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手軽に持ち運べ、気軽な操作で、本格的な漉きができる世界初のレザークラフト用皮漉機
~株式会社ニッピ機械~

最終更新日:令和5年3月15日

ニッピ機械は皮革加工機械を主力にする国内唯一のメーカーだ。皮革製品の製造におけるミシン以外の工程に関わる機械を幅広く手がけ、この事業分野が全社売上高の約60%を占める。
創業当時、身近にあった皮革産業に携わったのが皮革加工機械に軸足を置くきっかけになった。海外に販路を開いたのも早く、約50年前にさかのぼる。現在は海外24カ国に製品を展開し、グローバルに信頼される皮革加工機械メーカーとして活躍。長年培った技術と品質で、兵庫県の地場産業でもある皮革産業を支え続けている。近年、個人ユーザーに焦点を当てたレザークラフト用皮漉機「SKIMINI=スカイミニ」を市場投入。皮革産業の裾野の拡大を図っている。

レザークラフト用皮漉機「SKIMINI」
レザークラフト用皮漉機「SKIMINI」

世界一小さなレザークラフト用皮漉機「スカイミニ」

レザークラフトなど皮革を加工するためには素材を軽くし、加工しやすくするために皮を漉(す)く必要がある。個人ではこれまでは革包丁やピーラーなどを使って手漉きをするか、工業用の皮漉機で漉くかのいずれかの方法しかなかった。この漉き作業を家庭でも簡単・手軽にきるように開発したのが「スカイミニ」。世界一小さなレザークラフト用皮漉機として同社が初めて個人ユーザー向けに開発した製品だ。
機械サイズは幅33センチ×奥行き24センチ×高さ34センチメートル。A4ノートサイズ並みの設置面積で、コンパクトな卓上型に仕上げた。重さは10・5キログラムで、一人でも持ち運びが可能だ。ホビーユースを狙ったコンパクト設計ではあるが、耐久性のある本格的な漉き性能も備える。交換できる替え刃方式で、切れなくなれば刃を取り換えられるため鋭い切れ味を保てる。段漉き、斜め漉き用の“押さえ”などをオプションで用意しており、ユーザーのニーズに幅広く対応する。

ブランドを背負い、信頼と安心を魅力にする
ブランドを背負い、信頼と安心を魅力にする

一般家庭で導入する際に敬遠される要素はすべて取り除いた。電源は主電源と運転用スイッチの2段階方式、カバーを設けるなど、けがを防止する安全性にこだわった。高い静音性も特徴のひとつ。替え刃方式を採用することにより大きな音が出る刃を研ぐ機能をなくした。火花も発生しない。さらにデザインも選べるようにし、個人ユーザーが本当に必要とするスペックを追求した。
アフターフォローも万全だ。「機械が使えないときは機械と皮革を一緒に送って欲しい」と青田崇社長。社内で革に合わせて機械を設定し、使える状態にして返送するという。製品を売りっぱなしにするのでなく、ユーザーととことん膝をつき合わせることでメーカーとしての責任を果たす。ユーザーと製品、皮革業界に誠実に向き合うことで得てきた信頼や安心感を同社の魅力としてアピールする。

皮革産業を支え、皮革産業の発展、活性化のために

「皮革産業を支えるためにも研究開発を止めるわけにはいかない」と青田社長は強調する。価値観の多様化やマーケットの変化により、レザークラフトを楽しむ個人ユーザーが増えている。皮革産業の一翼を担う同社も業界活性化に一役買う覚悟を決めた。これまで工業用機械の生産ラインしかなかった工場内には個人ユーザー向け機械のラインを設置。家庭でも本格的な皮革製品作りを楽しんでもらえるよう、機器の開発を進めた。
皮漉機はおわん形状の刃物を回転させ革をそぎ落とす構造。発明以来、約100年間、この構造は変わっておらず、コンパクト化、軽量化を阻んできた。開発の中心となった青田社長は「この基本構造を変えないといけない」と考えていた。そんな折、たまたまテレビで流れていた電気シェーバーのCMに解を見出した。電気シェーバーのように刃物を平刃形状にする「揺動式駆動構造」が長年の課題をクリアにした。

よりよい製品を目指し、今も改良に取り組む
よりよい製品を目指し、今も改良に取り組む

刃物の選定にも時間を費やした。耐久性のある漉き加工を実現するために、材質や形状の異なる刃物を何種類も試した。漉き加工は刃物の選定だけでなく動作との相関関係を考えなければならない。さまざまな皮革材料を従来機と試作機で比較しながら試行錯誤を繰り返した。
工業用機械から必要のない機構や性能、仕様を省くことで必要最低限の機能を有したままコンパクト化、軽量化に成功するまで3年の月日をかけた。青田社長は「当初は業界内や社内でもネガティブな意見も大きかった」と振り返る。製品化の実現に向け、開発にどのような背景があり、どのようなニーズがあるのかを、社長自ら社員全員に丁寧に説明した。そして海外の競合他社も作っていない唯一の製品を完成させた。販売を始めてまだ2年足らず。今までになく、まだまだ進化を続けている機械だが、個人ユーザーに寄り添って改良を進めている。

「スカイミニ」を通じて世界中のレザークラフターと繋がる

趣味でレザークラフトを楽しむ個人が右肩上がりで増えている状況もあって、「スカイミニ」は2019年の発売以来、順調に販売台数を伸ばしている。世界初の個人ユーザー向けの皮漉機として、今まで敷居が高く、皮革製品の製作に興味はあっても二の足を踏んでいたユーザー層の製作意欲の喚起につながっているという。
現在の販路はインターネットの通信販売サイトが中心だが、個人ユーザーとの直接的な繋がりを最も重要と位置づける。「ユーザーが満足を得られるよう、作り手と使い手のコミュニケーションを積極的に持ちたい」と青田社長。

使い手とのコミュニケーションを大切にしたいと青田社長
使い手とのコミュニケーションを大切にしたいと青田社長

今後は個人ユーザーと距離が近く、機械に実際に触れてもらい、丁寧に説明する機会を作れるレザークラフトショップなどと連携して、販路を広げる。手軽に機械を使ってもらうため、サブスクリプション方式の導入なども検討していく構えだ。

経営者メッセージ

日本のレザークラフト技術や知識は高い。日本の皮革産業を「スカイミニ」とともに紹介することで、レザークラフトを楽しむ世界中の個人ユーザーと繋がりたい。約70年間皮革産業に携わって仕事をしてきたからこそ、「スカイミニ」を開発できた。誠実に今までやってきたことをやり続けることが大切で、これからも皮革加工機械の国内唯一のメーカーとして皮革産業を支え続ける。
「スカイミニ」の開発で会社や社員と皮革業界の距離が一層縮まっているのが実感できる。社員の幸せを追求するのと同じようにユーザーや製品、皮革業界に誠実に向き合い、産業の発展と活性化に力を尽くす。

企業情報

▽企業名=株式会社ニッピ機械
▽代表取締役社長=青田 崇
▽所在地=兵庫県加西市下宮木町767-1
▽設立=1976年9月
▽売上高=非公表
▽従業員=非公表

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
住所:〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
電話番号:06-6966-6017
FAX番号:06-6966-6080
メールアドレス:bzl-kin-shinsen@meti.go.jp