には1名(1.5%)に減少しました。結果の集計分析から、経営陣と健康課題を一緒に考え、健康経営への取り組みの産業保健の視点からアドバイスなども行っています。
実際に看護・介護サービスを提供する、直営型の産業保健連携型訪問看護・介護ステーション「オフィス・ケアステーション」も業界発の取組です。当社のケアマネジャーが一人ひとりに必要な支援プランを作成します。
また、当社は、キャンピングカーを改造した移動型の保健車両「移動ほけん室®」を保有しています。「移動ほけん室®」で、契約企業や、たとえば中山間地域のような、高齢化が進んでいながら病院が無い地域などに出向き、健康相談などを行っています。
さらに、当社は、医療・健康・福祉の専門職に「サポーター」として登録いただき、健康相談対応や健康動画の作成等を担当いただいています。自宅ですき間時間にできる仕事も多いので、専門職の中には、育児・介護中の方や、病気で医療現場に立てない方もいます。専門職の「新たな働き方の創出」、「新たな活躍の場づくり」にも繋がっています。
移動ほけん室内での測定や健康相談
現在の役員3名は、同じ看護学校の同窓生です。看護学校卒業後、それぞれ医療・福祉現場で働く中で、「病院や相談機関で待っていても、本当に困っている人は、自分から相談に行けない。だから、こちらから出向く必要性がある。」と強く感じていました。
この課題は、私たちがナレッジキャピタル(グランフロント大阪内)のナレッジサロンで定期的に開催していた、学習交流会でも挙がった課題です。学習交流会には、看護学生時代からの仲間を中心に、看護師やケアマネジャーなど医療・福祉に携わる方々が毎回30名ほど参加してくれました。そして、自分たちで課題を解決しようと立ち上げたのが、一般社団法人F・Link((株)F・Linkの前身)です。
家庭、職場、地域は、人々の暮らしの連続したシーンですが、日本では、医療・健康・福祉サービスは、地域、病院、職場でバラバラに提供されてきました。
当社は、契約企業の従業員の家族の介護相談にも乗るなど、一人の人の家庭、職場、地域における健康問題をトータルでサポートしています。しかし、従来サービスにない「すき間」事業のため、必要性は理解するものの、「誰が費用を負担するのか」などと言われ、なかなかビジネスに繋がらず苦労しました。
その後、厚生労働省の「通いの場(※1)」事業ができたことで、世の中の流れの変化と、今後のニーズを感じています。
※1「通いの場」:地域の住民同士が気軽に集い、一緒に活動内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる場所。地域の介護予防の拠点ともなる。
会社設立当初は、従業員に対する健康相談など「人」が相手の仕事が中心でしたが、ここ数年でビッグデータの重要性が増してきたように感じます。2020年頃から、自治体の保有するビッグデータを分析し、当該自治体の特徴を見つけて住民の健康づくりを支援するデータヘルスの仕事が増えてきました。今までに100を超える自治体のデータを見ました。現在ではデータヘルスの仕事も大きな割合を占めています。
また、医療の専門家として、他機関との連携事業に加わる機会も出てきました。
大阪府茨木市山手台の地域課題解決を目指す「共創ラボ@YAMATEDAI」に、大阪大学、大阪公立大学、茨木市などと共に当社も加わっています。山手台は、山の上の方にあり、高齢化が進んでいる地域です。しかし、病院が無いため、当社の「移動ほけん室®」では健康イベントで各種測定会を実施したり、定期的な健康相談や保健指導を行っています。
茨木市山手台での健康フェスタ
おとどけワクチンカーとよなかで使用した、移動ほけん室
看護師の派遣業、産業医の派遣業など職種を限定したサービスは他にもありますが、当社は様々な職種の専門職を登録しているので、メンタルの相談、介護相談・看護問題、育児、栄養指導など多様な問題に対応できる点が大きな強みです。
また、先ほども述べたように、一人の人の家庭、職場、地域における健康問題をトータルで把握できるので、問題を解決しやすい点も特長だと思います。
さらに、「移動ほけん室®」は、相談室、検査室、ナースステーションに早変わりして大活躍しているのですが、全国初の取組でもあり、大阪府豊中市の「おとどけ!ワクチンカーとよなか(※2)」に協力した時には、注目を集め、メディアにも取り上げられました。
※2「おとどけ!ワクチンカーとよなか」:コロナワクチン接種を希望する人が24人以上集まれば、グループが指定した場所に医師や看護師が乗るワクチンカーを無料で派遣する大阪府豊中市の事業。2021年の1ヶ月半で約3,000回の接種を行った。
現在も、周産期看護や精神看護など、分野を特化した訪問看護ステーションと連携して、いつでも派遣できる体制を整えていますが、今後さらに連携を進め、幅広い訪問看護・介護サービスを提供できるようにしたいと思います。
顧客が増えたら、社員や専門職「パートナー」をどんどん増やしたいです。
電気自動車の「移動ほけん室®」を導入し、車内でオンライン診療を実施したり、おとどけワクチンカーのノウハウを活かし小型巡回健診のような役割も果たせたらと考えています。
また、当社は、働きながら親の介護をした当社役員の実体験をきっかけに、「親の受診手帳®」を制作しました。手帳には、親の病歴や今までの介護の経過を「医療介護年表」に書き込み、病院に持参します。医師への希望や確認したいこと、医師からの説明をその都度記録します。そうすることで、付き添う人が変わっても、患者(親)・付き添う人(家族など)・医師の間のコミュニケーションがスムーズになり、介護の負担が減って、医療の質の向上も期待できます。
また、急な入院や、災害時にもすぐに必要な医療情報が伝わる、役立つツールになります。
当社では、これを、薬局で「お薬手帳を持っていますか」と聞かれるように、当たり前のように「親の受診手帳®を持っていますか」と聞かれるよう、みんなの生活に普及させたいと考えています。将来的には、母子手帳のように自治体から配付されると良いなと思います。
親の受診手帳
ご支援する企業や自治体が全国に広がって、当社の拠点が全国にでき、当たり前のように「移動ほけん室®」が街を走る世の中になっていてほしいです。
近畿経済産業局 総務企画部 2025NEXT関西企画室
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電話番号:06-6966-6003
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