トップページ > 施策のご案内 > 商業・流通・物流 > 商業振興 > イベントレポート「商店街・まちづくり現地見学ネットワーク交流会in水道筋」~ヨソモノ達のコミュニティづくり~
最終更新日:令和8年3月27日
近畿経済産業局は、商店街・まちづくりに関わる様々なプレイヤーのネットワーク強化をはかるため、商店街活性化・まちづくりの現場を見学し、地域で活躍するキーパーソンと意見交換を行う「現地見学ネットワーク交流会」を令和8年3月5日(木)兵庫県神戸市(阪急「王子公園駅」水道橋筋商店街周辺エリア)で実施しました。
商店街はこれまでの「商売の場」という役割だけではなく、地域の雇用、生活関連サービス維持やコミュニティの場といった、地域を支える多機能な拠点として期待がされるとともに、地域の歴史やレトロさといった、ならではの魅力やポテンシャルを活かして、人と人が交流し、地域の中で人流を生み、消費につながる経済循環を生み出していく役割が求められています。
また、商店街という「場」で持続的に賑わいをつくっていくためには、商店街組織やまちづくり会社、地域の事業者や支援機関等の商店街・まちに関わる様々なメンバーが連携して、商店街・まちが目指すべき方向性(ビジョン)を定め、それぞれが持つ多様な力を組み合わせた体制を構築し、主体的な取組を行うことが必要です。
神戸市の水道筋商店街エリアでは、エリア外から移り住んだプレイヤー(ヨソモノ)が従来からの地域住民や商店街組織のメンバーと連携し、エリアの魅力や特徴を活かした取組を実施して、新たなコミュニティをつくり、エリアの中での人流や経済循環を起こしています。
この「ヨソモノ」が関わったコミュニティづくりの手法について、実際に活動されている方からノウハウを聞きつつ、現地を見学し、参加者の学びの場とする、「商店街・まちづくり現地見学ネットワーク交流会in水道筋」~ヨソモノ達のコミュニティづくり~を令和8年3月5日(木)、神戸市灘区の水道筋商店街エリアで開催しました。
本イベントは、和歌山市、泉佐野市で実施した交流会に続く、3回目のイベントで、商店街活性化やまちづくりに興味をお持ちの約20名の方々にご参加いただきました。
灘中央市場内でコミュニティ農園「いちばたけ」の運営に携わる、チームカルタスの坂本さん、佐藤さん、Incubation Studio SoWeluの運営や地域活動、まちづくりに参画されている株式会社玉子公園の岩田さん、地域密着型宿屋「ゲストハウス萬家」を経営されている朴さんからそれぞれ事例紹介をいただきました。
商店街・まちの魅力を活かしつつ、自分達の想いも込めて様々な取り組みに携わる講師の話に、参加者は熱心に耳を傾けるとともに、実際にまちづくりの現場を見学することで、リアルなまちづくりの様子を体験することができました。以下、交流会の様子を紹介します!
令和8年3月5日(木)14時~17時30分
神戸市灘区水道筋商店街周辺エリア
商店街活性化・まちづくりに興味がある方、行政等の支援機関の方など約20名
チームカルタス(いちばたけ運営) 事務局長 mottif lab 代表 坂本 友里恵 氏
チームカルタス(いちばたけ運営) 代表 神戸市役所職員 佐藤 直雅 氏
株式会社玉子公園 取締役 岩田 かなみ 氏
ゲストハウス萬家 オーナー 朴 徹雄 氏
神戸市の水道筋商店街は、大正時代の水道管工事をきっかけに生まれた商店街です。
西宮市の千刈貯水池から神戸市に水道管が通され、その上にできた道を人々が往来し始めて、周辺にお店が集まり、商店街ができたという歴史を持っています。
第二次世界大戦の神戸大空襲で大きな被害を受けましたが、戦後はヤミ市的な形態で再生して賑わいを取り戻し、昭和33年にアーケードが完成、平成10年には開閉式のアーケードへリニューアルし、現在のまちなみの基板が完成しました。
現在は、このエリアに、8つの商店街と3つの市場、約500店舗が集積しており、地元密着型の商店街として、住民の生活を支えています。
水道筋商店街周辺の一部は、神戸市が定める密集市街地の一つで、木造建物が密集し、火災が起きると大規模に延焼してしまう恐れがあるなど、防災上課題の多い地域とされています。
そのため、有事の際は延焼防止や一時避難場所として活用しつつ、平時は地域のコミュニティスペースとして活用する取り組みである「まちなか防災空地(以下、防災空地。なお、現在は「まちなか活用空地」に制度変更)」事業が神戸市により行われ、古い建物を取り壊されてきました。
「いちばたけ」がある灘中央市場も同様の課題を抱えており、2025年で100周年を迎えた老舗市場のため、昔ながらの雰囲気で趣があるものの、老朽化が進み、空き店舗が目立つ状況にあったため、いくつかの建物が壊されました。
建物の取り壊しにより、未活用状態の空き地が増え、コミュニティが希薄化していく様子を見て、古き良き市場の良さがなくなっていくことに寂しさを感じ、行動に移したのが、「いちばたけ」の立ち上げメンバーである神戸市役所の佐藤さんと丸山公也さんでした。
建築職の佐藤さん、農業職の丸山さんがそれぞれの専門を活かし、防災空地以外の活用方法について検討するとともに、仕事ではなく、プライベートとして関わることができないかと考え、「いちばたけ」の構想を立てました。そこに、水道筋エリアの賑わいづくりに仕事で携わっていた坂本さんが加わり、チームカルタスができ、本格的に動き出します。


丸山さんは、水道筋商店街エリアの近くで生まれ育ち、現在も暮らしている言わば「まちの人」ですが、坂本さん、佐藤さんはエリア外の出身で、「ヨソモノ」として、関わりが始まりましたが、ワークショップやイベントなどを地域住民と一緒に事業を進めて仲を深めるとともに、実際にご近所に引っ越しもして、「ヨソモノ」から「商店街の当事者」になっていったそうです。
「いちばたけ」には、大人も子どもも地域住民もヨソモノも様々な方が楽しく関われる多くの“関わりしろ”がたくさん仕掛けられています。
今では「いちばたけ」が、多くの方が利用されて交流の場となり、地域コミュニティをつくるともに、市場に新たな人流をでき、市場への新規出店の一役を担うなど、まちの賑わいが蘇る良い連鎖が生んでいます。

(いちばたけの取組紹介をする坂本さんと佐藤さん)

(いちばたけを見学する参加者たち)
ゲストハウス萬家を運営するオーナーの朴(パク)さんは、韓国出身で大学卒業後、ワークキングホリデーで来日し、そこから紆余曲折を経て、ゲストハウス萬家をオープンすることになりました。
日本に興味を持つきっかけになったのは、高校生の時に参加した日韓学生交流会です。当時はまだ日韓関係が現在ほど良好ではなく、朴さんも日本に対して偏見があったそうですが、この交流会で大きく考え方が変わったそうです。そこから日本が大好きになり、大学で日本語を勉強され、ワーキングホリデーで来日し、そのまま東京の企業に就職されました。
しばらく東京の企業で働いていましたが、「本当にしたいことはなんだろう」と考えていたときに、「ゲストハウス品川宿」に出会いました。「違う国や地域の人同士が繋がり、友達になり、理解し合える環境をつくりたい」そんな想いから、脱サラをして、「ゲストハウス品川宿」に弟子入りし、修行を経た後、ゲストハウスの開業に向けて神戸へ引っ越しをされました。
ゲストハウスをオープンするために、神戸の商店街を巡りましたが、その際に重要視したのは、「商店街が地域住民の暮らしを支えていて、コミュニティが今も生きている」ということで、水道筋商店街を訪れた時に「ここしかない」と思い、即決したそうです。
ただ、地縁もなく外国人である朴さんがいきなりゲストハウスをオープンさせるには、高いハードルがたくさんありました。そのため、まず商店街の中にある喫茶店でアルバイトをしながら、まちのイベントやお祭りに参加し、地域住民と触れあう機会を増やしていきました。
まちの人との関わりを増やしていく内に応援してくれる地域住民も増え、まちの会議にも呼ばれるようになり、「ヨソモノ」から「まちの住民」へ変化していったそうです。そうしてできた地域住民とのご縁から、ゲストハウスの物件も紹介してもらい、「ゲストハウス萬家」のオープンに繋がっていきます。
「ゲストハウス萬家」では、ゲストハウスの近くを散歩し、水道筋商店街を巡って買い物をして、喫茶店でお茶を楽しみ、一日の終わりには銭湯で汗を流してもらうといった、宿泊者に「神戸のふつう」を感じてもらうことをコンセプトにされています。
宿泊者には、「商店街つまみ食いツアー」という、商店街の商品を楽しんでもらうツアーや、ローカルなお店を紹介することで、そこに住むような旅となる仕掛けをしています。
「ゲストハウス萬家」は、近くの摩耶(まや)山にちなんだことに加え、「萬の人が集う家、萬の人が作る家(たくさんの様々な人々が集まり、作る場所)」という意味で名付けたそうです。
様々な国や地域から来た宿泊者同士が交流をすることももちろんですが、地元住民とも友好な交流をすることで、まちを好きになってもらう。地域住民も世界各国から来る宿泊者との交流で、偏見がなくなり、さらにもてなしたくなる。「ヨソモノ」であった朴さんが、まちを巻き込んで世界とまちを繋げる拠点をつくっています。

(参加者にゲストハウス萬家の取組紹介をする朴さん)

(ゲストハウス萬家からの眺望について説明する朴さん)
株式会社玉子公園は、王子公園付近のまちづくり活動に関する企画、調査、運営などを行うまちづくり会社で、取締役を務める岩田かなみさんは、パラレルコミュニティコーディネーターとして、神戸を中心に複数のコワーキングスペースやNPO、起業支援のコミュニティの運営に参画されています。
株式会社玉子公園という社名について、「王子公園の間違いじゃない?」とよく言われるそうですが、間違いではなく、「王子公園の中で、まちの人達のアイデアの玉子をカタチにすること」といった意味が込められています。
岩田さんは、大阪府の出身で、大学卒業後、民間企業での勤務を経て、2019年からフリーランスとして活動をされています。水道筋商店街エリアでは、コワーキングスペースである「Incubation Studio SoWelu」の立ち上げから運営に携わるとともに、様々なイベント等の企画や運営に関わり、自身も移住をして、「暮らし手」としても活動をされています。
そんな岩田さんが「ヨソモノ」として、水道筋商店街エリアの方に受け入れられたのは、①商店街の人と協働・協力すること、②苦手なこと(慣れないこと)を手伝う、③暮らし手として関わることを意識されていることが大きいそうです。
分かりやすい事例として、商店街で行われてきた事業を商店街組織から運営を引き継いだ際の話をいただきました。
それまではかなりアナログなやり方で実施されていたそうですが、岩田さんが運営を変わってからは、ネットに情報を載せ、電子決済も取り入れ、「仕組み化」をすることで、これまで来なかった、新しくこの水道筋商店街エリアに移り住んだ住民が参加してくれるようになったそうです。
まちを良くするために、商店街の方が苦手な分野を岩田さんの得意なことでカバーをする。
「ヨソモノ」である岩田さんが、まちの人と協力してまちを動かしていくことで、さらにこのまちに住む新たな「暮らし手」達を巻き込み、そこから新しいアイデアの玉子をカタチにしていく動きが生まれています。

(参加者に自身の取り組みを紹介する岩田さん)

(「ヨソモノ」として関わる際に意識していること)
今回の交流会では、地域外から移り住み活動をされる方を敢えて「ヨソモノ」と表現し、「ヨソモノ」による地域でのコミュニティづくりにフォーカスを当てたイベントを実施しました。
「ヨソモノ」は悪い意味で表現されることが多く、今回事例紹介をいただいた4名も取り組みをする上で、たくさんの苦労があったかと思いますが、それぞれの人柄、取り組みの内容や地域住民と向き合う姿勢などにより、徐々に受け入れられ、「まちの人」になっていく様子をお聞きすることができました。
参加者には、講師それぞれの実体験に基づくお話に加え、まちを歩き、見学することで、水道筋商店街エリアの長い歴史で培われた文化、伝統といった魅力と、その魅力にリスペクトを持ちながら、新しい風を吹かせる「ヨソモノ」達の素晴らしい行動力を感じていただくことができました。
最後になりましたが、本交流会にご協力をいただきました坂本様、佐藤様、岩田様、朴様に心より感謝申し上げます。
近畿経済産業局では、引き続き定期的に現地見学ネットワーク交流会を開催する予定で、様々な地域の商店街・まちづくりに関わる皆さんの交流の場をつくってまいります。
近畿経済産業局 産業部 流通・サービス産業課
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