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既成概念の脱却でゴム製品の無限の可能性を探求
~錦城護謨株式会社~

最終更新日:令和5年3月15日

錦城護謨はシリコーンゴムなど工業用ゴム・樹脂製品を製造・販売する工業品事業と土木事業を展開している。土木事業は軟弱地盤の改良を手がけ、国内シェアは約70%。さらに近年、「視覚障がい者歩行誘導ソフトマット」を商品化し、福祉事業にも進出した。
「オンリーワン技術を持つ100年企業」を目指す同社が今、挑戦しているのが、「KINJO JAPAN(キンジョー ジャパン)」ブランドの確立だ。2020年にシリコーンロックグラス「E1」を発売し、BtoC市場に参入した。長年培ってきたノウハウと、柔軟性が高く、環境に優しいシリコーンゴムの特性を生かした製品で、既成概念を壊し、ゴム製品の可能性を追求する。

ゴム製品の可能性を追求する錦城護謨
ゴム製品の可能性を追求する錦城護謨

ガラスの良さをも表現したシリコーンゴム製ロックグラス

見た目はガラス製のグラス。手に取って初めてその異なる素材の質感に驚く。「KINJO JAPAN E1」はゴム製品を扱う同社技術の粋を凝らした同社初のBtoC製品だ。シリコーンゴムで表現したガラスと同等の透明感と重量感、日本的な切り子柄の意匠が相まって高級感を演出する。衝撃で割れることがなく、キャンプなど野外でも高級感のある食器を使いたいという層のニーズにも応える。

ガラス製と同等の透明感を実現した
ガラス製と同等の透明感を実現した

E1は射出成形や圧縮成形されるレンズなど光学デバイスに用いられる高透明液状シリコーンゴムを採用している。このゴムは光透過率が高く、耐熱性に優れ、透明樹脂で懸念される経年劣化の黄ばみも発生しにくい。65度Cで紫外線を6000時間照射する光安定性試験、130度C環境6000時間の耐熱試験をクリアしている。
もちろん材料が良くても製品は完成しない。デザイナーと組んで生み出した形を、長年培った成形ノウハウでクリアに、細部まで丁寧に仕上げた。
高級感を持ちながら割れないというE1の特徴はアウトドア志向のユーザー以外も捉える。「子どもや高齢者がいる家庭の関心が高い」と太田泰造社長。滑りにくく持ちやすい点や割れない安心感が需要の背景にあると分析する。

八尾市のプロジェクトの後押しで4人のプロジェクトチーム結成

E1の開発は八尾市(大阪府)のものづくり支援プロジェクトがきっかけだった。同社が自社ブランドの立ち上げを模索する中、2019年、八尾市が市内のものづくり技術を世界に広める支援事業「YAOYA PROJECT(ヤオヤプロジェクト)」をスタートさせた。クリエイターが新しい製品を企業に提案し、合意に至れば、開発を進めるのがプロジェクトの流れ。製品化にかかる費用は開発のスタートから半年後にクラウドファンディング(CF)で調達し、さらに台湾の展示会に出品するのが最終目標だった。
プロジェクトに参加した同社は数人のクリエイターから自社の強みを生かす29品目の提案を受けた。透明なシリコーンゴムを使ったロックグラスも提案の中にあった。これを選んだ理由は二つ。半年後のCFまでに商品化できるめどが付けやすかったことと、市場が見込めることだった。ロックグラスはどの家庭にも一つや二つは必ずある。
開発に先駆け、工業品事業本部生産本部の副本部長をプロジェクトリーダーとする4人のチームを結成した。工業品事業本部からは技術に精通する課長クラスが参加。さらに土木事業本部からも新製品開発に意欲的な係長二人を加え、開発のかじ取りを任せた。
技術的な課題は商業施設の天井照明に採用されたゴム技術を応用することで解決した。ゴムの成形は金型表面の仕上がりがそのまま転写される。表面の粗い金型ではクリアな質感が出ないため、職人技で鏡面状になるまで丹念に仕上げた。

製造には職人技も生きる
製造には職人技も生きる

最も難しかった短期間での製品化はデザインから設計、最終試作、生産まで1日単位で工程を詳細に調整。過去に携帯電話用の防水ゴム部品の量産を短期に手がけた経験が今回の開発に生きた。
CFにはギリギリ間に合った。だが、この間にも品質を高めるため、金型の形状を大きく変えた。中途半端な商品をつくりたくなかった。「新しい錦城護謨、新ブランドのフラッグシップとなるため妥協したくなかった」と太田社長は振り返る。

クラウドファンディングで自信をつけ高評価の海外販売も視野

初めてのCFは分からないことばかりだった。「本当に売れるのか」、太田社長は半信半疑だったが、公開2日目で目標設定の30万円を超えた。達成率は900%。ツイッターで14万「いいね」を獲得し、話題になった。「OEM(相手先ブランド生産)メーカーではあり得ないミラクルが起きた」と太田社長。同時に世の中に役立つモノとして、「自分たちの商品に間違いはない」と確信した。

奇跡が起きたと、太田社長
奇跡が起きたと、太田社長

2021年秋にはシリコーンロックグラスの新色を加えて2回目のCFを実施。前回を大きく上回る約500万円を調達した。CFの経験は展示会や販売、会員制交流サイト(SNS)での情報発信にも役立っているという。
今後は実際に目にし、触って品質の良さが伝えられるリアル展示会への出展を増やし、コロナ禍の停滞を取り戻す。国内向けには食卓のさまざまなシーンに合う商品群を追加する。さらに22年度は海外の展示会にも積極的に出展し、販路を開拓する。「KINJO JAPAN」ブランドだけでなく、錦城護謨のコーポレートブランドを戦略的に情報発信していく考えだ。
同社の売上高はOEMによるBtoB事業が大半を占める。炊飯器など家電部品や自動車のブレーキ、コピー機・プリンター部品、医療機器など幅広いゴム関連の重要部品を製造する。「KINJO JAPAN」ブランドの展開には従来と異なる業界に顧客が広がる期待がある。今後もシリコーンゴムを使った食器や生活雑貨品などさまざまなBtoC向け製品の市場投入を考えており、太田社長は「BtoCからBtoBに新たなビジネスを循環させたい」と力を込める。

経営者メッセージ

社会が要求するモノをつくり、提供することが当社の使命。この中で我々は進化しなければならないと考えている。国内の人口が減少し、市場は縮小傾向にある。メーカーは単に作り出すだけでなく、使うシーンまで提言していくことが求められている。これを体現するのが「KINJO JAPAN」だ。
日本文化を発信しつつ、良い商品を長く使い続けてもらう。当社のあるべき姿をこのブランドを通じて国内外に発信していきたい。新たにモノを産み出す事で「世の中の当たり前を変える」という想いを持ち、社会に貢献する会社であり続ける。

企業情報

▽企業名=錦城護謨株式会社
▽代表取締役社長=太田 泰造
▽所在地=大阪府八尾市跡部北の町1-4-25
▽設立=1936年5月
▽売上高=74億円(2021年10月期)
▽従業員=293人

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近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
住所:〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
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メールアドレス:bzl-kin-shinsen@meti.go.jp