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若手のアイデアが製品を変えた/ユニット化で様々なニーズに即応する2液ディスペンサ
~株式会社ナカリキッドコントロール~

最終更新日:令和5年3月15日

ナカリキッドコントロールは液体定量供給装置(ディスペンサ)の専門メーカーとして存在感を示す。ゴマ粒大にも満たない微量の液体吐出から、バケツ1杯分相当の大量吐出まで、対応できる製品の大きさはさまざま。小型・大型、1液・2液タイプの総合的なラインアップをそろえる国内メーカーは同社だけだ。
ディスペンサは吐出する液体の特性や量で仕様が異なる。製品は一品一様が基本となるため、汎用品のような製品展開は難しかった。そこで同社は製品標準化の取り組みを推進し、構成部品をユニット化した「微少量用2液型ディスペンサ ニューⅠ/Ⅱ」を開発。顧客対応力を向上し、販路拡大を狙っている。

微少量用2液型ディスペンサ ニュー
微少量用2液型ディスペンサ ニュー

部品点数の削減でユーザーニーズに迅速対応

ディスペンサは決まった量の液体を安定的に吐出する。近年は自動車やスマートフォン、ヘルスケア機器の分野で需要が増加。特に自動運転技術の開発が急進する自動車分野はセンサーの防水、放熱加工などのため、「ディスペンサを使う場面が増えている」と仲昌男社長は解説する。
ナカリキッドコントロールの「微少量用2液型ディスペンサ ニュー」は主剤と硬化剤を混ぜて吐出する2液タイプのディスペンサ。ポンプ本体や駆動部、さらにバルブなどを要素ごとにユニット化し、液体の粘度を問わず、さまざまな用途に合わせて素早く構成できる仕組みを確立した。
液体の量や粘度の違いによって100点程度あった部品の組み合わせをユニット化によって30-40に削減しており、短納期化と従来製品比約20%の低価格化を実現している。
吐出機構はポンプ内部の体積の変化によってあふれた液体を吐出する仕組みのプランジャー方式を採用した。ポンプ内に空気が残ると吐出量が変わってしまうため、プランジャーの動作軸上にはポンプ内の空気を自動排出する「エア抜き穴」を設置。より高精度な吐出量のコントロールを可能にした。

「まずは製品を見てもらいたい」と語る仲昌男社長
「まずは製品を見てもらいたい」と語る仲昌男社長

昨今は精度とともに環境性能も注目される。1液タイプは硬化炉で固めるのが一般的だが、硬化剤を用いる2液タイプは炉が不要。「二酸化炭素を出さないため、需要が増えている」と仲社長は強調する。さらに同製品は2液を混合する「スタティックミキサ」をポリプロピレン(PP)製の交換式に変更し、溶剤による洗浄を不要にして廃液を出さない仕様にするなど、環境面でもユーザーの利便性を追求した。
製品は2液の配合比が固定の1軸タイプ「Ⅰ」と、変えられる2軸タイプ「Ⅱ」をラインアップし、フラッグシップ機種として、さまざまな市場へ展開を図る。

若手中心の新発想で開発推進

ナカリキッドコントロールは接着剤や樹脂の吐出で使われるディスペンサを得意とする。電子部品の基板接着や絶縁材の塗布といった微細領域向けの装置から、ロケットの耐熱板の接着用など大型の装置まで納入実績も幅広い。
一方、ディスペンサは一つの現場で長く使われる。仕様は用途や現場ごとに異なり、長期間使用されることを前提に、頑丈な“つくり”になりがちだ。陳腐化した機能の省略や新たな樹脂への対応など、おのずと開発は機能改善が中心になっていた。他分野への販路拡大にはオーバークオリティーになるケースも多く、「営業活動の展開先が狭くなっていた」と仲社長は語る。
そこで2017年、戦略製品を開発する「製品標準化(SoP)プロジェクト」をスタートした。プロジェクトチームのメンバーは営業、製造、技術、資材部門から20代後半から30代前半までの若手4人。技術部内にもともと開発課はあったが、ベテランが中心となる従来のスタイルではなかなか既成概念を壊せない。そこで若い発想力に試みを委ねた。

若手社員のアイデア、意見を開発に取り入れている
若手社員のアイデア、意見を開発に取り入れている

チームは種類が膨らんだ大手自動車部品メーカー向けの売れ筋製品をベースに仕様を精査し、用途とユニット化できる部品を整理した。常にユーザーの声を聞いている営業担当者がリーダーを務めることで機能面の課題解決も進んだ。
プロジェクトの始動に当たり、メンバー全員がプロジェクトの目指す姿-、「どのような製品を作るのか」、「この製品によって何が変わるのか」を朝礼で全社員に宣言していた。通常業務と並行しての開発。彼らの負荷は大きかったが、都度、ベテラン技術者が4人を支えた。「社内のバックアップ体制があったからこそ成功した」と、仲社長。取り組みに対して奨励金を出し、メンバーの労をねぎらった。
こうして「微少量用2液型ディスペンサ」は2018年10月、本格販売に至った。

カスタマーイノベーションセンターを技術の拠点に

CICに設けたショールーム
CICに設けたショールーム

ナカリキッドコントロールにおいて標準品と呼ぶ製品はこれまでもあった。ただ在庫を持てる量産品ではなく、“ベースモデル”的な位置づけでしかなかった。新開発のディスペンサはユニットによる対応範囲の広さと、短納期の実現によって、新たな市場を切り開く。「提案型の営業が展開できる」、仲社長は力を込める。
SoPプロジェクトの成功から、社内では意欲的な製品開発が増えた。既存製品では流せない高粘度の材料に対応するディスペンサや、生産効率化に寄与するディスペンサなど、テーマに応じてチームを結成し、顧客、素材メーカーなどのニーズに応える試みを続けている。
この拠点となっているのが2019年、本社隣接地に開設した「カスタマー・イノベーション・センター=CIC」だ。名古屋営業所(名古屋市中村区)のテストルームと同機能を有し、実機を使ってさまざまな試験ができる。接着剤や樹脂メーカーとの用途開発にも広く取り組んでおり、CICには最先端の技術情報が集まる。これを製品に反映し、既存ユーザーへの新技術提案や医療分野などターゲット市場を攻略する。

顧客向けにテストルームの準備も万全
顧客向けにテストルームの準備も万全

さらにグローバル展開も本格化する。「日本の樹脂技術は欧州より進んでいる。日本で通用すれば海外でも大丈夫」と仲社長は断言する。狙いはインドや東南アジア市場。語学に長けた社員を採用するなど体制づくりを進めており、自動車分野を中心に攻勢をかける。
同社は2021年10月に設立40周年を迎えた。21年9月期の売上高は約20億円。「次の10年間で少なくとも40億―50億円を達成したい」と仲社長。プロジェクトの成功を次なる飛躍への第一歩とし、大きな目標に向けて歩みを進める。

経営者メッセージ

当社は誠意と技術、実行、合理性の四つの信条を大切にしている。社員がのびのびと意見を言える風土があり、動きやすい会社だ。思考が柔軟で、行動的な人を求めている。
これからは今まで以上に工業デザインの考えを製品に取り込んでいきたい。ユーザーに使いやすさ、わかりやすさを提供するために大事になってくる。かわいがりたいと思うような機械にしなければならない。顧客目線でどのような付加価値が付けられるか。
社会への付加価値の提供も考え、コトづくりができるクリエイティブな人材を集めていきたい。

企業情報

▽企業名=株式会社ナカリキッドコントロール
▽代表取締役社長=仲 昌男
▽所在地=大阪府守口市大日町2-18-1
▽設立=1981年10月
▽売上高=20億円(2021年9月期)
▽従業員=79人

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
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