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最終更新日:令和5年3月15日
monotone technologyは無線通信機能を備えたワイヤレスの水素イオン指数(pH)計を開発、販売している。当初はソフトウエアの受託製作がメインだったが、2017年に経営革新計画の認定を受けたのを機に独自製品の展開に大きくかじを切った。
創業者の小島淳二社長は堀場製作所の出身。長年、研究開発に携わったが、病をきっかけに退職し、起業した。現在は「センシング技術とデータ解析技術の融合」を掲げ、電気化学センサや光関連センサ、応用製品の開発・製造・販売を手がける。3Dプリンターで基板や筐体を自作するなど工夫を重ね、当初のターゲットだったラボ向けから用途を広げながらモバイル測定の普及に努めている。
ワイヤレスケミカルセンサシステム「pHAI」はBLE(低電力ブルートゥース)無線規格を採用し、スマートフォンやタブレットで本格的なpH測定ができる。計器本体とセンサをワイヤー接続していた従来のpH計とは異なり、小型のワイヤレスにしたことで、密閉容器内での測定や電源のない場所での測定も可能になった。
ワイヤレス化で作業を容易にしたpH測定装置「pHAI」
さらにセンサデバイスのガラス電極にインピーダンス変換アンプとBLE無線基板を搭載し、高速応答も実現した。水道水のような希薄溶液の測定では、従来のpH計で90秒程度かかっていたのに対し、わずか5秒で測定できるという想定外の効果も現れた。ガラス電極と水との間に高インピーダンス(抵抗)が発生するのがこれまで測定に時間がかかっていた理由。pHAIはノイズを抑えるためにインピーダンスを調整できる変換アンプを搭載したことで、大幅な測定時間の短縮につながった。
当初、センサと無線デバイスを組み合わせたラボ用「pHAI-Labo0100」は価格を付属品等込みで、1台15万円程度に設定する予定だった。しかし「高すぎる」という商社などの声を聞いてコストダウンを推進。2019年11月にデバイスのみで1台8万円で発売した。
ラボでの試験の様子
Labo0100はアンドロイドのスマホやタブレットに無料アプリをインストールするだけで、モバイル計測が可能になる。アプリからの簡単な操作でチャートを表示、測定状況を“見える化”できる。さらに高機能な測定を望む場合は、機能制限のないフルスペックのアプリをあらかじめインストールした専用タブレットも用意する。
ワイヤレスケミカルセンサシステム「pHAI」は利便性を追求した。「前職でワイヤー付きのセンサを使っていたが、実験などの作業でワイヤー線が邪魔になって仕方なかった」と小島社長は苦笑する。
測定データは有線で表示器に表示されるだけで、それを自身で記録しなければならない。実験中は長時間席を外すことができず、行動範囲はワイヤーの範囲内に限定される。実験室にはさまざまな実験装置、器具が並んでおり、作業中にワイヤーを引っかけてビーカーを転倒させることもあった。臭気の強い液体を測定する場合はドラフトと呼ばれる狭い換気室内にセンサを持ち込まなければならず、測定は不便を極めた。
小島社長自身の体験を製品開発に生かした
前に勤務していた会社でも自身が使うセンサの無線化を試みたが、当時は無線機の性能が悪く、装置が大きい上に無線通信できる距離が約5メートルと短く、使い物にならなかった。無線デバイスの機能が進化した今も、実験室ではワイヤレス化が進まず、不便な状況は続いている。「実験室の作業性を高め、事故の要因をなくしたい」という小島社長の思いが「pHAI」にはこもっている。
この思いに賛同する形で、小島社長と同じ堀場製作所に勤めていた2人が参画し、センサ、データ解析、モノづくりなどの技術力を合わせて製品開発に挑んだ。
pHAIを発売以来、ラボ用に的を絞って普及を図ってきた。21年6月には普及機として「pHAI-Ent0100」を発売した。価格は4万5000円。無線通信機能や高速応答性は上位機種を受け継ぎながら、ボディの大部分をガラスからプラスチックに変えてコストダウンを実現した。Entは扱いやすく小回りが利く。上位機種と同様に有線式で測れなかった場所での計測を可能にする。計測対象の液体は限られるが、pHAIシリーズを手にし、実際に使ってもらう「きっかけづくりの機種」という位置づけだ。
普及モデルの「pHAI-Ent」
ただ、ワイヤレスの利点を訴求し、拡販の起爆剤として低価格の「pHAI-Ent」を投入するなど策も講じるが、ワイヤー付きのpH計からの置き換えが進んでいるとは言いがたい。小島社長は「潜在ニーズはあるが、ラボ用市場の開拓には時間がかかる」と見て新規市場に目を向けている。
「pHAI」を出展したある展示会で、自動車電装品メーカーから「新規事業として考えている水質測定に使いたい」というオファーがあった。また、あらゆる分野で排水管理の重要性が高まっている。小島社長は排水のpH測定用に市場を見出した。すでに医療システム販売会社と販売契約を締結し、医療機関の排水管理用としての展開が始まっている。
さらに測定面がフラットなセンサの開発にも取り組む。フラットな面を食品や身体の表面に当ててpH測定ができ、食品の鮮度や肌の状態を数値化できる。
本社近隣で開かれたイベントにフラットセンサを持ち込み、測定デモンストレーションを実施したところ、肌のpH測定は予想を上回る人気を博した。フラットセンサは低コスト化を図りながら開発を進め、22年1月の発売を予定する。今後は光センサの開発も進め、非接触、非侵襲で計測できる光の利点を生かして、美容、健康、食品分野向けの製品を増やしていく。
今まで高級機種の大きな測定装置でしか測れなかったものを、センサ、無線通信、データ解析などの最先端技術を組み合わせて、小さく安価な装置でいつでもどこでも測定できる「モバイル・メジャーメント・スタイル」を作り上げたいというのが事業を始めたきっかけだ。
私を含め開発陣は皆トップレベルの分析装置メーカーで30年以上の経験を積んでおり、電気化学センサ開発の技術には自信を持っている。勤務条件は各人の希望に応じ、自由な雰囲気で仕事を進めているが、それぞれプロ意識を持って取り組んでいる。社長在任中に、世の中に役立つ製品を普及させることで、企業価値を可能な限り高めたい。
▽企業名=株式会社monotone technology
▽代表取締役社長=小島 淳二
▽所在地=京都府相楽郡精華町光台1-7けいはんなプラザ ラボ棟5階
▽設立=2016年3月
▽売上高=4000万円(2021年3月期)
▽従業員=4人
近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
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