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培ってきたゴム関連技術を軸に、事業分野を越えて持続可能な社会に貢献する
~錦城護謨株式会社~

最終更新日:令和5年4月3日

   ゴムや樹脂製品の製造・販売を手掛ける傍ら、軟弱地盤を改良する資材や工法を独自開発し、圧密促進工法という地盤改良分野において国内約70%のシェアを獲得する錦城護謨株式会社。同社は、長年培ってきたゴム関連技術や原材料の特性を軸に、新たな事業分野へのチャレンジを続けています。
   今回は、太田社長はじめ、同社でシリコーンゴム製のグラス「KINJO JAPAN」の開発に取り組まれた鈴木副本部長、水田係長から、SDGs達成に貢献する同社の取り組みについて、お話を伺いました。


◇企業情報

   企業名 : 錦城護謨株式会社(大阪府八尾市跡部北の町1丁目4番25号)
   代表者 : 太田 泰造
   創業年 : 1936年

(概要)

   ゴムや樹脂製品の製造・販売及び軟弱地盤改良に関する事業を展開。同社の培ってきた経験や技術力と社会の抱える課題を組み合わせることでシナジー効果を生み出そうと「防災、環境、健康、福祉」をテーマに掲げ、視覚障害者の方との共存を可能にする歩行誘導ソフトマットやカーボンフリーで地球環境にやさしいシリコーンゴム製グラス「KINJO JAPAN」を開発。新たな事業の柱を築こうとチャレンジを続けています。

1.インタビュー

SDGsに向けて、どんな取組をされているのですか?

錦城護謨株式会社イメージ
視覚障がい者用歩行誘導ソフトマット

   当社は、1936年に工業用ゴム材料の商社として創業して以来、時代の変遷と共に歩み、ゴムや樹脂材料の開発から金型設計、製造までを一気通貫で手掛けられるまでに成長してきました。その傍ら、土木事業にも進出しており、軟弱地盤を改良するための資材や工法を独自開発し、実績を重ねることで、圧密促進工法という地盤改良分野において国内約70%のシェアを獲得しています。
   そうした当社では、さらに新たな事業の柱を構築しようとチャレンジを志す中、現在、福祉事業にも進出しています。土木事業で関係を築いていた会社の方から、全盲を抱えながら視覚障がい者のための歩行誘導マットの開発に取り組んでいた方をご紹介いただきました。視覚障がい者のために設置する視覚障がい者誘導用ブロック(点字ブロック)が、車椅子の方にとっては危険で、移動のハードルとなっています。この事実に着目し、視覚障がい者にも車椅子の方にも優しい歩行誘導マットを開発することで共存共生できる街にしていこうとする取組に社会的意義を感じ、商品を作ったり販売したりすることが困難なその方に代わって、当社が販売のお手伝いをはじめました。歩行誘導マットの設置作業も当社が担っていたのですが、そうして関わりを深めていく中で、経年劣化によりマットが剥がれたり、雨で濡れると滑ったりしやすいなど、少しずつ課題もみえてきました。防滑対策や剥がれ防止等の改良を重ね、2016年に「視覚障がい者用歩行誘導ソフトマット」として商品化することができました。現在、生産から設置まで当社で行いながら、公共施設や病院、大学、社会福祉施設、金融機関などに導入いただき、車椅子の方、視覚障がい者の方、そして健常者のいずれも我慢してもらうことなく共存できるダイバーシティな街づくりの貢献に取り組んでいます。
   新たな事業の柱を目指して取り組む一方で、社員に仕事に対する誇りや、やりがいを持ってもらいたい思いから始めたプロジェクトもあります。当社の社員は常に良いものを作り、事業を通じて社会に貢献しているのですが、BtoBで事業を行っているため最終製品を実際に使うユーザーの声を知る機会が少なく、自分たちが作った部品がどのように社会で役立っているかということを実感することが難しくなっています。結果、ものづくりへの思いや喜びも実感しにくくなり、ただ単に出勤し、時間になればタイムカードを押して帰宅するだけという状態になっていました。そこで、「社員一人一人に、人生の多くの時間を費やす仕事に誇りを感じてもらいたい」という思いから、「これが錦城護謨」と言わしめるフラッグシップとして広く世の中に知ってもらえる自社商品を企画しました。それがシリコーンゴム製のグラス「KINJO JAPAN E1」です。このプロジェクトは2019年に、ものづくり事業者とクリエイターを結ぶ八尾市の事業「YAOYA PROJECT」に参加したことを機にスタートしました。当社の技術力をPRしたところ、創作意欲の高い様々な分野のデザイナーからご提案いただき、コラボレーションすることができました。ゴムでできているため落としても割れずに使い続けてもらえ、また、シリコーンゴムの成分はケイ素と酸素が中心であるため、タイヤなどに使用されている原油由来のゴムに比べ、CO2排出量の削減にも貢献できます。見た目も高級グラスと遜色ないレベルまでこだわりました。こうして、当社の思いを結集し、地球環境にやさしいBtoC商品を開発することが出来ました。できあがった商品は全社員に配りました。持ち帰って家族に見せたところ、「お父さんの会社はこんな商品を作る会社なんだね」「すごいね」と言われた社員もいたらしく、ものづくりの面白さや自社へのプライドに繋がったようです。今後、社員から改善アイデアをもらいながら、社員全体で創った誇りある商品にしていきたいです。

錦城護謨株式会社イメージ
シリコーンゴム製のグラス『KINJO JAPAN E1』

SDGsの取組をはじめたきっかけは?

錦城護謨株式会社イメージ

   ゴム製品の製造・販売を主体に事業展開する当社では、2005年頃の売上構成について、ゴム製品の製造・販売が7割を占め、軟弱地盤改良における材料製造や設計施工の事業が残りの3割を占める状況でしたので、リスク分散できるのため新たな事業の柱を作りたいと考えていました。
   当社のこれまで培ってきた経験や技術力と社会の抱える課題を組み合わせることでシナジー効果を生み出そうと「健康、福祉、防災、環境」をテーマに掲げて事業創出に取り組んできたところです。ちょうど、2015年に国連で採択されたSDGsの理念やゴールが当社の掲げるテーマとも合致し、取り組みを後押ししてくれているので、そこを意識した活動に高めていきたいと思います。

SDGsに取り組む中で、苦労したことは?

   SDGsに沿ったプロダクツを生み出そうとチャレンジを続けていますが、こうした取り組みは、当社がこれまで活動してきた事業分野を飛び出して、新たな分野で活躍される方々とも関わりを持っていくことになります。そのため、新しい分野に関する知識や業界の持つ特性を理解しながら進めていきたいと思っていますが、同時に、理解を深めることの難しさも感じています。
   「売り手良し、買い手良し、世間良し」の三方良しを実現し、持続性を持ちながら進めていきたいので、焦らず、少しずつ事業として成立させることで、次なる貢献にもつなげていきたいです。

今後の方向性を教えてください

   モノのなかった時代からモノの溢れる時代へと移ってきた中で、メーカーにとっての使命も「大量生産・大量消費」から「使い続ける」というワードに移ろうとしているように思います。我々ものづくり企業も、使い続けられるものづくりをしなければ生き残れないと思っています。
   そうした時代の要請を受けて、当社においても、製造するモノの持っている本質的な価値を見つめ直し、購入いただいた方に使い続けてもらうところまでをデザインし、発信できるように変わっていきたいと考えています。

あなたの目指すSDGs2030年はどんな姿ですか?

錦城護謨株式会社イメージ
錦城護謨株式会社 太田社長

   古来より、日本人は自然から与えてもらう資源を大切にしてきました。その後、大量生産・大量消費の時代を経て、現在、モノを使い続ける時代に移ろうとしていますが、従来から自然そのものや自然からいただく資源を大切にしてきた日本人であれば、これからの新たな時代を実現していけると思っています。
   無理に「SDGsを目指して頑張っている」という必要はないと思っています。むしろ、企業活動の結果として、当たり前にSDGsに貢献したいと思っています。SDGsに沿った製品を作り、その商品が持つ高い価値に対して当然の対価をいただき、それを元にさらに社会に良い製品を生み出し、社会全体が良くなれば理想ですし、そうあるべきだと考えています。
   当社はものづくりの会社です。ものづくりの面から社会に貢献し、「ものを作って価値を提供する集団」として、ものを長く使い続ける世界を提言出来るようなメーカーになっていたいですね。当たり前にしてきた日本らしいビジネスモデルがSDGsの達成につながるように思います。背伸びはせず、多くの方と一緒に自分事として考えながら、実現していけると良いですね。

~編集後記~
   ゴム製品の製造・販売事業を展開してきた同社は、培ってきた技術や経験に社会課題という新たな知見を足し込むことでビジネス領域を拡大し、SDGsの実現に貢献しています。
   「会社はそれぞれ『自社らしさ』を持っているので、それを“見える化”することで、自社らしいSDGsへの貢献を考えていくことができる」と太田社長は語ります。SDGsに取り組もうと検討するにあたり、今一度、『自社らしさ』を振り返ってみる中にヒントがあるのではないでしょうか。(2022年2月3日)

2.このページに関するお問い合わせ

近畿経済産業局 総務企画部 2025NEXT関西企画室
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