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業界初の屋外型ガス発生装置、導入ハードルなくし市場開拓、産業ガスの現場精製後押し
~コフロック株式会社~

最終更新日:令和5年3月15日

コフロックは流体(ガス・液体)を計測制御する流量計、精密バルブ、マスフローコントローラーといった流体制御機器と、空気を原料に高純度な窒素ガス、酸素ガスなどを精製するガス発生装置の製造を手がける。同社の比例電磁弁は世界中の分析機器メーカーの装置内の流量制御を担っており、コロナ禍で需要が増える人工呼吸器や酸素濃縮器にも採用される。培った流体制御技術を応用したガス発生装置は1990年から展開している。
業界初の屋外型ガス発生装置「GENE-BASEシリーズ」は、出力7・5-kWと22kWをラインアップする。オールインワン型でかつ、従来品より大きな出力の市場に本格進出すべく、競合品と差別化を図った戦略商品だ。屋内で設置場所が確保できず、ガス発生装置の導入を断念していた顧客に提案して業容を拡大している。

高温環境下で連続運転、静音性も高めて屋外型を実現

ガス発生装置事業は、原料空気を供給するコンプレッサ内蔵のオールインワン型を求める顧客ニーズにいち早く応えたのが起点となった。市場拡大で競争環境は激化しているものの、同社は出力11キロワット以下で国内シェア約35%を確保。特に出力1.2キロワット以下を得意とする。

屋外型ガス発生装置「GENEーBASEシリーズ」は3機種をラインナップ
屋外型ガス発生装置「GENEーBASEシリーズ」は3機種をラインナップ

「GENE-BASEシリーズ」は窒素ガス、酸素ガス、CDA(クリーンドライエア)を発生させる3機種があり、出力は2タイプ。屋外設置を可能にした点にブレークスルーポイントがある。開発は屋外型コンプレッサで国内トップ企業の北越工業とタッグを組み、互いの強みを持ち寄ってガス発生ユニットとコンプレッサのどちらにも最適な新たな内部構造を考案した。気象庁が記録する国内の観測史上最高気温41・1度Cより高い45度Cの環境でも連続運転できる。騒音値は普通会話レベルの60デシベル以下と静音性に優れ、屋内型と同等サイズで屋外設置を可能にした設置自由度が高い戦略商品を実現した。
ガス発生装置は空気から純度99・999%などの高純度の窒素ガスなどを精製できる。年間コストはボンベ購入の10分の1以下。可搬式液体窒素の購入と比べても5分の1以下と安価だ。ただ、工場の屋内などに設置場所が無く、導入を断念するケースも多かった。熱対策で簡易建物や倉庫を用いた屋外設置を試みた案件もあるが、従来品は電話のベル相当の70デシベル以上で防音壁も必要となる。設置費用が跳ね上がり、コストメリットが失われてしまったという。しかし、裏を返せば、「相当に静かで、外に設置できる装置を開発できれば、導入を断念したお客さまに喜ばれる。さらに新しい市場も開拓できる」(矢嶋宏光取締役)と、開発に着手した。

静音化によって屋外にも設置しやすくした(手前が同装置)
静音化によって屋外にも設置しやすくした(手前が同装置)

ガス発生装置で精製した窒素ガスは酸化防止用途で多様なモノづくりに活用される。電子部品の基板実装工程での酸化皮膜形成の抑制、ペットボトルなどの樹脂製品の成型工程の焼け焦げや材料変質防止。熱処理、レーザー加工などでも使われる。近年は惣菜や加工食品の酸化防止で賞味期限を延ばしておいしさも長持ちさせる窒素ガス置換包装でも注目され、食品ロス低減にも貢献する。酸素ガスはウナギやタイなどの陸上養殖の酸素富化、種苗生産、河川や池などの水質改善などに用いられている。

異業種連携、侃々諤々の議論で導いた新構造

過去、屋外型の発生装置の開発を断念していたのは、ひとえに熱対策の難しさにあった。コンプレッサはオールインワン型の装置全体から見ると熱の発生源でもある。風の流れなどを考慮し、しっかりとした冷却の仕組みを作れなければ、故障に繋がり、ガス精製能力にも影響を及ぼす。船井厚志フローシステム事業部長は「熱の問題で何度も痛い目に遭った」と振り返る。ここを屋外コンプレッサの最大手と組むことで解決した。ただ、産学連携などの実績は多数あるもののコフロックにとって、異業種連携は初めてだった。オールインワン製品の開発では構成機器間のすり合わせも重要となるが、当初は設計思想の違いから意見がぶつかることも多かったという。
例えば、窒素ガス発生ユニットは原料となる空気(酸素濃度約21%)から窒素だけを取り出し、不要となった酸素濃度が高い空気(同約28%)を装置の外に排出する。この酸素リッチで窒素の割合が少ない空気をコンプレッサが吸い、再び同ユニットに供給すると窒素精製能力が下がる。実証実験を重ねてコンプレッサの吸気口の配置工夫でクリアしたが、この現象に対する技術見解も最初は食い違いがあった。
窒素ガス発生ユニット、コンプレッサの両方にとって重要課題の熱対策は、オールインワン装置の内部を内壁で完全に区分けした5BOX(ガス発生室、圧縮機室、熱交換機室、ドライヤ室、油分分離室)構造の考案で解決した。当初はどちらも装置内で風抜けが良い同じ場所への配置を求めていたが、5BOX構造でそれぞれの冷却効率を高め、構成機器それぞれが発する排熱の影響を互いに受けない仕組みにした。

GENEーBASEは内部を5つのBOX構造にした(写真はガス発生室)
GENEーBASEは内部を5つのBOX構造にした(写真はガス発生室)

風抜けが良いと言うことは音抜けも良くなってしまう。このためサイレンサーの性能をアップし、各室の機器それぞれが発する音同士を打ち消し合わせることで、静音性も高めた。「互いの常識が、相手にとって非常識となることが多かった。両社で侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を繰り返した。異業種の共同開発だったからこそ、新しい発想にたどり着けた」と開発を主導した矢嶋取締役は指摘する。

販売間口が拡大、脱炭素需要も捉える

設置場所の理由などで導入を諦めていた顧客から、屋外型ガス発生装置は総じて高評価を得ている。矢嶋取締役は「販売間口が広がった」と実感する。競合先だった産業用ガスボンベなどの販売業者が代理店として屋外型ガス発生装置を販売してくれるケースが増えるなど新たな動きも出てきた。山間部はじめ、産業ガスの配送が大変な地域からの引き合いも活発化しているという。
コロナ禍で厳しい時期はあったが、2021年度上期は半期で20年度の1年分の販売実績を計上し、下期も好調だ。コストメリットだけでなく、供給系統の切り替えや移設ができる柔軟性などが、据え置き型の大型ガスタンクからガス発生装置への乗り換えを促している。背景には市場ニーズの変化が加速し、さまざまな製品のライフサイクルが短くなり、生産ライン変更が頻繁になっていることがあるという。加えて、世界中がカーボンニュートラルにかじを切り、脱炭素実現に向けた機運が高まる中、デリバリーレスで運輸に関わる二酸化炭素排出量を削減できる点にも顧客の注目が集まる。コフロックは時代の変化も捉えることで、持続的成長を実現している。

経営者メッセージ

顧客の課題解決によって市場が広がったと小島社長
顧客の課題解決によって市場が広がったと小島社長

創業以来70年余り、「温故知新」の企業理念のもと、先人に学び、知識を深め、そして脈々と受け継がれてきた「お客さま第一主義」を貫いてきたことが当社の強みだ。
顧客に寄り添い、抱えている困りごとを常日頃から共有し、京都企業の特徴でもある「独創性」とチャレンジ精神をもって、一緒に課題を解決してきた。この想いが業界初の屋外型ガス発生装置「GENEーBASEシリーズ」にも込められている。お客さまの導入障壁となっていた設置場所確保という課題をクリアし、他社製品と比べて競争優位性を高めたことで、食品、電子、プラント、陸上養殖などにマーケットの裾野が広がった。
今後もお客さまと行動を共にしながら、常に顧客視点で事業に取り組んでいく。

企業情報

▽企業名=コフロック株式会社
▽代表取締役社長=小島 望
▽所在地=京都府京田辺市草内当ノ木1-3
▽設立=1974年7月
▽売上高=非公表
▽従業員=211人

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