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公共施設や店舗・ホテルなど幅広い分野で抗ウイルス・制菌・消臭
~高橋練染株式会社~

最終更新日:令和5年3月15日

高橋練染は戦後間もない1948年に、国内有数の繊維産地である京都で創業した。社名に「染」とあるが、実際には染色は行っておらず、染色後の生地を洗浄し乾燥させ巻き取る「整理仕上げ」と呼ばれる工程を担当している。
国内の繊維産業は依然厳しい状況が続いている。既存事業だけでは生き残れないと判断した高橋聖介社長は、2003年の社長就任前後から繊維製品の仕上げ加工に機能を付与する技術開発に本腰を入れ始めた。同社は創業以来、生地の機能付加について研究開発を続けてきた。この「DEOFACTOR(デオファクター)」はその集大成というべきもので、生地のほか公共施設や住空間、車両など幅広く用途開発を進めている。

無味無臭の高濃度ミネラル

細菌の増殖を抑える「抗菌」に対し「制菌」は菌を増やすことなく減少させる。生地の制菌加工薬剤「DEOFACTOR」は微細な鉄やカリウム、アルミニウム、チタン、ゼオライトなどが主成分。これらが空気中の水分と酸素に反応する事で、ヒドロキシラジカル(OHラジカル)を生成する。OHラジカルは酸化力が強く、周囲の菌やウイルスなど有害物質と結びつき、素早く空気中の有害物質を分解する。薬剤は100%天然の無機物からなる無味無臭の液体だ。有害物質を無害化した後、再び水と酸素に戻り空中に還元される。抗菌や防臭というと光触媒が想起されるが、光触媒と異なり紫外線が不要なので、場所を選ばず24時間作用し続ける。

「DEOFATOR CASA」の加工液
「DEOFATOR CASA」の加工液

これを住宅や公共施設の壁などに施工できるようにしたのが、2019年に製品化した「DEOFACTORCASA(デオファクターカーサ)」だ。第三者機関が試験した消臭・防臭効果につながる有害物質の減少効果は2時間で、アンモニア(初発濃度100ppm)が99%、酢酸(同30ppm)は82%、ホルムアルデヒド(同10ppm)が85・4%。またウイルスも99・9%以上減少することが分かった。抗ウイルス効果も高く防汚効果もあるので、家具や家電製品に施工するとほこりや花粉が付きにくくなる。施工対象の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察すると微粒子による膜の形成が観察できた。対象物の微細な穴にDEOFACTORの微粒子が入り込み、表面を平滑化するのだという。
同社は全国でも数少ないバクテスター(微生物蛍光画像測定器)を複数台導入するなど、施工の効果を可視化する検査体制も充実している。バクテスターは菌を培養することなく一般細菌の測定が可能。専門知識を持った検査員がこの装置を扱い、現場で迅速に効果を確認できる点も強みにしている。

細菌検査を可視化する「バクテスター」
細菌検査を可視化する「バクテスター」

まずは生地から

生地用のDEOFACTORは2018年に市場投入した。人体に影響を与えることなく制菌、消臭、抗ウイルス、抗かび、防汚などの効果が得られ、糸に薬剤を練り込むのではなく、生地への後加工で機能性を持たせるのが特徴だ。
この開発には足かけ15年を要した。高濃度ミネラルについての試行錯誤を続けていたが、研究開発投資はかさみ「エビデンス(証拠)を得るだけでも毎年1000万円以上、トータルで1億円以上を使った」と高橋社長は振り返る。従業員規模30人ほどの中小企業でこの投資額は大英断だった。
生地は洗濯を繰り返すため、機能を維持するのが難しい。DEOFACTORは生地に練り込むのではなく、後から加工するだけになおさらだ。そこで生地に定着させるためのバインダー(結合材)を独自開発した。「当社のバインダー技術は日本一」と胸を張る高橋社長。繊維評価技術協議会の製品認証マーク「SEK」を、抗ウイルス加工、抗かび加工、制菌加工(特定用途、一般用途)について認定取得しているのがこの証だ。さらに抗菌製品技術協議会が認定する「SIAA」マークを抗菌加工と抗ウイルス加工の2分野で取得している。

高橋社長は妥協することなく開発を進めた
高橋社長は妥協することなく開発を進めた

続く「DEOFACTOR CASA」の開発においても多くの壁に突き当たったが、愚直に解決していった。「良い結果が出ると欲が出てくる」と高橋社長。最良を求め、時間をかけて製品化に取り組んだ。

代理店を使って全国展開

住宅などをターゲットにするDEOFACTOR CASAについては自社単独での市場開拓が難しいため、販売は代理店方式を取っている。株式会社ファイン(京都府宇治市)を総代理店に全国に73の認定施工代理店を置き、施工は講習を受けた施工技士免許保持者がスプレーガンを使って実施。不特定多数が利用する病院や介護施設、道の駅や役所などで重用されるようになった。世界遺産に登録されている二条城(京都市中京区)の休憩所のベンチなどにも施工実績があるという。

DEOFACTOR CASAはスプレーガンで施工
DEOFACTOR CASAはスプレーガンで施工

一方、同社は既製品やすでに使っている製品に対しても噴霧するだけで制菌効果が得られる「DEOFACTOR COAT(コート) 」を製品化。長時間保管することが多く、雑菌やカビが発生しやすい和装製品を中心に後加工で、使用時の臭いや汚れを防ぐことができる製品として幅広くアピールしている。さらに自動車のシートやドアパネルなど内装材に向けた「DEOFACTOR Mobi(モビ)」、植物などを対象にした「DEOFACTOR BOTANICAL(ボタニカル)」など適用分野を製品名に打ち出したバリエーション製品も増やし、新市場の開拓に力を入れる。
加工液の製造は特殊な設備を必要とする。現在は外部委託しているが「1、2年後をめどに内製化したい」と高橋社長。海外からの問い合わせも多く、マレーシア企業への加工液の供給もスタートした。海外需要の拡大が期待されるが「日本で売れないから海外で、という発想ではだめ。あくまで日本国内の市場で実績を積みたい」と意気込んでいる。

経営者メッセージ

当社は1948年、京都で正絹織物の精練加工を生業として創業した。それから70有余年、繊維業界の荒波にあらがって前進を続けてきた。近年は繊維製品の整理仕上げ加工に新たな機能を付加する「DEOFACTOR」など、社会情勢に応じた機能を付加した加工を生み出し、HACCP(ハサップ)にも対応する製品を供給し続けている。
そして2019年には繊維整理仕上げ業で初めてISO9001の認証を取得。加工液を繊維製品以外への展開を目指し、空間施工や車両など幅広く展開している。これからも最小限の人員で最大限の売り上げを目指し、社会に貢献していく。

企業情報

▽企業名=高橋練染株式会社
▽代表取締役社長=高橋 聖介
▽所在地=京都市右京区山ノ内宮脇町1-1
▽設立=1950年12月
▽売上高=7億円(2021年3月期)
▽従業員=32人

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