トップページ > 施策のご案内 > ものづくり産業支援 > 関西ものづくり新撰 > 新撰エモーショナル > 株式会社ヒラカワ

潜熱回収技術生かし温水器の運用コストを大幅削減、顧客満足度アップ
~株式会社ヒラカワ~

最終更新日:令和5年3月15日

ヒラカワは1912年創業のボイラ専業メーカー。日本初の炉筒煙管ボイラの開発をはじめ、これまで蒸気ボイラや温水器など数多くの熱源製品を世に送り出し、人々の暮らしを支え、産業の発展に貢献してきた。100年を越える長い歴史の中で培った技術やノウハウ、先人のものづくりスピリットを受け継ぎながら、時代の変化に応じた製品をつくり、サービスも進化させてきた。
社会の環境意識の高まりから現在は、省エネやコスト削減を後押しするユーザーソリューションにも力を入れている。温水器の運用コストを大幅に減らせる「UG温水トータルシステム」は、ユーザーの取り組みをけん引し、顧客満足度を高める切り札として提案している。

開発、製造拠点の滋賀事業所(滋賀県野洲市)
開発、製造拠点の滋賀事業所(滋賀県野洲市)

1年で22%の燃料代削減を実現

UG温水トータルシステムは、ヒラカワの潜熱回収温水器「UltraGas(ウルトラガス)」の潜熱回収特性を最大限に引き出し、より高効率での運用を可能にした温水熱源システムで、2017年に販売をスタートした。
潜熱とは、水蒸気が水になる凝縮や、水が氷になる凝固など、物質の状態変化の際に出たり、使ったりする熱を指す。温水器の燃焼ガスに含まれる水蒸気が温水器の高性能伝熱管での熱交換により凝縮され、水になった瞬間に熱があふれ出る。このエネルギーを利用するのが潜熱回収のメカニズム。この技術を取り入れたウルトラガスは潜熱回収時最大105%(都市ガス13A、低位発熱量基準)という高い熱効率を達成している。
ただ、これは温水器単体の性能で、ヒラカワではもう一歩踏み込み、UG温水トータルシステムにより省エネを提案している。温水器単体ではなく、UG温水トータルシステムにてユーザーが既に持っている周辺設備も含めて制御することにより、効率化を極めてもらおうというアプローチだ。
ユーザーの周辺設備には新たにセンサを取り付け、ネットワーク化して一つの温水熱源システムとして構成し直す。ユーザーの使い勝手や使用条件を考慮し、送水の温度や流量を一括制御して、必要以上に燃料や電力を使わないようにする。場合によっては温水器をダウンサイジングしたり、インバーターポンプに取り換えたりする提案も行う。こうして燃料や電力の使用を最適化し、高効率化を手助けする。

潜熱回収温水器「UltraGas」
潜熱回収温水器「UltraGas」

UG温水トータルシステムを導入した農業生産法人の事例では、1年で22%の燃料代削減を実現した。1立方メートル当たりのガス料金を60円として換算すると、年間約2700万円もの削減になった。導入前は蒸気ボイラのため、燃料代とは別に必要だった水処理の薬品代や管理の手間も減らせた。導入時は温水器だけでなく、システム全体の更新となるため、イニシャルコストはかかる。だが、平均3-4年で回収でき、後々大きなメリットとなって還元される。

周辺設備までコントロールして省エネ極める

ボイラ業界では通常、ボイラや温水器の販売は機器単体を売るだけで、ユーザーの持つボイラや温水器の周辺設備にまで関与することはない。機器の設置も設備施工業者に任されている。このため、ユーザーの既設のポンプや制御弁など周辺設備は、設備ごとにバラバラに制御されているケースがほとんどであり、ここにUG温水トータルシステム開発のヒントがあった。
ボイラや温水器を運用する際、ユーザーも必要な温度が出ていて、機器が動いていれば、それで“是”としてしまいがちだ。だが実際には、ボイラや温水器が大き過ぎて無駄な燃料と電力を消費していたり、必要以上に高い温度で送水していたりすることがある。周辺設備の制御が効いていないことも多い。ユーザー側のシステムやフロー、その負荷状況によっては、高機能の潜熱回収温水器を導入してもせっかくの特性が最大限に生かされず、高効率な運用ができないこともしばしばで、これらが課題となっていた。

課題の中に平川社長は広がる市場を見いだした
課題の中に平川社長は広がる市場を見いだした

 こうした課題は熱源システム全体を専門家がしっかりチェックしないと、気づかない。さらには「周辺設備までコントロールして行う省エネは、誰も手をつけていない市場で、ネタは世の中にいくらでもある」(平川晋一社長)ことが分かった。課題を洗い出すうち、眼前に大きなマーケットが広がっていることを知った。
開発自体は比較的スムーズに進んだ。これまで時代の変化に合わせて常に最新技術を取り入れ、ボイラや温水器をバーションアップしてきた歴史があり、老舗メーカーとして技術の蓄積もあった。設計から製造、施工に至るまで人材もそろっていた。中でも、機器設置の工事・施工を行う部門を持っている点が、大きなアドバンテージだった。UG温水トータルシステムにはウェブクラウド型の遠隔監視など先進のIoT技術も搭載している。ユーザーはリモートで温水熱源システムの状態監視や、設定変更などをパソコンやスマートフォンを使って行える。これも自前で開発した技術だ。
他に任せきりにせず、実際に工事・施工することで、一朝一夕には得られないノウハウ・技術が身についた。これらは開発後の営業提案やユーザーとのコミュニケーションにも大いに役立っている。

長く付き合える関係を大事に、ヒラカワファンを増やす

UG温水トータルシステムは既に10件あまりの導入実績がある。温水を使用しているユーザーなら、どのような用途でも使用可能で、全国で常時行っている無料の省エネ診断などをきっかけに、ユーザーを拡大している。

ヒラカワのUGトータル温水システム
ヒラカワのUGトータル温水システム

今後、普及が見込まれるのは、納入実績のある施設園芸の栽培用暖房や排ガス(二酸化炭素)による農作物の生育促進の分野。さらにビル、ホテル、スーパー銭湯、病院、スポーツジムなどの暖房・給湯向けが候補に挙がる。これらは実績分野として継続的に攻めていく構えだ。地域冷暖房の暖房熱源、ガス会社のLNG気化器用途などへの展開も計画する。現在、計画中の水素気化器向けや、水族館向けなども有望な市場。分野によってはエンジニアリング会社と協業し、エネルギーマネジメントシステムとして展開していくことも視野に入れている。
「地域冷暖房などビッグプロジェクトの受注はもちろん狙う。だが、わが社が何より大事にしているのはストックビジネスのように顧客と長く付き合い続けられる関係」と平川社長は言い切る。日本は成熟社会。ヒラカワも長い歴史の中で、たくさんのユーザーにボイラや温水器などの製品を納めてきた。「それらのお客さまから『また、次もヒラカワの製品を使いたい』と言ってもらえるような会社であり続けたい」(平川社長)と襟を正す。これからもユーザーの要望に応えることを第一に、同社の「ヒラカワファンを増やす」取り組みを真摯に、地道に実践していく。

経営者メッセージ

当社は2022年4月に創業110周年を迎える。これまでも最新技術の開発やモノづくりにこだわってきたが、カーボンフリーの社会を目指していくに当たって、今後は水素など新たなエネルギー分野にもチャレンジしていこうと考えている。そして、これから何十年たってもお客さまから「信頼できる会社」と言われるように、従業員と気持ちを一つにし、研さん・努力を続けていく。現在、全国に20カ所ある営業所を、半年に1カ所ずつ増やしていっている。接点が増えることで、お客さまとより身近にコミュニケーションできるようにしていく。「お客さまの満足度が社の売り上げであり、利益である」。こうした社風づくりにも力を入れる。

企業情報

▽企業名=株式会社ヒラカワ
▽代表取締役社長=平川 晋一
▽所在地=大阪府大阪市北区大淀北1-9-5
▽設立=1912年4月
▽売上高=非公表
▽従業員=290人

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
住所:〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
電話番号:06-6966-6017
FAX番号:06-6966-6080
メールアドレス:bzl-kin-shinsen@meti.go.jp