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超小型人工衛星のデータ活用、新領域のビジネスに挑む
~株式会社ネスティ~

最終更新日:令和5年3月15日

ネスティは情報システムの受託開発、独自パッケージソフトを展開する。スポーツクラブや人材派遣会社の業務システムは国内の市場シェアトップ。近年は産学官連携で開発した人工衛星の画像利用システムを軸に、宇宙分野にも取り組んでいる。本社を構える福井県は宇宙産業の創出を進めており、同社はその中核的存在だ。
人工衛星データの利用といえば、気象衛星や通信衛星を除けば、大学や研究機関の学術的な解析システムが中心。自治体や民間のビジネスではなじみが薄かったが、超小型人工衛星の時代が到来し、国内外でビジネスの機運が盛り上がっている。こうした時流を見据え、2022年春から販売活動を本格的にスタートする。

衛星データを利用しようという気運が高まっている
衛星データを利用しようという気運が高まっている

新鮮な地上画像、手頃なコストで

これまで河川の川幅変化や、民間事業者による森林の違法伐採などは、専門職員の現地パトロールや、航空写真の解析で監視してきた。ネスティが提供する衛星画像の利用によって、これらのコストと労力の軽減が期待できる。また衛星画像から森林や田畑の植生指標(NDVI)を簡易解析すれば、雑草の繁茂状況、松枯れの悪化状況の把握にも応用できる。異なるアプローチとしては観光情報サイトを運営する事業者に四季の変化をとらえた画像やデジタル地図アプリを販売するなど新しいサービスの展開も可能だ。
福井県の産学官連携プロジェクトによる超小型人工衛星「すいせん」が2021年6月から定常運用に入った。同社の衛星画像利用システムはすいせんが撮影する日本の地上画像データを活用する。すいせんは高度600キロメートルの地球軌道を周回。宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都中央区)が運用を担っており、月1回のペースで福井県域などを分解能2・5mで撮影した画像データを提供する。

定常運用に入った人工衛星「すいせん」
定常運用に入った人工衛星「すいせん」

通常、衛星画像として目にするのは、大半が過去のアーカイブ画像だ。直近の画像を購入するとなると高額で、フランスの衛星「SPOT(スポット)」のデータは福井県の面積約4万2000平方キロメートル分を購入すると1枚約300万円かかる。これが、すいせんの運用により、手頃なコストで直近のデータを入手・活用できるようになる。
システムは、すいせんのデータと既存の地図情報、自治体のハザードマップのオープンデータなどと重ね合わせ、住所情報や、土砂災害警戒区域、浸水想定区域の視覚的な把握を可能にする。スポットの高解像度の画像データも定期的に調達して使えるようにしており、時系列に並べて変化を追うなど、用途に合わせたさまざまな表示が構成できる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のALOS(エーロス)衛星が提供する標高差を持つデータと連携すれば、3Dの地形表示も可能。他の人工衛星の画像データも柔軟に取り込める仕組みにしており、地上が雲に覆われている場合は、合成開口レーダー(SAR)衛星のデータも使える。

県の経済政策が契機、県外の知見も集まり基礎から学ぶ

システム開発の取り組みが加速した背景には下地があった。進藤社長は2014年に福井県情報システム工業会の会長の立場で、農業ITと衛星データ活用の技術研修を1年間にわたって進めていた。外部から衛星画像を購入するとコストが高く、採算をとるのは難しかったが、「自前の人工衛星が持てればビジネスになり得ると考えていた」と進藤社長は経緯を話す。

進藤社長は衛星利用のビジネスモデルに早くから注目していた
進藤社長は衛星利用のビジネスモデルに早くから注目していた

県の経済新戦略策定に際して提案すると、注目が集まった。2015年4月、福井県は経済新戦略の改訂版を策定する。これに「宇宙産業への参入促進」が盛り込まれた。衛星データを農業や防災などに役立てる目的で福井県がモデルユーザーとなり、その実績をテコに全国の自治体に販売する戦略だ。人工衛星のダウンサイジングが進み、機体の製作費が民間の手の届く水準になっていたことも追い風になった。
超小型人工衛星で先進的な研究開発をする東京大学の教授らを招いて産官学がともに基礎から学んだ。東大発の宇宙ベンチャーなどとの交流も進み、機体の製作、その衛星画像の利用システムの両面から活動計画を設定した。
さらに2016年8月、連携推進の実働組織として「福井県民衛星技術研究組合(FSTRA、エフストラ)」を設立。県内9社、県外から宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都千代田区)、富士通の2社が参加し、ネスティの進藤哲次社長が理事長に就任した。顧問には東大の教員らのほか、JAXAも加わった。富士通をリーダーとして組合に参加する各社の開発は一気に進んだ。

地元の実績テコに、全国自治体向けの営業にアクセル

システムは現在、バージョン2・0の開発が進行中。2022年3月末までに水害データベース、河川に設置した水位計データと連携し、降雨時に下流の水位変化を統計から予測する機能や、森林で樹種を選んできめ細かく監視する機能などを追加する。機能拡張を終え、営業活動をスタートする計画だ。
営業は衛星技術研究組合のメンバーで、システム開発のリーダーを務める富士通とネスティが連携して展開する。富士通の人材をネスティに迎え、各地の富士通の代理店と連動して、自治体などに提案していく。モデルユーザーの福井県は、すでに7市町でテスト利用中。防災のほか、森林の効率的管理、登山ルートの状態の把握などで本格採用の検討が進んでいる。

防災などで採用の検討が進む
防災などで採用の検討が進む

一方、同社既存の主力パッケージソフトは現在2本。スポーツクラブ向けの総合管理システム「PeGasus(ペガサス)F1」は、全国約800店の顧客を持ち、業界トップを走る。また人材派遣業界向けの人材ビジネス支援システム「GスタッフNS」シリーズは累計100社に販売し、同業界の上位100社のシェアトップに立っている。今後、衛星画像利用システムを新たな柱として育て、データビジネスの領域にも広く展開を図る構想だ。

経営者メッセージ

当社は少数精鋭のグッドカンパニーを目指している。情報システム会社にとって一番大切なのは人材。福井県は暮らしやすくてU・Iターン者が一定数おり、優秀な人材を採用できている。女性の働きやすさも大切にし、何度か公的な表彰もいただいた。
情報ビジネスで巨大になった「GAFA(ガーファ)」とは少し違うが、衛星画像利用システムもデータを握るビジネスモデル。挑戦のしがいがある仕事だ。当社はこれまでいろいろな分野のパッケージソフトの事業化に取り組み、スポーツクラブ、人材派遣ビジネスの製品は市場で勝ち残ってきた。衛星画像利用システムのビジネスは自分の集大成として、覚悟を持って軌道に乗せていく。

企業情報

▽企業名=株式会社ネスティ
▽代表取締役社長=進藤 哲次
▽所在地=福井県福井市羽水2-402
▽設立=1983年8月
▽売上高=10億円(2021年3月期)
▽従業員=86人

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近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
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