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コンクリートの打設状況を可視化できるアクリル板型枠、採光性が良く作業環境の改善も
~株式会社高洋商会~

最終更新日:令和5年3月15日

高洋商会は1986年に設立したコンクリート用型枠の総合メーカーだ。建設現場でコンクリートの打設状況を可視化できるよう、せき板にアクリル板を採用した透明型枠「クリアーフォーム」を展開している。
これまでのコンクリート打設は職人の勘に頼っていた。内部を可視化できる透明型枠によって、異物混入の有無や鉄筋の配置、コンクリートの充てん状況を把握しつつ、高品質の施工を実現できるようになった。作業場所の採光性に優れ、安全にも貢献する。曲線のある形状など、さまざまな形状にも対応できる。さらに同社は内装材や各種センサとの組み合わせによる現場施工の自動化ソリューションなど“透明”を生かした進化も模索する。

コンクリート用型枠の総合メーカー
コンクリート用型枠の総合メーカー

施工品質と現場安全の向上に寄与

高洋商会の透明型枠「クリアーフォーム」は、コンクリートを流し込む際の型「せき板」の部分に、アクリル板を採用して型枠内部を可視化できるようにした。せき板には、合板や鋼板が使われるのが一般的だ。クリアーフォームは型枠の建て込み後も、型枠内部が透けて見えることから、コンクリートが充てんされていく様子を目視で確認しながら施工できるのが特徴だ。山川耕平常務は「充てん不足や気泡発生などがあると、構造物の耐久性に問題が生じてしまう」と話し、施工品質への貢献をアピールする。
コンクリートの打設は、職人の勘に頼らざるを得ない作業であるのが実際だ。たとえば、コンクリートが固まり始めているところに新たなコンクリートを入れると、ひびのような継ぎ目「コールドジョイント」が発生してしまう。職人が長年の経験をもってしても、コンクリート注入の圧力や速度を適切に制御するのは至難の業だが、型枠内部の状態さえ把握できれば、たやすく品質の高い、確実な施工を実現できるという。
透明型枠は、暗くなりがちな工事現場に、自然光を採り入れることが可能だ。現場に明かりをもたらすことで、作業環境の安全性向上にも寄与する。高洋商会のクリアーフォームの強みは、その透明性にある。他社が製造していた透明型枠に比べて、透明度が高い。他社が素材に使うのは、塩化ビニルや繊維強化プラスチック(FRP)。「どうしても乳白色がかってしまう」(山川常務)のだという。また、アクリル板は繰り返しの使用にも優れる。合板のせき板の場合、5-6回が使用限度なのに対し、「(アクリル板を)30回以上転用している現場もある」(山川常務)と廃棄物の削減効果も強調する。

透明型枠のクリアーフォーム
透明型枠のクリアーフォーム

国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されており、施工品質や安全性向上を目的にクリアフォームを使えば、公共土木工事の入札における総合評価などで加点の対象になることも製品普及の追い風になっている。

開発の背景=アクリル板で透明度高く、自由設計に対応

高洋商会が透明型枠の展開を始めたのは2008年。既存透明型枠の透明性に不満があったゼネコン担当者からの相談がきっかけだった。巨大高架橋の橋脚工事で、コンクリートの充填がなかなかうまくいかなかった。強度を高めるために鉄筋の本数が多く使われていたことが、施工難易度を高めていた。既存の透明型枠を使っても、ぼやけてしまい内部がよく見えないと困っていた。
山川広司社長が知人に相談したところ、既存の透明型枠には使われていなかったアクリルの採用を助言され、製作に取り組んだ。「アクリルは衝撃に弱いが、耐久性は強い。うまく使えば、採り入れられる」、山川社長は手応えをつかんだ。初受注品が好評だったこともあり「ミエールフォーム」の名前で展開した。NETISにも登録されたことで、ゼネコンの公共土木工事を中心に徐々に引き合いが増えた。

「アクリルの耐久性に手応えをつかんだ」と山川社長
「アクリルの耐久性に手応えをつかんだ」と山川社長

NETISの登録期限は最長10年。期限が終了した2019年にリブランドしたのがクリアーフォームだ。
クリアーフォームは、自由設計で形状の対応力を前面に打ち出した。経験を重ねたことで、「異形加工や違う素材との組み合わせなど、できることが進化した」と山川常務は話す。他社の透明型枠は既製サイズのカタログ品のため、現場からは使いづらいとの声も上がっていたという。高洋商会はオーダーメードの木枠を得意としていたこともあり、透明型枠でも特殊形状の注文に対応。カーブや斜めなどベニヤと同じような加工ができる。コンクリート充填の確認が難しいのが、こうした形状。「木の型枠屋ならではの発想だ」と山川社長は胸を張る。

透明プラスαを模索、ICT企業との連携も

クリアーフォームは前身のミエールフォームと合わせ、3000カ所以上の現場で活躍してきた。納入先について、山川社長は「高価なため、ゼネコンの公共土木工事が多い」と明かす。橋脚や橋桁、トンネル、ダム、護岸、桟橋などのコンクリート打設で品質向上に使われたほか、地域住民の現場見学用として採用する例もあった。また、ゼネコンの研修施設や各種研究機関で、教育用としてコンクリートの流動性を見たり、新工法を開発したりするために使われるケースもあるという。

トンネル工事で使われている透明型枠
トンネル工事で使われている透明型枠

コンスタントに年間200件程度の受注が続いているが、山川常務は「現場の数が伸びるのは厳しい。透明であることを生かして次の展開を実現したい」と将来を見据える。
可能性の一つとして具体化を狙うのが、センサメーカーとの連携だ。コンクリートの硬化熱を図る温度センサをクリアーフォームに取り付け、コンクリート打設工事の品質向上のための導入を提案する構想だ。「ICT(情報通信技術)の知見を持つ企業と〝透明プラス何か〟を考えていきたい」と、山川常務は意欲を見せる。カメラと組み合わせたコンクリート打設の自動施工の実現などに夢は膨らむ。
さらに内装デザインの一部として透明型枠を使うことも模索する。通常はコンクリート打設が終わったら外す型枠を、外さずに建物に残して生かせる方法を探りたい考え。山川常務は「建材として、設計事務所やデザイナーに提案したい」と、これまでにない発想、提案先にも期待を寄せる。

経営者メッセージ

透明なコンクリート型枠「ミエールフォーム」を作り始めてから13年が経ち、建設業界に徐々に浸透してきた。それぞれの工事現場で、安全・品質に対する意識の高まりを実感しており、ニーズを確信している。まだ生産能力には余裕があるので、さらに高みを狙い、売り上げを伸ばしていきたい。
当社は、製品に対する自信と顧客への誠意が重要と考えている。作っているのは建設現場の安全、品質を支えるものだ。顧客からの信頼の下で購入頂いていることは誇らしい。これからも選んでもらえる「黙っていても売れる製品を作る」気構えを持ち、モノづくりを続けていきたい。

企業情報

▽企業名=株式会社高洋商会
▽代表取締役社長=山川 広司
▽所在地=大阪府岸和田市岸の丘町2-8-40
▽設立=1987年3月
▽売上高=10億円(2021年2月期)
▽従業員=44人

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