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最終更新日:令和5年4月3日
古来から日本に自生するヨシを使い、サステナブルな繊維「ヨシ糸」を生み出すデザイン事務所「株式会社アトリエMay」。CO2やリン、窒素を吸収する、環境にやさしいヨシを素材として活用しながら新たな商品を生みだし、地域の活性化に取り組んでいます。
今回は、「経済的価値をつくることで、地域の環境や文化をまもっていきたい」との思いでビジネスを進める塩田社長にお話を伺いました。
◇企業情報
企業名 : 株式会社アトリエMay(本社:大阪府枚方市津田山手1-13-3/工場:交野市私市9-4-5)
代表者 : 塩田 真由美
創業年 : 2007年
(概要)
現代では使われなくなったヨシを地域資源として見つめ直し、ヨシやヨシ紙を使用した商品の企画や、ヨシと綿を混紡した環境に優しいサステナブルな新繊維「ヨシ糸」を開発。地元の企業とコラボレーションしながら、ステーショナリーやTシャツ、ストールなどの服飾品として提供しています。地域とつながり、地域の資源を活用しながら、社会にも貢献できる商品づくりに取り組んでいます。
ヨシ由来のサステナブルな繊維『ヨシ糸』
ヨシを原材料に、和紙や環境にやさしいサステナブルな繊維を提供しています。
ヨシは琵琶湖・淀川水系をはじめ日本各地に太古から自生している、日本人の暮らしに馴染みの深い植物です。CO2を吸収して地球温暖化を防いだり、水中のリンや窒素を吸収して水質浄化する作用も持っています。軽くて丈夫で、しかも一年で成長するので、古くより屋根や簾に利用され、人々はヨシと共に暮らしてきました。
私の育った枚方市の対岸の淀川河川敷には「鵜殿ヨシ原(うどのよしはら)」というヨシ原があります。ここで育てられたヨシは太くて弾力性があることから、毎年宮内庁に献上され、雅楽の楽器の吹き口に使われていました。
このヨシを使った和紙「ヨシ紙」との出会いをきっかけに、地元で取れるヨシを活かした環境にやさしい製品を広げたい、そうした活動を通じて地元に貢献したいと思い、ヨシ紙を使ったインテリア照明やステーショナリー製品などの提供を2010年からスタート。2020年には、合同会社竹繊維研究所が、ヨシと綿を3:7の割合で混紡した「ヨシ糸」の開発に成功したのを知り、合同会社竹繊維研究所とライセンス契約を結び、2021年6月より、自社でヨシ繊維事業を本格化しました。
最近はテレビやメディアで取り上げていただく機会が増え、サステナビリティに関心ある企業からヨシ繊維をビジネスにしたいというオファーを多くいただいています。
テキスタイルデザイナーの道を歩んでいる中で和紙と出会い、和紙の魅力に取り付かれたことがきっかけです。はじめは地元の方に和紙のことをもっと知ってもらうとともに、気軽に交流できる場になればと、交野市に、和紙を楽しむカフェ「和 Art Café May」を2007年にオープンしました。そこに鵜殿ヨシ原研究所の小山弘道先生が来られ、「和紙を手がけているのなら、鵜殿のヨシを使ってみてはどうか。」と言っていただき、ヨシに出会いました。「地元の鵜殿で取れたヨシが紙になるなんて面白い!」と思うとともに、ヨシの環境にやさしい特性に可能性も感じて、以来ヨシに関わるようになりました。
生活スタイルの変化により、ヨシはあまり日常で使われることがなくなりました。ヨシは毎年刈り取ることで次の新芽が出るのですが、段々と放置されるようになり、ヨシ原は減少しています。新たなカタチで活用されることは地元の悲願でもありました。そこでまずは、ヨシ紙を使ったインテリア照明やステーショナリー製品の販売のほか、特産品と呼べる商品がない枚方に特産品を作るべく、枚方のお米を使った「くらわんか酒」にヨシ紙のラベルをつけて販売することにも挑戦しました。しかし、ペーパーレスの時代の中、ヨシ紙を広めることに限界も感じていました。
ヨシの新しい可能性を探していたところ、知人を介して2020年に合同会社竹繊維研究所と出会いました。同研究所の竹から竹繊維を取り出す技術を活用し、ヨシからヨシ繊維を取り出してヨシ糸を製造・販売するライセンス契約を同研究所と締結。ヨシを使った糸ができたことで、ヨシの使用用途が大きく広がりました。
ヨシ繊維には抗菌性があることがわかっています。ヨシはとても丈夫なので繊維化するのに手間がかかりますし、ヨシだけだと少しゴワゴワした糸になるのですが、綿との混紡割合を調整してゴワゴワしないように工夫しています。
2021年の3月に北大阪商工会議所等と共に実施したクラウドファンディングを通じてさまざまな方から支援をいただきながら、枚方市内の企業とコラボレーションしてTシャツやストール、靴下といった商品の創出に取り組んでいます。
地元農家さんや大学生たちと共にヨシの刈り取りを行います。
2007年に「ヨシ紙」に出会って以来、「経済的価値をつくることで、地域の環境や文化をまもっていきたい」という思いのもと、ヨシ紙を使ったインテリア照明やお酒のラベルをつくってきましたが、スタートした当初はこうした私の思いに、なかなか周囲からの理解を得られませんでした。SDGsの始まる前でしたので、ボランティアの域を出てビジネスとして展開しようとする私たちの取組はイメージしづらかったように思います。
ですが、SDGsの概念が広がっていく中で、徐々に周囲の方々が共感してくれるようになってきました。特に若い方のSDGsに対する意識は高く、今では地元農家さんと一緒になって大学生がヨシ刈に参加してくれています。
最近、繊維業界では、輸送中のCO2排出を抑制すべく、これまで海外から輸入していた繊維原料を国内調達に戻そうとする動きもあります。海外との価格競争で厳しい状況が続いてきた日本の繊維業界ですが、SDGsを追い風に、元気になってもらいたいですね。
コロナによる企業への影響はさまざまあると思いますが、これを契機にソーシャル性のある事業に取り組もうと模索する企業が増えているように感じます。大きな広告代理店からヨシを使った商品開発のオファーをいただいたり、SDGsのビジネス展開を模索しているから話を聞かせて欲しいなど、予想を超える多くの引き合いをいただいています。こうした声にお応えするためにも、まずはヨシ繊維を量産するビジネスモデルを構築していきたいと思っています。先日、経済産業省の事業再構築補助金に採択されましたので、しっかり活用しながら3年計画でそのモデルを作り上げたいです。
ヨシ繊維には環境にやさしいだけでなく、抗菌性やUVカットできる効能もあることがわかってきています。地元農家さんやさまざまな企業と共創しながら、高級品から汎用品まで、現代のニーズに合わせたいろんなヨシ製品を生んでいきたいです。
私は職業を尋ねられたときに、自身を「ヨシデザイナー」と呼んでいます。デザイン事務所の強みを活かしながら、ヨシの原料調達という入口から繊維化、商品化、販売、購入いただいた方との共生という出口までのストーリーをデザインし、PRしていきたいです。
ヨシ原は、琵琶湖・淀川水系をはじめ、日本各地にあります。2030年には、私たちの構築する「ヨシ繊維を量産するビジネスモデル」を枚方モデルにして、ヨシ原対策で課題を抱える各地にそのモデルをパッケージごと譲り、全国にヨシ繊維の生産ラインができていて欲しいですね。一人勝ちは出来ない市場です。すべきでもないと思っています。みんなでビジネスモデルをシェアして、みんなが成功することで、日本のヨシ原を保全していければと思います。
それから、地球環境問題にさらに貢献するため、ヨシ繊維の生産工程を改良したり、「ヨシ原○○㎡でCO2をこれだけ削減できる」というように数値による「見える化」も進めていけると、よりこのモデルにビジネスとしての現実味が出ると思っています。
これからもヨシが育つ地域に住む方々や企業と共存共栄しながら、地域の環境や文化をまもり、地域活性化に貢献していくことを目指していきます。
アトリエMayのはじまりは和紙の魅力を伝えようとオープンしたカフェ。そこで現代では使われなくなっていたヨシと出会い、地域の資産として見つめ直し、環境にやさしくサステナブルな繊維として商品創造することで、ヨシの新たな可能性を切り開きます。 原料調達から繊維化、商品化、販売を担う生産者、それから商品を購入いただいた方、ヨシを通じてつながる様々な方との共感を「ストーリーとしてデザインする」と語る塩田社長のお話が強く印象的でした。 SDGsに取り組むメリットの1つとして「企業ブランド力の向上」があげられます。SDGsを共通言語に様々なプレーヤーがつながり、共感を得ながら普及するためのヒントがここにあるのではないでしょうか。(2021年12月6日) |
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