トップページ > 施策のご案内 > 商業・流通・物流 >商業振興 > イベントレポート「商店街・まちづくり現地見学ネットワーク交流会 in和歌山」~和歌山市内の3つの地域の見学、まちづくりのキーパーソンと意見交換を実施~
最終更新日:令和7年3月19日
商店街に期待される役割や機能は地域において様々である中、経済産業省は商店街の「個性」と「多様性」を伸ばし、地域のエリア価値を高める取組を推進するため、商店街の持続的な成長への支援に取り組んでいます。
全国の様々な地域で商店街の空き店舗活用や創業支援により、商店街に新たなにぎわいづくりを生み出す取組が進められており、一過性の店舗開店にとどまることなく、地域に長く愛されるお店や拠点が定着した先進事例も生まれています。そのなかで、商店街活性化やまちづくりに取り組んでいる方にお話を聞くと、他地域の空き店舗活用の取組を知りたい、同じ志を持った他地域のキーパーソンと意見交換したいというニーズを伺いました。さらに、令和6年12月に中小企業基盤整備機構(中心市街地活性化協議会支援センター)との共催で開催した「地域交流会」の参加者からも、先進地域の取組を見学したいという声を多数いただきました。
そこで、近畿経済産業局は、商店街・まちづくりに関わる様々なプレイヤーのネットワーク強化をはかるため、商店街活性化・まちづくりの現場を見学し、地域で活躍するキーパーソンと意見交換を行う「現地見学ネットワーク交流会」を開催することとしました。
第1回は、地域交流会の講師である和歌山市の協力を得て、令和7年2月5日(水曜日)に、和歌山市内3地域((1)みその商店街 (2)大新エリア (3)北ぶらくり丁商店街)を見学し、まちづくり会社のキーパーソンと意見交換を実施しました。
今回の交流会には約20名の商店街関係者や自治体職員等にご参加いただきました。参加者は講師の話に熱心に耳を傾け、実際にまちを歩きながらまちの歴史や取組を学ぶことで、まちづくりの現場をよりリアルに体感しました。
参加者は、みその商店街、大新エリア、北ぶらくり丁商店街の順に訪問しました。
それぞれの地域では、各地域のキーパーソンの方から取組やまちへの思いを語っていただきました。その後、商店街・まちを歩いて見学し、質疑応答や意見交換を行いました。3地域での交流会の様子をご紹介します。
みその商店街は、JR和歌山駅から約200mと好立地に位置している商店街です。約60年前に戦後の闇市として誕生し、賑わいのあるエリアとなっていましたが、徐々にその賑わいは失われていきました。
そこで、再び賑わいを取り戻すべく、みその商店街でまちづくりに取り組んでいる株式会社IKOTAS 代表取締役 前川 怜輝氏にお話を伺いました。
前川氏は2020年に和歌山市に移住し、2021年にみその商店街内にて「Cafe&Barまたたび」を開業、株式会社IKOTASを設立しました。現在は、店舗運営、誘致、マルシェイベントの開催、エリアプランニングに取り組んでいます。また、セルフリノベーションを行い、コワーキングスペースを運営するなど、空き店舗の活用にも注力しています。
交流会では、実際にみその商店街内を歩き、前川氏が運営するカフェやコワーキングスペースを見学しました。前川氏は移住者であり、はじめは自分の取組に対し、懐疑心をもっていた方もいたといいます。しかし、自らも商店主としてカフェの営業をはじめ、他の商店主や住民とコミュニケーションをとっていくうちに信頼を得られるようになったといいます。そして、前川氏はみその商店街を「人々が集まる場所」にするため、イベントを開催したり、コワーキングスペースを上手く活用したりと商店街に新たな機能をもたせることでまちの可能性の拡大を目指しています。毎月開催している「みそのマルシェ」には50~70店舗のお店が出店し、人気のイベントとなっているそうです。
大新エリアは、和歌山城より1km北東にあり、戦前戦後と繊維や洋紙、化学製品などの問屋街として繁栄していましたが、高度経済成長期以降、暴力団が事務所を構え、まちが荒廃していきました。2010年頃に暴力団がまちを出て、問屋から戸建住宅にまちが変化している中でGuesthouse RICO(宿、食、働、住の複合施設)が2015年に開業しました。遊休不動産への店舗誘致も進めており、まちのイメージ向上に一役買っています。
交流会では、Guesthouse RICOを運営する株式会社ワカヤマヤモリ舎 経営企画部リーダー 橘 麻里氏にお話を伺い、Guesthouse RICO内を見学しました。
Guesthouse RICOは築50年の5階建て共同住宅「ユタカビル」をリノベーションしてオープンしました。「訪れる人が、出会いを通して自分の中にある豊かさの種に気づく場所でありたい」をコンセプトに、宿以外にも飲食やコワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウスという機能を持ち合わせており、地元の人や偶然訪れた方が出会って、おしゃべりを弾ませる場となっています。
「ユタカビル」をゲストハウスとしてよみがえらせるプランは、近くに銭湯の『幸福湯』があったことも大きいとお話をされていました。『幸福湯』は、Uターンで和歌山市に戻ってきた若い世代の店主が祖父から事業を継承して営業をされています。Guesthouse RICOの宿泊客は、特別料金で入浴できるなどの連携をしており、大新エリアを歩いて巡ってもらう取組もされています。
また、ワカヤマヤモリ舎は建築士の 宮原 崇氏がハード面を、橘氏がブランディングなどのソフト面に取り組んでおり、大新エリアがみんなのおすすめしたくなる場所、誇りと思える場所になることを目指しています。ゲストハウス以外にもカフェなどが新しくできており、大新エリアは徐々に変化しつつあります。公園でのマルシェイベント「大新ピクニック」には多くの人が訪れたそうです。
北ぶらくり丁商店街(ぶらくり丁)は、紀州徳川家の和歌山城の城下町にある江戸期から続く古い商店街です。終戦前に空襲があり、周辺は焼け野原になり、城下町の雰囲気もなくなってしまいましたが、昭和時代は心斎橋ほどの人通りがあった大変賑わいのある商店街でした。しかし、時代の変化と共に、アーケードの劣化やシャッターの閉まった店舗も増加し、暗く寂れた歩きたくない通りとなってしまいました。
そのようななか、また多くの人に集まってもらえるようにとさまざまなアプローチで商店街の活性化に取り組む、株式会社sasquatch 代表取締役 小川 貴央氏にお話を伺いました。
小川氏は2019年から本格的に商店街振興組合とともに、マーケットイベントや空き店舗活用、お店づくりやブランディングなどに取り組んできました。きっかけは商店街の理事長から「寂れてしまった商店街をなんとかしてほしい」という相談を受けたことでした。そこで、小川氏は商店街に人を呼ぶために、さまざまな面白いイベントを実施し、商店街の外の人が地域の魅力を知るきっかけをつくっていきました。商店街を会場に開催した映画祭では全国各地からお客さんが訪れ、参加者の6割ほどは県外からの人だったそうです。また国内だけでなく、韓国からもボランティアとして人が来てくれ、参加者のアンケートでは満足度は100%と大盛況のイベントとなりました。
小川氏が商店街に関わりだした当初は、小川氏の取組に対して反対の声もあったといいます。そこで、小川氏は反対している人達にも理解してもらえるよう、商店街の店主の人たちにもなじみのある昭和歌謡を地元の若手達が歌う歌謡ショーを開催しました。すると、これまで反対してきた商店主たちも一緒になってイベントに参加してくれ、小川氏の取組を理解してくれるようになりました。商店街の店主にもなじみのある昭和歌謡で、相手に寄り添う姿勢を示したことで地域の信頼を得て、このイベントの成功だけでなく、まちづくりの取組の成功にもつながったのだそうです。
また、和歌山市からの委託を受け、北ぶらくり丁商店街を舞台とした社会実験プロジェクトも実施し、居心地がよく歩きたくなる空間を目指した取組を行っているそうです。
今回の交流会では、講師の方の話を聞くだけではなく、実際にまちを歩いたり、施設を見学したりしながらまちづくりについて学びを深めました。キーパーソンの皆さんのお話しで特徴的だったことは、その商店街・まちが歩んできた歴史を非常に大切にし、先人たちが大事にしてきたものをまちづくりにもしっかりと受け継ぎながら、新たなニーズに合わせた取組を行っている、ということです。
参加者同士でも悩みごとや課題についてざっくばらんに意見交換を行い、新たなネットワークが生まれるなど大変盛り上がりました。
参加者アンケートでは、「まちを歩きながらの説明は楽しく、勉強になった」「学びを深めることができ、モチベーションアップにもつながった」「現地をみることで、よりライブ感を持って参加できた」などの声を多数いただきました。この交流会が参加者皆様の取組へのヒントや新たな挑戦をするきっかけにつながれば大変嬉しく思います。
本交流会にご登壇、ご案内頂きました講師の皆様、開催にあたり多大なるご協力をいただきました和歌山市の皆様に心より感謝申し上げます。
近畿経済産業局では、引き続き定期的に現地見学ネットワーク交流会を開催する予定で、様々な地域の商店街・まちづくりに関わる皆さんの交流の場をつくってまいります。
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