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世界の人々に安全・安心な血液を
~株式会社大同工業所~

最終更新日:令和5年4月3日

   血小板はわずかな温度変化で品質が変わったり、静止状態で保管すると凝固したりするなど、取り扱いの難しい血液製剤ですが、株式会社大同工業所の血小板用保管庫は振とうさせつつ、22±2℃以内に温度を保つことが出来るため、品質を劣化させることなく保存することが可能です。日本の血液センターでも広く使用されているので、我々が献血する際にも多く活用されています。
   今回は、血小板保管庫の医療機器承認を持つ国内唯一のメーカーである、株式会社大同工業所の大桐伸介社長にお話を伺いました。


◇企業情報

   企業名 : 株式会社大同工業所(大阪市中央区森ノ宮中央1-4-15)
   代表者 : 大桐 伸介
   設立年 : 1981年

(概要)

   血液用冷蔵庫や引火性液体用防爆冷蔵庫など、僅かな温度上昇も許さない徹底した温度管理技術を持つニッチトップ企業。中でも、血小板用保管庫は国内シェア80%を誇っています。
   2018年にはミャンマーに進出し、ヤンゴンにおける血液製剤の保管・輸送システムを確立。その後も、人々に安全・安心な血液を供給すべく、中央アジアや東南アジアを中心とした安定的な輸血輸送システムの構築を目指しています。

1.インタビュー

SDGsに向けて、どんな取組をされているのですか?

株式会社大同工業所イメージ
血小板を振とうさせながら22℃±2℃に保つ
血小板用保管庫

   1952年に日本赤十字社血液銀行東京業務所の開設により日本の血液事業が始まり、1974年には輸血用血液がすべて献血で賄われるようになりました。血液事業の発展と共に血液センターや病院で、適正な温度管理で長期保存や輸送をするニーズを捉え、血液保管専用庫の開発に着手したのが1978年のことです。
   血液製剤の安全性の向上のため、厳密な管理を求める血液センターのニーズに繰り返し応えていくことで製品の品質を向上させていき、成分献血の拡大に合わせ、血小板製剤の劣化を防いで品質を保つ振とう保存技術や蓄冷材を開発したことで、血液製剤の輸送中の温度管理が可能となり、当社は日本国内の血液輸送システムの構築に大きく貢献することが出来ました。
   現在、日本では当たり前に安全な血液が供給されていますが、海外では違います。血液保管庫や輸送機材の老朽化や不足に加えて、機材をメンテナンス出来るメディカルエンジニアの不足もあって、血液製剤が適切に管理出来ていない国もあります。そのために、助かるはずの命が助からないこともあります。
   近年、経済が発展し、医療技術も向上したことで血液需要が急増しているミャンマー連邦共和国も、そういった国の一つでした。
   当社では、JICAの「中小企業海外展開支援事業」を活用して当社の血液保管機材を導入し、同国で最大規模を誇るヤンゴン国立血液センターと共に、同センターで製造した血液製剤をヤンゴン市内の病院へ輸送する保管・輸送システムの構築を目指しました。
   しかし、現地に機材を持ち込んでも、それを使いこなし、修理できる人材がミャンマーで育たなければ、せっかく作り上げた血液システムが持続しません。そのため、ノウハウを持つ当社が技術者研修や血液製剤に関する現地研修を実施し、医療機材を維持管理できるメディカルエンジニア人材の育成も行いました。
   結果、ヤンゴンでの安定的な血液輸送システムが確立し、現在でも当社の製品が同国の人々の命を守っています。2018年には、同国ラカイン州に血液用冷蔵庫、血液輸送資材を寄贈しました。ビジネス以外においても同国の血液事業に貢献したいと思っています。
   現在、ミャンマーと並行して、タイ、ベトナム、ラオス、ウズベキスタンへの展開も模索しているところです。

SDGsの取組をはじめたきっかけは?

   祖父の代は、当社は食品用冷凍冷蔵ショーケースを製造していました。その後、下請企業から脱却し、ニッチで付加価値の高い医薬品専用の特殊冷蔵機器へ転換していったのですが、血液事業にチャレンジすることになったのは先代社長である父の時代です。きっかけは私が生まれた時に輸血の必要があったことだそうです。必要な時に血液が安定的に供給されなければならないとの思いが血液分野へのチャレンジの源流にあるようです。
   SDGsを特別に意識していた訳ではありませんでしたが、当社の血液事業が、まさにSDGsの17のゴールの「3 すべての人に健康と福祉を」に資することですので、SDGsの普及と共に、「そろそろ当社もSDGsに取り組まないと」と思うようになり、ミャンマーのJICA事業をきっかけに、SDGsを絡めた発信を心がけるようになりました。
   社員に対しては、社長からメッセージを発する場を使い、折に触れて当社のSDGsに関する取組を伝えるようにしています。社外に対しても、これまでは自社製品の機能性のみを売り込んできましたが、今はミャンマーなどでの取組も伝え、海外の人々の健康と福祉をサポートしている企業なのだということも売り込んでいくようにしています。
   大同工業所の製品だけでなく、大同工業所そのもののファンを作っていくことが、ひいては製品の売上にも繋がり、それがSDGsを推し進めることにもつながるのだと思っています。

株式会社大同工業所イメージ
ミャンマー・ヤンゴンでの機材譲渡式

SDGsに取り組んでみて、変化したものは?

   社員もSDGsというものを少しずつ理解し始めてくれていると感じますが、当社の原点は、「長い目で見てお客様のためになるのか」を考えることにあるので、社員にとっては「SDGs」と言われるよりも、日本語の「持続可能な」の方が伝わりやすいようです。これからも長い目で考えてプラスになるのか、お客様のためになるのかというところからSDGsを捉えていきたいと思っています。

今後の方向性を教えてください

   当社では血液事業の他にも、水処理試験事業や防爆電気機器事業も手がけています。
   当社が提供する水処理試験器は、例えば化学プラント等で新しい物質を作る際、排水の水処理方法を検討することに使われます。排水を出すプラントの環境を守るSDGs活動「12 つくる責任 つかう責任」「14 海の豊かさを守ろう」をサポートできます。
   また、可燃性ガスがあるような危険場所で使用される防爆構造をもつ防爆機器は、引火爆発を100%防ぐものであり、「11 住み続けられるまちづくりを」に資することが出来ると思っています。このような形でSDGsに貢献出来るよう、引き続き自社製品の性能向上を目指していきたいです。
   当社は冷温機器メーカーとして、冷凍空調工業会に属していて、冷媒フロン類の回収・破壊は、業界全体としてもSDGsを取り入れ、「12 つくる責任 つかう責任」、「13 気候変動に具体的な対策を」を意識したSDGs活動をしていかなければならないと思っています。

あなたの目指すSDGs2030年はどんな姿ですか?

   少なくとも現在取りかかっている国々において、当社の血小板用保管庫で適切に温度管理された血液製剤を人々に届けられているといいですね。そして、やがては世界各国で当社の製品が使われ、誰もが安全・安心な血液を当たり前に得られるような世の中になればと願っています。

株式会社大同工業所イメージ
株式会社大同工業所 大桐社長

~編集後記~
   温度管理のスペシャリストである株式会社大同工業所。その技術で、多くの人々の命を支えてきました。
   インタビューの中で大桐社長がおっしゃった、「祖父は、『商いは牛の涎の如く細く長く』と言っていました。その精神が結果的にSDGsになっているのかもしれません。これまで世界は、資本主義だけを追求しすぎていたのだと思います。社会に貢献し、会社としても利益となる事業を細く長く持続していくことが、長い目で見れば社会にも、顧客にも、そして当社にとっても大きなプラスをもたらすのだと思っています。」という言葉こそ、持続可能な経営とは何かについて端的に表しているのではないかと思います。

2.このページに関するお問い合わせ

近畿経済産業局 総務企画部 2025NEXT関西企画室
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