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消費者相談事例

最終更新日:令和3年6月17日

オーディションに参加したらレッスン契約を結ばされたので解約したい

相談内容

ある日、自宅の郵便受けに、「ナレーション・オーディション開催」という内容のビラが入っていた。内容を見ると、テレビやラジオ等の媒体でCMや番組紹介といったナレーションを行う人材を募集するもので、オーディションに合格すると、主催する会社が専属でマネージメントを行ってくれる、というものだった。

学生時代、放送部に所属し、発声等ナレーションに必要な知識や実際の放送番組の作成に携わった経験をもっていたので、ビラの内容に興味を持ち応募すると、主催する会社からオーディションの日時と場所等の連絡がきた。

指定された日時にオーディション会場に行き、簡単な発声と原稿読みをし、オーディションは終了した。後日、「オーディション結果をお知らせしたいので事務所に来て欲しい。」と会社から連絡があり、事務所に出向くと、「オーディションの結果がよかったので、是非本格的なレッスンを受けて欲しい。」と言われた。

いきなりレッスンの話が出てきたのでビックリしていると、「当社では、公共の媒体で十分活躍できる人材をオーディションで選んでいる。その結果を見て、さらに必要な知識を教えるためのレッスンを経て、専属マネージメント契約を結ぶことになる。」と説明を受けた。

本格的に仕事をするのであれば、確かにそのような知識も必要ではないか、と考え、レッスンを受けることを承諾し、その場で半年間レッスンを受講する契約書面にサインした。

しかし、実際のレッスンを受けてみると、発声や原稿読みのシミュレーション等これまで基礎的にやってきたものと大きく変わるところはなく、内容にひどく不満が残るものだった。

また、専属マネージメント契約の内容をよく確認してみると、会社はメールや社内の貼り出し等でナレーション募集の情報を流すだけで、ナレーションの仕事やそれによる収入をこの会社が提供するわけではないことがわかった。

しかも、その情報は一般広告に掲載されたものの転載ばかりで、個人でも容易に調べられるものだった。その情報を元に応募や面接をする際も手続きは自分で行わなければならず、実際に仕事をした場合、紹介料として収入の数パーセントを会社に納めさせられることもわかった。

すっかりだまされた思いで、レッスンの解約とこれまで支払った受講料の返還を求めたが、会社側はレッスンの中途解約を認めず、既払いの受講料も返還しない、という姿勢である。

また、マネージメントのことについても、「仕事をする、しないは、所属した者の判断に任せている。こちらは情報の提供だけであって、仕事の仲介やあっせんをするとは言っていない。」と言われた。

クーリング・オフということについても確認したが、契約時の書面にはそのような文言はなく、会社側もクーリング・オフを認めようとしない。このような契約の解約と既払い金の返還を求めるには、どうしたらよいだろうか。

回答

消費者が、事業者によって提供又はあっせんされる業務に従事することで収入が得られると勧誘され、その業務に必要とされる商品やサービスの諸費用を負担する契約を結ぶことを特定商取引法では「業務提供誘引販売取引」と定義しています。(特定商取引法第51条)

例えば、パソコン操作研修というサービスの提供(費用負担を伴うもの)を受け、習得した技能を利用する入力作業の在宅ワークなどが該当します。

このような取引を消費者、特に無店舗で業務を行う個人と契約しようとする事業者には、契約の内容を記載した書面を消費者に交付する義務が発生し、消費者はその書面を受領してから20日を経過するまでの間、クーリング・オフを主張することができます。

業務提供誘引販売取引では、商品やサービスを提供する事業者が、消費者が従事するべき「業務」(本件では、ナレーションの仕事)を自ら提供、又はあっせんすることが、法律上の要件となっています。

ここでいう「あっせん」とは、商品の販売であれば販売の相手方を見つけて販売の仲立ちをすることであり、サービスの提供であればサービス提供の相手方を見つけて提供の仲立ちをすることを言います。

本件では、事業者のいう「マネージメント」の内容が「業務の提供又はあっせん」に該当するか、という点が、業務提供誘引販売取引に該当するかどうかの焦点になると思われます。お話を伺う限りでは、消費者が行うナレーションの仕事に対して、単に一般的な募集情報を提供するだけで、仕事の獲得や仕事を提供する先との調整等で仲立ちが行われていないのであれば、業務提供誘引販売取引に該当する可能性は低いと思われます。

一方で、特定商取引法では、店舗等営業所で行った契約であっても、電話等で商品やサービスの勧誘目的を告げられないまま営業所等に呼び出され、そのまま契約を締結してしまった場合、いわゆる「アポイントメントセールス」として、同法の訪問販売に該当することがあります。(特定商取引法第2条)

サービスの提供(本件では、ナレーションのレッスン)に関する契約の締結について勧誘されることを告げられず、事務所に呼び出され、そこで勧誘を受けて契約しているのであれば、「知識の教授」という指定役務の提供を目的とした訪問販売であると主張できる可能性も考えられます。

訪問販売にも、業務提供誘引販売取引と同様、契約時の書面交付義務と8日間のクーリング・オフ規定があります。訪問販売に該当する場合であって、交付された書面にクーリング・オフに関する記載がないのであれば、8日間のクーリング・オフ期間が過ぎても、クーリング・オフを主張できる場合がありますので、改めて事業者に、訪問販売によるクーリング・オフの主張とそれに伴う返金の請求を行ってはいかがでしょうか。

コメント

特定商取引法の業務提供誘引販売では、商品やサービスを提供する事業者が、消費者が従事するべき「業務」を自ら提供、またはあっせんすることが、法律上の要件となっています。

そのため、単に業務を行うのに必要なノウハウや機材のみを提供され、事業者又はあっせん先から具体的な業務内容や業務を行う上での指示等がなされないのであれば、同法の業務提供誘引販売とは言えない可能性がでてきます。

これまでにも、様々なギャンブルの攻略方法だけを提供し、確実に利益が得られるような文句で勧誘してくる商法のトラブルもありますし、最近では、インターネットでの商品販売で利益を得られると勧誘する「ドロップシッピング」についても、トラブルとなっているケースが報告されています。

利益が得られる、という前提で契約を勧めてくる取引については、安易に契約することは避け、まずその契約内容や解約等の条件を事前に十分ご確認いただき、慎重にご検討いただくことをお勧めします。

また、実際にトラブルにあった場合、本件のように業務提供誘引販売以外にも特定商取引法の取引として同法の適用が考えられるケースや民法、商法、消費者契約法といった他法令から被害の回復が見込まれるケースもありますので、まずお近くの消費者相談窓口にご相談ください。

参考サイト

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 消費経済課 消費者相談室 
住所:〒540-8535 大阪市中央区大手前1-5-44
電話番号:06-6966-6028(年末年始、祝日を除く月~金 9:30~16:00)

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