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最終更新日:令和5年3月15日
甲南設計工業は産業機械設計・製造のエキスパート集団として現場の課題に解決策を示す「工業のシンクタンク」(澤田昌浩社長)として、その役割を担っている。
1968年の創業よりプラスチック関連装置や一般産業機械装置、省力化機器などを中心に設計・製造から販売までを一貫して手がけ、常に時代に応じた技術革新に挑むことで事業を強化、拡大してきた。モットーは「発想をかたちに」。常に柔軟な発想で新しいシステムを開発・提案している。
現在、販路開拓に力を注いでいるのが独自方式のプラスチックシート巻取機だ。製造現場におけるプラスチックゴミの排出削減に加え、作業者の安心・安全性を向上する装置として納入先からの評価は高い。
社員一丸となって課題解決に挑む
甲南設計工業が展開する「全自動2軸ターレット式プラスチックシート巻取機」は、プラスチックシートを巻き取る際に、巻き芯への両面テープの貼り付けを必要としないテープレス仕様。プラスチックシートを無駄なく最後まで使い切ることができるのが特長だ。
両面テープを使う従来型の巻取機には、プラスチックシートの排出ゴミにテープが混入するためリサイクルできないという課題があった。そのため産業廃棄物として扱わなければならず、ユーザーがこの廃棄コストを負担していた。さらに巻き取りの際には作業者が回転するプラスチックシートに手を添えサポートする必要があり、常に巻き込み事故やケガと隣り合わせだった。
全自動2軸ターレット式プラスチックシート巻取機は、これら作業者の手作業を全て自動化した。正巻き・逆巻きの切り替えも機械を停止することなく操作が可能。巻き替え時には巻き芯以外の部品交換も不要ないため、段取り作業時間を大幅に短縮できる。これまで熟練作業者でも2-3分程度を要した巻き替え作業が20秒程度で行えるという。巻き芯径3-8インチを用意し、巻径は最大で直径1200ミリメートルまで、シート幅は1500ミリメートルまでに対応。シート厚は0.2ミリメートルから2.0ミリメートルまで。ライン速度は最大1分あたり50メートルを実現し、生産性を高めた。
安全性、生産性を高める全自動2軸ターレット式プラスチックシート巻取機
中堅・中小企業の人材確保が難しい中、限られた人員でいかに生産効率を向上するかが、あらゆる製造現場での課題となっている。同機はこのような時代の流れにおける顧客現場のニーズに応えるべく2018年に開発した。
同社は創業当時、水道管などに使用する樹脂パイプの加工機械を中心に手がけていた。樹脂パイプを丸鋸で切断する際には、どうしても切り粉が発生する。この切り粉の課題解決を図るため、1974年に国産初の切り粉レス樹脂パイプ切断機を開発。これを機にその後、多様な省力化・自動化機器を開発、展開していった。バブル経済期以降、2013年頃までは顧客ごとのオーダーメイド機械の受注生産が事業の柱となっていたという。
しかしながらこういった、いわゆる“一品もの”の受注生産は、経営面において負担が小さくない。加えて時代の流れによる樹脂パイプの需要衰退も重なって、同社にとって次の新たな展開が急務となっていた。
オーダーメイド機の受注生産から自社製品製造にシフトしてきた
そこで着目したのが、プラスチックシートだった。プラスチックシートを加工する際に不可欠となる“切る”“巻く”工程を自動化する機器・設備の開発にターゲットを絞った。樹脂パイプ切断機の開発で培ったノウハウを生かして、まずはプラスチックシートの切断機を開発。そしてその1―2年後には巻取機「全自動2軸ターレット式プラスチックシート巻取機」も開発した。
薄くて“コシ”がないシートは、巻き始めたときに端が紙のように捲れ上がってしまう。開発にあたってはいきなり難題に直面したが、巻き取り方式を抜本的に見直すことにより、乗り越えた。これまでは丸ベルトを連ねて巻き取っていたが、同機ではこれを帯状のコンベアベルトに変更。ロールの芯間の距離の精度を高め、シートの“ズレ”も解消した。
困りごとを解決する機器開発がポリシーと澤田社長
開発のきっかけは顧客の声にあったという。澤田社長は「お客さまの課題を聞き、困り事を解決できる機器・システムを開発することが当社の製品開発のポリシー」と強調する。常に新しいメカトロ技術に挑戦し、課題を着実に解決することで、顧客との信頼関係を築くのが同社の事業スタイルだ。
「全自動2軸ターレット式プラスチックシート巻取機」は、食品容器などの食品業界向けが56パーセント。クリアファイルなどの文具・生活雑貨分野向けが24パーセントという納入実績で、現在はこの2分野向けが事業の柱となっている。「納入先からは作業の安全性向上に加えて、作業負荷の低減が図れる。この分を他の仕事に時間を割り当てられるといった評価をもらっている」と澤田社長は説明する。
ただ、同機の開発は決して平坦な道ではなかった。澤田社長は「開発には苦労した」と苦笑する。同社の製品開発については全て澤田社長が舵を取ってきた。今後もスマートフォンの液晶画面など、光学フィルム業界での市場開拓に加え、生分解性樹脂シートを活用する分野へのアプローチを視野に入れる。
光学フィルム関連については、既にシート切断機を中国の大手光学メーカーに納入済みであり、国内市場に向けてはこれからの展開。技術的な大きなハードルはないと見ており、参入のきっかけを探り、需要の拡大につなげる。さらにラインの高速化対応にも力を注ぐ。1分間に80メートルのシート巻き取り処理を可能とする装置のさらなるブラッシュアップに取り組み、顧客のさらなるコストダウンに貢献していく考えだ。
当社は「快適な作業環境をつくる」ことを不変のテーマとしたものづくりに取り組んでいる。創業以来、顧客に寄り添い、製造現場における課題解決を後押しする機械装置の提案を進めてきた。
近年、プラスチックゴミ問題の解決が世界的なテーマとなっているが、当社も時代の流れに合わせて、今後は生分解性樹脂シートの対応技術の向上に重きを置いた機器開発を進めてく。乗り越えるべき課題は決して少なくないが、チャレンジしていく。
そして次に、プラスチックシート巻き取りの高速化。巻き取りスピードの高速化は、不具合が生じた場合、ミスを肥大化させるリスクと表裏一体であるが、恐れずに取り組んでいく。
▽企業名=甲南設計工業株式会社
▽代表取締役社長=澤田 昌浩
▽所在地=兵庫県三木市吉川町金会1004-3
▽設立=1980年5月
▽売上高=約10億円(2021年3月期)
▽従業員=20人
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