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最終更新日:令和5年3月15日
オプト.デュオは眼鏡の企画・卸売会社。自社ブランド商品を主力に展開する。福井県鯖江市の豊かな自然に囲まれた地域に拠点を構えて独自性の高い眼鏡を生み出し、各地のセレクトショップの店頭で消費者に届けている。
「specespace(スペックエスパス)」は2021年に20周年を迎えた同社を代表するブランドだ。柔らかなカーブで包み込む形にしたフレームを特徴としている。度付き眼鏡とサングラスの両分野で毎年、新作を送り出しており、眼鏡市場では中堅ブランドの一角に食い込む。スポーツサングラスでも認知度を高めて、「ES-1991」は特徴あるデザインを昇華させた一つの到達点として、存在感を放つ。
眼鏡の産地で知られる福井県鯖江市に本社を置く
スペックエスパスは立体的な造形を基本コンセプトにしている。金属のフレーム、プラスチックのフロント枠、2種の素材を融合させた外観。チタンのみで構成された、シンプルで近未来的なモデルも作っている。
スポーツサングラスとして2019年に発売したES-1991は、柔らかい弾性のβチタン材のフレームと、レンズを把持するフロント枠は伸び性を持つ特殊ナイロン樹脂で構成。目の脇までフード部を広くとった設計で、横方向の遮光性を持たせた。大きめの鼻パッド、軽く、包み込むフレームは運動中にずれにくい。8色のフレームをラインアップした。
2019年に発売したES1991
山岸社長は「スポーツサングラスとして昇華したデザインの自信作。構想は1年かけた」と話す。ケースに収納する時は弾性フレームを「くいっ」と曲げて、フロント部に引っかける。ES-1991ではより外れにくいデザインに改良して、しっかりかかるようにした。
コロナ禍で増えたジョギングやライトスポーツを楽しむ人たちに注目され、受注は順調。2021年10月に同社初のグッドデザイン賞の選定も受けた。
度付き眼鏡の市場は多数のブランドがひしめく。スポーツサングラスの分野においては大手メーカーで市場を牛耳る。大手メーカーは人気競技のトップ選手らとスポンサー契約し、ブランド戦略を推進する。一方、スペックエスパスのサングラスは、ずれにくい機能性や軽さで静かに注目されてきた。オフの生活シーンで愛用するスポーツ選手は少なくない。一般にはシニア層、女性にも好まれている。
フードの形、遮光部を広くしたES-1991の商品イメージは、眼鏡関連の展示会で収集したユーザーの感想・評価を2016年に発売したモデルに反映し、一段進化させた。コロナ禍の中、ストレスの発散にジョギングやアウトドアのレクリエーションを楽しむ人が増えた。顔を包み込むフレーム形状と、着用したマスクは絡む不具合がないのもポイントだ。
スペックエスパスは2001年にスタートした同社最初のブランド。立体的な造形を基本に、当初はオールプラスチックを採用し、厚手の材料で特徴を出した。販売開始から10年目には差別化を意識して金属製に挑戦。切削・曲げ加工によって1枚のβチタン板を、ヒンジ(ちょうつがい)なしで、カーブをつけて顔を包み込むようにした。フレーム内側にテンプルエンドのフックを引っ掛けるたたみ方で、ケースへの収納性も工夫した。
スペックエスパスを支えるメンバー(左が山岸社長)
チタン材の加工が得意な地元の眼鏡製造会社と組み、βチタンは0.8ミリメートルのシート材を選定。レーザーでフレーム形状に抜き、複数箇所の曲げ加工を入れて1本のフレームにする。弾性チタン材は難加工材の一つで、ヒンジレスは地元企業の技がベースだ。曲げ加工した後のフレームに、竹串を使い熟練者が手仕事でていねいに着色していく。
スポーツサングラス市場でブランドを強化し、眼鏡のセレクトショップの販路に加え、スポーツショップ、アウトドアショップでの販路の構築を目指す。視覚とスポーツ行動の関係を研究する大阪府立大学の教員と6年前から交流しており、かけやすさ、ずれにくさなどスペックエスパスの特徴を定量的に裏付けていくことも検討している。
眼鏡ビジネスは商品の企画・デザイン、多数の部品加工・製造、卸、小売店といった各業態の役割分担がある。80年代から、卸売りの同業者などで、自社ブランドの企画・デザインを強化し、近年は一貫で直営小売りにも手を広げる動きが目立つ。オプト.デュオも卸売りで創業し、企画・デザインに展開した。当面は企画・デザインに力を集中する戦略をとり、モノづくりで特に重要なのが、製造で頼りにする地元産地。その活性化に寄せる思いは強い。
産地の活性化につなげたい、と山岸社長
中国の眼鏡産地が90年代に台頭して、福井県の鯖江市・福井市の産地は厳しい局面が続く。コロナ禍の打撃も大きい。また2020年にイタリアの眼鏡世界最大手メーカーが鯖江市内に大型工場を構え、その影響が懸念されている。
「いろいろと難しい形、小ロットの当社の仕事を受けてくれる地元産地はありがたい」と山岸社長は話す。いい眼鏡を作り続けることで、タッグを組む産地の活性化の一翼を担う考えだ。主力の度付き眼鏡は、同業他社の多くが近年のトレンドである縁が大きく丸いクラシック調でしのぎをけずり、そのかたわらでスペックエスパスは独自の造形で個性を発信する。今の時流は注目される好機とも受け止めている。
複数の公的な表彰を受けたスポーツサングラスのES-1991をテコに、「スペックエスパス」ブランドの底上げを図る。
小規模でも私たちは自社ブランドを持ち、意図を持って、意味を込めてモノづくりを続けている。「私たちは自らの発想で、自由なデザインができる」を合言葉に、さまざまな眼鏡・サングラスを生み出している。企業としての成長と海外展開を見据え、国内市場の閉塞感を打破していきたい。
眼鏡産地の鯖江は100年あまり続く歴史がある。2020年にイタリアの巨大ブランドのメーカーが鯖江に製造拠点を構え、鯖江産地が今後どうなるか心配がある。当社のデザイン性、小ロットの商品は産地のモノづくり企業の協力があってこそ。今後もしっかりタッグを組み、自社ブランドの確立で、産地の活性化にも貢献し、この地で眼鏡を作り続けていきたい。
▽企業名=有限会社オプト.デュオ
▽代表取締役社長=山岸 誉
▽所在地=福井県鯖江市北中町539
▽設立=1993年11月
▽売上高=非公表
▽従業員=6人
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