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最終更新日:令和5年3月15日
オーケーエムは「鋸切製造所」として1902年に滋賀県で創業した。1952年からはバルブ専門メーカーへと転換。現在はバタフライバルブを中心に、建築、船舶、重機、半導体、食品、医療など幅広い業界に展開している。
2017年、舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置用バタフライバルブを市場投入した。国際海事機関(IMO)は、大気汚染の観点から船舶による窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の排出規制を強化している。こうした潮流から、拡大する需要に対応したこのバルブは世界シェア5割、国内シェア9割以上を占める成長ドライバーとなった。2020年12月に東証二部上場を果たすなど、同社の勢いは止まらない。
排気ガス処理装置用バタフライバルブは、舶用エンジンと排気ガス処理装置をつなぐ配管に設置される。オーケーエム独自構造によって実現した省スペースと、高い密閉性・耐熱性、低圧力損失が特徴だ。
舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置用バタフライバルブ
排気ガスは常に処理装置に送られるわけではない。船を動かし始める出港時にエンジンに負荷がかかるため、出港から沿岸部を走る領域で処理装置を通し、公海上を一定速度で走る際は通さない。配管の切り替え弁に使われるバルブには、排気ガスを「通す」「通さない」のメリハリが不可欠。また、エンジンから出る排気ガスは約500度Cと非常に高い。高温領域で排気ガスの漏れを抑えることが、バルブに求められる性能となる。
排気ガス処理装置用バタフライバルブの一番のポイントは、この“求められる性能”そのもの。500度C近辺で密閉性を高める設計と、独自開発の高温試験装置を使った3500時間にもおよぶ実船搭載試験により、「高温でも密閉性が高いまま、弁の切り替えができるバルブ」を実現した。
独自の高温試験装置によって大型バルブの開発を可能に
20-30度Cの温度帯で、小型バルブなら多くのメーカーが試験・評価できる。しかし大型バルブは一筋縄ではいかないという。奥村晋一社長は「専用装置がなければ、直径1メートルの対象を500度Cまで加熱して試験することは、まずできない」と試験装置の重要性を説く。同社は専用試験装置による信頼性の高いデータを得ることで、耐久性と安全性を担保した。
このバルブは環境規制にも対応。排気ガスを浄化する触媒の劣化とメンテナンス費用も抑えられる。
バルブは滋賀県の地場産業。オーケーエムは地域で後発メーカーになる。それ故に「細かな顧客ニーズに応えていくしかなかった」(奥村晋一社長)。これが現在の高い技術力や大手造船会社から信頼を寄せられる礎になっている。
排気ガス処理装置用バタフライバルブは国内外の舶用エンジンメーカーと共同開発した。処理装置の搭載対象は2万トン以上の船。貨物船やタンカー船などがこれに当たる。こうした船舶に対応する排気ガス処理装置用バルブは既存品では対応できず、メーカーから相談の声が寄せられた。
顧客ニーズへの丁寧な対応が会社を育てた、と奥村社長
開発で最も苦労したのは高温での密閉性保持。200度Cを超えると密閉は難しくなる。室温程度の装置外側と、排気ガスで高温となっている装置内側とでは温度差が生じる。膨張率が異なる各金属の部品がかみ合わなくなるとガスが漏れやすくなってしまう。高温のガスが通る際に性能を最大限発揮する設計、排気ガスのすすがたまりにくい特別な設計を、PDCA(計画、実行、評価、改善)を回して導き出した。
開発した製品は世界で初めて舶用エンジン設計の世界シェア8割以上を握るドイツMAN社の認証を取得した。日本、中国、韓国の主要造船会社はMANの設計ライセンスを付与されてエンジンを製造している。エンジンの性能に直結する排気ガス処理装置やバルブはエンジンのライセンサーであるMANの認証が必要になる。取得するには高温実証設備の保有や500時間以上の実船搭載試験への合格が必須条件。「同じようなバルブを作っても認証がなければ取り付けられない。MANの認証が一番の参入障壁になる」と植西執行役員は力を込める。認証の取得はオーケーエムにとって大きなアドバンテージとなっている。
NOx排出量の80%削減を定めたIMOの3次規制は、2016年1月から北米・カリブ海、2021年1月から北海・バルト海にも適用地域が広がった。SOx規制については2020年1月から全海域で適用開始。環境規制は年々強化されている。
一方、奥村社長は新規造船建造数について「2021年1-6月の受注数は、2020年1年間の受注量を上回ったという統計も出ている。2020年から2021年にかけてが谷で、回復していくだろう」と見る。海上輸送業界も右肩上がり。対象となる船や規制海域が増えていることもあり、排気ガス処理装置用バルブの需要は拡大する見通しだ。
2019年に稼働した東近江工場
需要増に対応すべく、同社は2019年に排気ガス処理装置用バタフライバルブ専用の組立工場として東近江工場(滋賀県東近江市)を稼働した。マレーシア工場で一部の部品を製造するほか、中国工場にも製造ラインを整備中だ。
今後は海外の競合メーカーとの価格競争が鍵になる。排気ガス処理装置用バルブの市場に参入している企業は世界で5社あり、日本企業はオーケーエムのみ。コスト競争力のある製品設計を進めていくと同時に、新燃料に対応するバルブの開発も進めている。
排気ガス処理装置用バルブは高温に耐えられる設計が求められたが、液化天然ガス(LNG)や液化水素といった燃料が流れる上流ライン向けバルブは低温での動作が必要になってくる。脱炭素化に向けたクリーンエネルギーなど成長市場に対応できる新製品開発と、販売体制の確立に中長期的に取り組むビジョンを描く。21年度からはサポインを活用し、液化水素のバルブ開発に本格的に着手している。
当社の社是に掲げる「最高の品質」は顧客満足、「余裕ある生活」は社員満足、「地域社会に貢献する」は文字通り地域貢献で、三方よしがそろっている。特に、従業員が働きやすく働きがいのある職場づくりを推進している。鉄などを扱っていることもあり女性が少なかったが、近年では積極的に採用している。製造現場や営業で活躍する女性が増え、管理職を目指してもらえる業務配分にすることにも取り組んでいる。
バルブ後発メーカーとして、既存市場に挑戦し続けてきたDNAがある。いろんなことに挑戦したい人に是非当社に入ってもらえるよう、また、独創的な技術を駆使して社是の「三方よし」を実現する企業にしていく。
▽企業名=株式会社オーケーエム
▽代表取締役社長=奥村 晋一
▽所在地=滋賀県野洲市市三宅446-1
▽設立=1962年5月
▽売上高=88億円(2021年3月期)
▽従業員=316人
近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課
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