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デザインの力で社会課題を解決する
~特定非営利活動法人ディープピープル~

最終更新日:令和3年12月1日

   Deep Peopleは、デザイナーの牧文彦氏が環境NPO法人として2007年に設立した組織です。世の中の仕組みや固定観念と闘いながら、実に幅広い社会課題をデザインの力で変えるべく、これまで取り組んでこられました。
   今回は設立から一貫して法人運営に携わってこられた牧理事長に、取組のきっかけや思いを中心にお話を伺いました。

◇企業情報

   法人名 : 特定非営利活動法人ディープピープル(大阪市西区靱本町2-2-17)
   代表者 : 牧 文彦
   設立年 : 2007年

(概要)

   環境問題や障がい者就労、貧困課題のある子ども・女性の自立支援、留学生支援など、幅広い社会問題をデザインの力で解決するソーシャルビジネスに取り組むNPO法人。2017年には、社会の中で自分に自信をなくしたり立ち止まったりしている若者達の生きる力を育成するフリースクール「未来価値創造大学校」を設立。ここで学んだ若者達が、時代を変える新たなソーシャルビジネスを生み出しつつあります。

1.インタビュー

SDGsに向けて、どんな取組をされているのですか?

特定非営利活動法人ディープピープルイメージ
ゴミにならず、何度でも洗って使える包装資材
『OKURIN』

   いろいろありますが、まず、障がい者の就労支援があります。
   本来、誰しも能力と適性で職業を選択する自由があるはずですが、障がいがあるというだけでその自由が制限されます。福祉作業所で就労することも可能ですが、単純作業なので賃金はすごく低いです。それは福祉施策の一環であってビジネスとして成り立っているものではありません。その現状を、デザインが持つ本来の機能を加味して変えるために、付加価値の高い商品をDeep Peopleで企画し、福祉作業所で製作してもらって販売しています。
   例えば、誰かにプレゼントをするとき、箱やリボン緩衝材などで幾重にもラッピングしますよね。とても綺麗です。でも、プレゼントの中身を出してしまえば、それらは全て膨大なゴミになってしまう。そこで我々は、ゴミにならず、何度でも洗って使える可愛い包装資材「OKURIN」を販売しています。この商品は2007年のグッドデザイン賞を受賞しています。他にも、雨の日に百貨店等で使われるビニールの傘袋の代わりになる、布製の傘袋「amedama」も扱っています。これらの商品は環境に優しい素材を使用しているのはもちろんですが、障がいのある人々が縫製しやすいデザインと機能性を追求したデザインにこだわっています。
   また、「福祉未来価値創造大賞」という表彰制度も実施しています。福祉と企業が協働して商品開発を行い、福祉事業所で働く障がいのある人の賃金向上と、働きがい・やりがいも高めるソーシャルビジネスモデルやプランを顕彰する制度です。
   さらに、活動する中で、地球環境や障がい者雇用の問題を根本的に解決するには「人」が変わる必要があるとの考えに至り、若者が社会課題と向き合い、ソーシャルビジネスで解決していく動きを創出するため、2017年には未来価値創造大学校を開校しました。
   ここでは、各自に「自分学部自分学科」を決めてもらいます。できるできないなどの固定概念にとらわれずに、自分の好きな事ややりたいことを計画し、それに対して社会価値を設定して、ビジネスとして動かすことを目指します。こうした取組自体に単位を与えています。
   本校で重要視しているのは「自分の領域を広げる」ことです。「自分」というものを自分自身だけに限定せず、周囲の社会や自然も「自分」の一部として捉えてもらうことで、周辺の社会課題が自分事になり、初めて課題を解決したいと意識するようになるからです。中には、楽しみながら食品ロスの問題に取り組めるようにと、小学6年生が「食べ残しNOゲーム」というゲームを考案し、商品化した事例もあります。こちらは2018年第12回キッズデザイン協議会会長賞を受賞しました。今では多くの企業や学校で、食品ロスを学ぶツールとして実際に使われています。
   未来価値創造大学校には、企業に所属しながら学んでいる社会人もいます。社会課題の解決について考えることで、自社のためだけのビジネスが、社会にも自分自身にも良いSDGsビジネスへと広がっています。

SDGsの取組をはじめたきっかけは?

特定非営利活動法人ディープピープルイメージ

ビニールの傘袋の代わりになる、布製の傘袋
『amedama』

   SDGsという概念が広まる前からソーシャルビジネスをしているので、SDGsを目指して取り組んでいるというよりは、気づけば全てがSDGsに資する取組だったというのが実感です。
   元々、私自身はデザイナーとしてデザイン事務所に勤務していました。その頃の商品デザインというのは、いかに人の欲望を刺激して商品を購入させるか、というためのものでした。でも、それは購入者が飽きてしまえば捨てられ、大量のゴミとなります。そして、また別の新しい商品に飛びつく。それに対して、徐々に疑問を抱くようになっていきました。
   そんな中、縁あって大学や専門学校などでデザインを教えることになりました。ある年、職業技術訓練校に弱視と全盲という視覚障がいのある生徒が2名入学し、情報デザインの技術を身につけて卒業を迎えました。弱視の子は就職先が決まりましたが、全盲の子は決まらなかったんです。能力はあるのにそれが評価されない。そこで、私の会社で雇用し、当時はまだ珍しかった在宅ワークでウェブデザインの仕事をしてもらうことにしました。試行錯誤で大変な部分もありましたが、そのときの経験が、後の障がい者の在宅就労システム開発にも繋がっています。
   その後、大学の准教授として勤務していた時、自身の研究会で、デザインで社会問題を解決する商品を開発してビジネス化するという取組を行いました。そのときに学生達が開発したのが、先にお話した「OKURIN」「amedama」です。これは福祉作業所で働く障がい者の賃金向上に繋がりましたが、大学なのでビジネスにするにはどうしても制約があります。それで、NPO法人Deep Peopleを立ち上げるに至りました。
   そこからは、活動の中で見えてきた新たな社会課題に取り組み、さらにそこから別の課題を解決する・・・といった具合に、様々な取組に広げていきました。

SDGsに取り組んでみて、変化したものは?

特定非営利活動法人ディープピープルイメージ

   これまで「障がいのある人々が作業するには、複雑で無理」と思われていた縫製作業でも、縫いやすいデザインにしたり、補助工具などを利用したりすることで、一つ一つ不可能なことを可能にしてきました。その結果、実際に商品ができ、しかも数多く売れたことで、福祉作業所の指導員さんの意識を少しずつ変化させることが出来ました。その後、社会制度の後押しや企業コンプライアンスの強化もあり、身体障がい者の雇用環境は大きく改善しました。一方で、身体障がい以外の障がいのある人々の環境はまだ改善されていないようにも思っています。
   障がい者就労環境だけでなく、環境問題にしろ貧困課題のある子ども・女性の自立にしろ、確かに以前と比べたら世の中の認識は変わってきています。けれど、「世の中の流れが変わってきていて、何か社会のためになることをやっておかないと世間から後ろ指を指されるからやっているだけ」という意図が見え隠れしているなと感じることもあり、まだ心地の良い変化だとは言い切れません。
   世間の認識を変化させるには、本当に時間がかかると痛感しています。だからこそ、次の時代を担う子ども達や若者への教育というのは重要だと思っています。

SDGsに取り組む上で、苦労したところは?

   障がい者の就労は福祉施策だと見なされていた時代には、障がいのある人々に商品を作ってもらうことに対して、ネガティブな意見が少なくなかったですし、福祉でお金を稼ぐことを非常識と捉える風潮もありました。ソーシャルビジネスという言葉自体もないような時代だったので、社会課題をビジネスで解決するということに理解を示してもらうのは至難の業でした。思いに共感し、理解してくれる作業所を探して、一軒一軒訪ねては、作業をお願いして回りました。
   視覚障がいのある人達の場合もそうですよね。ウェブデザインの素晴らしい能力があるのに、ただ「通勤が困難だから」「前例がないから」という理由で採用してもらえない。世間では視覚障がい者の職業というと、まだまだあん摩マッサージ指圧や鍼、灸だけという認識でしたから。そんな世間の仕組みや先入観、偏見に苦労しましたね。

今後の方向性を教えてください

   今や人間が人間のDNAを操作出来るまでになりましたが、科学技術の発展に人間の「生命」や「心」に関する観念が追いついていないと感じています。そこに向けた第一歩として、ジェンダー問題に取り組みたいと思っています。まずは人の意識を変えるべく、大学生と共にジェンダー絵本を作成しました。来年には副読本も出版する予定です。

あなたの目指すSDGs2030年はどんな姿ですか?

特定非営利活動法人ディープピープルイメージ
特定非営利活動法人ディープピープル 牧理事長

   関西では2025年に大阪・関西万博が開催されます。その頃には、若者が「自分たちが発信したことで社会が変わる」と思える環境にしたいと思っています。
   私が子どもだった1970年の万博の頃、経済的にはみんな豊かではなかったかもしれませんが、物がないからといって不幸だとは思っていませんでした。むしろ、子ども達は生き生きしていて、「21世紀になったらどんな世の中になっているだろう?」というワクワク感のようなものがありました。2025年の万博でも、今の子ども達が将来に夢を持ち、元気に未来を描けるような状況であってほしいです。
   そして2030年には、その子ども達が社会人になり、社会を変える実証の場が出来ていて欲しいですね。その頃には、SDGsの17のゴールがどれくらい達成できているのか楽しみです。

~編集後記~
   デザインの力で、社会課題をビジネスとして解決することに力を注いで来られた牧理事長。「ビジネス化できなければ、福祉課題は福祉施策として守るだけになり、持続しない。持続しなければ課題は解決出来ない。」という言葉は、まさに、社会にも環境にも良いことにビジネスとして取り組むという、SDGsの主要原則の一つである「統合性」を追求するSDGsの精神そのものであり、その実現に果たすデザインの持つ本来の機能や力の大きさが改めて認識されるお話でした。

2.このページに関するお問い合わせ

近畿経済産業局 通商部 国際課
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