トップページ > 施策のご案内 > 商業・流通・物流 > 商業振興 >イベントレポート「空き店舗リノベーション×長く愛される商店街・地域づくり」を目指して~専門家の講演・先進的な取組発表を聞き、意見交換ができる交流会!~

イベントレポート「空き店舗リノベーション×長く愛される商店街・地域づくり」を目指して
~専門家の講演・先進的な取組発表を聞き、意見交換ができる交流会!~

最終更新日:令和7年2月3日

経済産業省は、商店街に期待される役割や機能は地域において様々である中、商店街の「個性」と「多様性」を伸ばし、地域のエリア価値を高める取組を推進するため、商店街の持続的な成長への支援に取り組んでいます。

全国の様々な地域で商店街の空き店舗活用や創業支援により、商店街に新たなにぎわいづくりを生み出す取組が進められており、一過性の店舗開店にとどまることなく、地域に長く愛されるお店や拠点が定着した先進事例も生まれています。そのなかで、商店街活性化やまちづくりに取り組んでいる方にお話を聞くと、他地域の空き店舗活用の取組を知りたい、同じ志を持った他地域のキーパーソンと意見交換したいというニーズを伺いました。

そこで、近畿経済産業局は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中心市街地活性化協議会支援センター)と共催で、令和6年12月10日(火)に中小企業大学校関西校にて、地域交流会「空き店舗リノベーション×長く愛される商店街・地域づくりを目指して」を開催しました。

地域交流会では、全国で商店街・まちづくりの支援をしている専門家や近畿地域で空き店舗活用の先進的な取組に携わっている方を講師にお招きし、商店街活性化・まちづくり成功のための秘訣や地域の課題解決のためのヒントについてお話しいただきました。また、その後の意見交換会では、詳しく話を聞きたい講師ごとにグループに分かれて、講師との質疑応答や参加者同士での取組事例の紹介、悩みの共有や相談などを行いました。
当日、会場には商店街関係者、まちづくり会社、自治体職員など約40名の参加者が集まり、講師の話に熱心に耳を傾け、意見交換を行いました。

地域交流会の開催の様子をご紹介します。

地域交流会 講演の様子

講演1 「中活の功罪」

滋賀県守山市を拠点に活動されている、株式会社みらいもりやま21 ゼネラルマネージャー 石上僚氏にご登壇いただきました。講演では、石上氏が考える中心市街地活性化法の課題について言及し、その中で自らのまちづくり会社がどのようにして事業を行ったのか、まちづくり会社が地域のいろんな人たちと連携できている理由、その具体的なエピソードについてお話しいただきました。
みらいもりやま21では、セルバ守山という区分所有の住商複合施設に補助金を活用して店舗を誘致し、現在はサブリース事業も行っているほか、イベントの実施や施設整備、守山ブランド品の開発や販売にも携わっています。
これまで、まちづくり会社として、地域の発展に貢献してきた中で、石上氏は、「まちづくり会社の強みは担当が変わらないため、人間関係を蓄積しやすいところ。自分の仕事は地域に愛着を持って関わってくれる人材を発掘し、つながること。」と話しました。

株式会社みらいもりやま21 ゼネラルマネージャー 石上僚 氏

株式会社みらいもりやま21 ゼネラルマネージャー 石上僚 氏

講演2 「まちづくり×観光 たじみDMOの挑戦」

岐阜県多治見市を拠点に活動されている、たじみDMO 一般社団法人多治見市観光協会 COO 小口英二氏にご登壇いただきました。たじみDMOは2022年より、まちづくり会社が観光協会に統合してできた組織で、観光とまちづくりに取り組んでいます。講演では組織の運営や事業の在り方、取り組んでいる事業の概要についてお話しいただきました。
小口氏は2009年に「うつわとごはん カフェ温土」のオープンに携わり、2019年には、ながせ商店街のビルをリノベーションして、本屋、カフェ、オフィスルーム、レンタルルームを整備した「ヒラクビル」をオープンしました。地元のタイル工場から提供してもらったタイルで本棚を作ったり、眼鏡屋さんの眼鏡レンズを使用し、シャンデリアを作ったりするなど、地元の素材を生かしたリノベーションにこだわったそうです。他にも、ビジネスコンテスト「TAJICON」を開催し、出店・創業者の発掘・サポートを行ったり、「さかさま不動産」のしくみを活用し、借りたい人と貸したい人のマッチングを行ったりするなど様々な事業に取り組んでいます。
小口氏は「商店街や観光エリアが取り組みたいことは多々あるが、人や財源の面でのハードルを乗り越えられないことが多い。そこで継続的に事業ができる体制、財源、人脈のある当社のような存在があることで地域内の意思決定につながっている。」と話しました。

たじみDMO 一般社団法人多治見市観光協会 COO 小口英二 氏

たじみDMO 一般社団法人 多治見市観光協会 COO 小口英二 氏

講演3 「若手主導の戦略的なまちづくりで『エリア価値の向上』を実現」

京都府の福知山駅正面通商店街で、若手が積極的に商店街活性化に関わっている福知山フロント株式会社の取組を 取締役 事務局 広瀬今日子氏にご紹介いただきました。
シャッター通りとなった福知山駅正面通商店街は、何年も新規出店がなく寂れた商店街という状況にありましたが、その状況を打破するため2015年に商工会議所青年部の30・40代の若手を含む有志と商店街の共同出資により、「福知山フロント株式会社」を設立しました。そして、広瀬氏がコンサルタントの担当者として、福知山に関わるようになり、商店街エリアの住民・商業者へのヒアリングや空き店舗調査を行った結果、賃貸や売却の意向のある不動産所有者や前向きな若手事業者を発掘できたといいます。
福知山フロントでは、駅正面エリアの空き店舗を賃借または購入し、リノベーションして新規出店のマッチングを行ったり、商店街内にあったパチンコ店の閉店を機に「銀鈴ビル」をリノベーションして複合施設として整備したりするなどのハード事業に取り組みながら、コロナ禍前には参加型・体験型の夜店や飲食ブースが多数出店する「サタデーズナイト」を開催、2022年からは福知山市内を中心とする飲食店やカフェ、生産者を集め、「食」を通じた観光促進のためのイベント「Farmers Tables」を定期開催するなど、ソフト事業にも取り組んでいます。
これらの多様な事業を戦略的に推進した結果、9年間で24店舗を誘致し、魅力的な個店が集積したことでエリア価値の向上につながり、「商売が成り立つエリア」として認められ、現在では自主出店も増加しているそうです。

福知山フロント株式会社 取締役 事務局 広瀬今日子 氏

福知山フロント株式会社 取締役 事務局 広瀬今日子 氏

講演4 「和歌山市の新しいまちづくりへの挑戦」

リノベーションまちづくりや商店街の再生などの和歌山市の取組を 和歌山市 都市建設局 建築住宅部 空家対策課 空家対策班 班長 中村英人氏にご紹介いただきました。
和歌山市では、都市全体の人口減少やまちなかの人口減少による商業の衰退、遊休不動産の増加等によるまちなかの魅力低下が課題となっていました。
そのような中、和歌山市では、まちなか再生にむけて遊休不動産を活用したリノベーションまちづくりや、官民連携による公共空間の利活用、ウォーカブルなまちなかの形成に取り組んできました。
また、都市再生推進法人としてまちづくりを担う13の団体を認定し、市内の様々なエリアでのイベントなどを通じ、官民連携したまちづくりに取り組むこととしました。
また、商店街の再生事例としては「北ぶらくり丁商店街」のお話をしていただきました。人通りの少ない商店街ににぎわいを取り戻すため、朝食を商店街の路上で食べることができる「北ぶらはじめ食堂」の他、商店街を会場にディスコイベントを開催するなど多数のイベントや企画を行った結果、商店街は徐々ににぎわいを取り戻しました。さらに、2023年には若手が思い描く商店街の将来像を可視化し、それを実現するための社会実験も行ったそうです。

和歌山市 都市建設局 建築住宅部 空家対策課 空家対策班 班長 中村英人 氏

和歌山市 都市建設局 建築住宅部 空家対策課 空家対策班 班長 中村英人 氏

意見交換会

意見交換会では、詳しく話を聞きたい講師ごとにグループに分かれて、講師への質疑応答や参加者同士での取組紹介、悩みの共有や相談などを行いました。
どこの商店街でも同じような悩みを抱えていることがわかったり、講師や他の参加者からの取組の工夫や参考になる深い話を聞くことができたりと、お互いの商店街の状況や考えを共有できたことで会話は盛り上がりました。
意見交換では、特にまちづくりの人材育成、組織強化、様々な主体の巻き込み、行政の関わり方についてお話がありました。

意見交換会の様子

まちづくりに関わる人材育成

・若い店主にとって、誰に相談したらいいのか、どういう支援があるのか、困ったときに頼ることができる窓口になるところがあるとよい。まちづくり会社やそれに代わる既存の組織が商店主や様々な関係者とのネットワークのハブになれればよい。

・商店街活性化・まちづくりに携わる若手の人材育成が急務で、まちづくり会社で働く魅力を伝えていくことも重要である。地域の様々なプレーヤーと繋がってまちの活性化に貢献できているという実感を持てることが、まちづくり会社で働くやりがいにつながっていくのではないか。

・一方で、まちづくりに携わる人材のキャリアパスが確立されていないことが課題であり、キャリアパスを考える上では、全国のまちづくりに携わる仲間との出会いや交流の機会が非常に重要。

まちづくりの組織強化

・商店の集積が少ない地域では、点在した店舗がお互いを紹介し合うなどの関係性を作ることができれば、エリアの魅力を高めることができる。

・まちづくりに関わる人材発掘という観点では、地域でおもしろい取組を行っている人が、商店街活性化やまちづくりのキーパーソンになり得る。そして、キーパーソンが楽しそうに取り組むなどプラスのイメージを周囲に見せていくと、一緒にやりたい、関わりたい人が集まってくる。

・まちづくりの組織強化のためには、行政や支援機関なども含めた様々な組織との関わりをつくっていくことと、関わってくれる人に受入側がしっかりとした対応を行うことが重要。

様々な主体の巻き込み

・空き店舗の活用を実現するためには、最初の「キックオフ」の段階における「人材・体制」の問題が大きい。どのように主体的な人材を巻き込むか、また世代間の意識の格差に対してどのように対応していくか、スムーズな運営を行う体制としてバックオフィスを任せられる人材を確保できるかが重要。

・そのために、外部人材のスキルや商工会議所青年部など若い人材のやる気を活かしつつ、取組を通して地域のファンを増やしていくことで、地域の人たちが主体的に動いていくことが大切。

・また、成功事例だけではなく、失敗事例から学ぶことも大きい。

行政の関わり方

・地域の様々な立場の人(まちのメンバー)を巻き込みながらまちづくりを行うためには、行政側がオープンなスタンスでとにかくまちのメンバーの話を聞き、寄り添って一緒に進めていくことが重要。ポイントだけを見に行くというようなことはせず、こまめにコミュニケーションをとりながら、地域からの信頼を得ることが重要。

・行政が「まちづくり・商店街の活性化」という言葉を前面に出してまちのメンバーに関わろうとしても、まちのメンバーからすると難しく感じ、仰々しくハードルが高くなってしまう。「面白くないことは誰もやりたくない」ので、「おもしろい」と思えることを意識して始めていくと、まちのメンバーも関わりやすく、自主的な活動につながっていく。

・和歌山市では、「まちなかイロドリ事業」を実施している。商店街内の空き店舗でチャレンジショップを2日間だけ開くというものだが、様々な業種の店舗が商店街に入る様子を見て、オーナーが店舗を貸してくれるきっかけになっている。

地域交流会を終えて

今回の地域交流会には商店街や、まちづくり会社、自治体、支援機関等、多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。講師の方から商店街活性化・まちづくりの事例や成功の秘訣についてお話を聞いて学びを深めるだけにとどまらず、意見交換会を通して、参加者の皆様同士でも広くつながりが生まれました。名刺交換会では、参加者同士で情報交換が行われるなど、お話が尽きませんでした。
参加者アンケートでは、「一度にいろんな方と知り合えたのがよかった」「様々な事例を伺い、気づきの多い実りある時間を過ごすことができた」「すべての人に発言できる機会があり、生の声を聞けたのがよかった」などの声を多数いただきました。ここでの学びや出会いをきっかけとして、新たなまちづくりへの取組や挑戦が生まれれば大変嬉しく思います。
本交流会にご登壇いただいた講師の皆様、共催者である独立行政法人中小企業基盤整備機構(中心市街地活性化協議会支援センター)の皆様に心より感謝申し上げます。
近畿経済産業局では、今回の地域交流会のように、商店街、まちづくりに関わる人が意見交換・交流できる場を今後もつくってまいります。

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 流通・サービス産業課
住所:〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
電話番号:06-6966-6025
FAX番号:06-6966-6084
メールアドレス:bzl-kin-commerce-lg@meti.go.jp