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プラスチックパウチのリサイクルに挑む「未来の住人プロジェクト」
~木村石鹸工業株式会社~

最終更新日:令和5年4月3日

   創業は大正13年という木村石鹸工業株式会社。伝統を重んじ、守るべきものは守りつつも、新しいことが大好きという同社では、詰め替えパウチをリサイクルできないか、その可能性を探るプロジェクトに挑まれています。複合素材でできているパウチは、ペットボトルなどとは異なってリサイクルが難しく、まだリサイクルプロセスも確立していません。単一素材にするにも色々と課題があったそうです。
   「未来の住人プロジェクト」と名付けられたこの試みや、その背景、今後の展開について、営業・マーケティング部の金さん、鹿嶋さん、技術・開発部の藤井さんにお話を伺いました。


◇企業情報

   企業名 : 木村石鹸工業株式会社(大阪府八尾市北亀井町2-1-30)
   代表者 : 木村 祥一郎
   創業年 : 1924年

(概要)

   家庭用から業務用まで、幅広い用途の石鹸や洗剤の製造販売を行う。今では少なくなった職人の手作業による「釜焚き製法」にこだわり、「環境」「人」「暮らし」に優しい「ちょうどよい」バランスの製品を提供している。

1.インタビュー

SDGsに向けて、どんな取組をされているのですか?

   「未来の住人プロジェクト」を、当社とフジシールグループさん、株式会社G-Placeさんとの3社で実施しています。2021年4月に開始しました。
   当社の製品に「12/JU-NI(ジューニ)」という、本気で髪を良くすることだけを考えて「正直な処方」で作ったシャンプー&コンディショナーのヘアケア製品ブランドがあります。この「12/JU-NI」の詰替えパウチに、試験的に開発した単一素材(モノマテリアル)フィルムを採用した、『未来の住人(ジューニン)プロジェクト』版パッケージを販売しています。
   お客様からこのパウチを使用後に郵送で返却していただき、リサイクルの実証実験を行う取組みが「未来の住人(ジューニン)プロジェクト」です。これからの未来を生きる”住人”として、地球にできることを探すための、12/JU-NI(”ジューニ”)を使ったプロジェクトという意味で「未来の住人プロジェクト」と名付けました。
   お客様の元には、商品だけでなく、このプロジェクトの趣旨を記載した説明資料、パウチ返送方法の説明書、返送用の袋、返信用封筒を同封して送っています。使用後は、パウチを水で洗って乾燥し、液漏れしないように同封の袋に入れて返信用封筒で当社に返送していただきます。
   約1年の期間を設けて販売し、パウチを一定量集めてから、リサイクル実験を行う予定です。

木村石鹸工業株式会社イメージ
「正直な処方」で作ったヘアケアブランド『12/JU-NI』

SDGsの取組をはじめたきっかけは?

   当社は石鹸メーカーですから、環境問題に高い関心を持っています。いくら環境に優しいとはいえ、自分たちの製品は環境を汚しているのではないかという意識をずっと抱いてきました。また、洗剤も石鹸もシャンプーも、容器はプラスチックが中心です。ですので、過剰包装をなくすべく、梱包材を見直したり無駄な化粧箱を排除したりと、これまでにも小さな見直しはやってきました。その上で、さらに何に取り組めばいいかについて、ずっと考えていました。
   そんな中、当社と取引をしていたG-Placeさんがフジシールグループさんと繋いでくれました。フジシールグループさんはパウチやペットボトルのシュリンクラベルを作られていますが、同社でもSDGsに貢献できる新たな取組みを模索されていたそうです。そこで3社が協力し、パウチのリサイクルが出来ないかチャレンジすることになりました。

SDGsに取り組む中で、苦労したことは?

木村石鹸工業株式会社イメージ
回収された使用済みパウチ

   苦労だらけでした(笑)。まず、強度を確保し、中に入っているシャンプー&コンディショナーの品質も維持できる単一素材のパウチを開発しなければなりません。強度が足りなければ破れて液漏れしてしまいますし、パウチの素材と中身との相性もあります。相性が悪いと、例えばシャンプーに含まれている水分が蒸発してしまい、使用感にも影響がでます。パウチのために中身の成分(液性)を変えるのは本末転倒ですから、何が何でもこの液性に合う素材を開発しないといけません。
   解決しないといけないのはパウチの素材だけではありません。パウチに貼るシールもそうです。パウチに直接印刷をしてしまうと、リサイクルするときにインクが混入することになります。そのためシールをパウチに貼るのですが、すると今度は、剥がす時にシールの接着剤がパウチの表面に残ってしまいます。これもシール残りがでないようにしないといけません。
   開発はフジシールグループさんが担ってくださいました。次から次へと課題が出てきて、解決策を考えてはトライし、今度こそはとテストをするのですがなかなか思うような結果にならず、何度もみんなで頭を抱えたり煮詰まったりしながら、試行錯誤で開発を進めていきました。
   G-Placeさんはパウチのリサイクル部分を担ってくださる予定です。パウチの開発も含め本プロジェクト全体のプロジェクトマネジメントや、時にはメンターのような役割で我々を励ましてくださり、プロジェクト全体を通してサポートいただきました。とても心強かったですし、現在も継続的にサポートいただいています。また、余談ですが、返信用封筒を料金受取人払いにする手続きにも苦労しましたね(笑)。何度も郵便局に足を運んで、確認と調整を繰り返しながら封筒も完成しました。
   こうして準備に1年ほどかかりましたが、2021年4月にようやくリリースすることができました。こちらはオンラインのみで販売しています。最初はあまりパウチが返ってこなくてどうしようかと思ったのですが、SNSでの発信や顧客メールなどで根気よくPRし続け、徐々に返送率は上がってきています。

SDGsに取り組んでみて、変化したものは?

   お客様の反応は上々です。元々当社の製品は環境意識の高い方に使っていただいているということもあって、環境問題に取り組む当社への応援の気持ちで購入してくださる方がほとんどのようです。元々当社を知ってくれている方からは「さすがだね」と言っていただく一方、このプロジェクトで改めてこんな会社があると知っていただけたり、「こんな小さな会社がここまでやるのか」と、新たに当社のファンになってくれた方もいます。
   社内でも、この取組は温かく、好意的に見守ってもらっています。すでに2年前からSDGs関連の情報を社内で共有してきたこともあって、当社ではSDGsは浸透していますし、社員もSDGsを意識しないで会社の存続は厳しくなるという肌感覚を持っています。この試みを機に、今後は社内の他のチャレンジも「未来の住人プロジェクト」として扱っていきたいですね。

今後の方向性を教えてください

   まずは、回収したパウチをリサイクルして検証します。もちろん理想はパウチから再びパウチにして販売することですが、そんな簡単に出来るとは思っていません。
   今回のプロジェクトで、SDGsの17のゴールの一つ「つくる責任 使う責任」のうち、作る責任にチャレンジしたのだと思っています。使う責任はお客様にお願いをしないといけません。我々はお客様に商品の使い方を伝え、当社の製品を使用するとどんないいことがあるのかについて、もっと発信していかないといけないと思っています。当社は小さな会社ですので、我々だけで取り組んでも社会的なインパクトはわずかです。でも、発信をし続けることで社会に小さなインパクトを与え、そこから周囲に波及させることは出来ると思っています。
   「未来の住人プロジェクト」が完全なエコを実現するとは思っていません。その議論は、プロジェクトの話が持ち上がった時から社内でもありました。パウチの洗浄には水も使いますし、プラスチックフリーが実現するわけでもありませんから。でも、我々はエコな未来の可能性を探る実験をしているのだと思っています。このプロジェクトのために少なからずコストをかけていますが、これも未来に対する姿勢への投資だと思っています。我々は、このプロジェクトを通じて当社のマニュフェストにある「人と環境と暮らしにちょうどいい」というのはどういうことかを改めて考えました。これからも、水を全く汚さないというのは無理でも、汚す水を出来るだけ少なく出来るように泡切れをよくする技術開発や、生分解性のより高い洗剤作りを目指していきます。

あなたの目指すSDGs2030年はどんな姿ですか?

   「自分が購入した製品が一切ゴミにならない社会」です。そんな完全な循環が形成され、持続可能な社会になっていたら嬉しいですね。

木村石鹸工業株式会社イメージ
(左)営業・マーケティング部 鹿嶋 友莉江さん
(中央)技術・開発部 藤井 健吾さん
(右)営業・マーケティング部 金 永樹さん

~編集後記~
   何事も、100%を目指してもそれがベストになるわけではないと言われますが、環境にだけ完璧な優しさを目指すのではなく、環境と人間と暮らしのそれぞれに「ちょうどいい」優しいバランスというものを真摯に追い続ける皆さんの姿勢が印象的なインタビューでした。
   人一倍SDGsを意識しつつも、敢えて「簡単にSDGsと言ってしまわない」経営をされている木村石鹸工業株式会社。「当社はそもそも本質的にSDGsに近い経営形態なんです。でも、『SDGsをやってます』と言わないと世間からSDGsを推進している企業なのだと認識されないんですよね。」というお言葉は、SDGsを捉える側の我々社会の認識の問題点の一つではないでしょうか。(2022年2月2日)

2.このページに関するお問い合わせ

近畿経済産業局 総務企画部 2025NEXT関西企画室
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